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第717話

部屋に恥ずかしそうに俯き加減で入って来た。 そしてゆっくり顔を上げたミキを見た俺は衝撃を受け、直ぐには言葉が出なかった。 呆然とミキを眺めて、いや見つめてた。 そんな俺に気が付き、側に来て居た祐一が肘で俺を突っつき小声で話してきた。 「おい、綺麗過ぎて言葉が出ないのか?気持ちは解るが、ミキが不安そうにしてるぞ。何か言葉を掛けろって」 祐一に言われて、やっと我に返った。 俺はふらふら…と、ミキの側に行き頬を撫で心からの言葉を発した。 「綺麗だ。他の奴らに見せたく無い殆どに」 「伊織さん…何も言ってくれないから…不安になりました。お世辞でも嬉しいです」 やっと、ミキからも笑顔が出た。 良い雰囲気の2人の仲を台無しにするかのように周りでは勝手に話しだす。 「でしょ.でしょ! 凄く綺麗でしょ?このまま雑誌や広告に出てもおかしくないわよね~」 「マコちゃんは可愛い系で、ヨシ君は綺麗系に仕上げたんですね。流石、沙織さんです」 「ま、ミキは元々の素材も良いしな。綺麗になるとは思ってた」 「僕もミキがどんどん変わっていくのをうっとり見てたよ」 好き勝手に言ってる周りの事は気にせずに、俺はミキの姿を見つめて居た。 本当に綺麗だ‼︎ いや、美しいって言う言葉がぴったりか。 去年と同じ浴衣を着てるが、やはりプロ(?)が髪をセットしたり化粧を施すとこんなに違うのか。 ミキが化粧をすると薄化粧で口紅ぐらいだが、まあ、それでも充分に女性に見えるし、祐一が言うように元々の素材が良い事もあり充分に綺麗だったが、着せ替え人形を楽しむ沙織が施す化粧はアイメイクがばっちりでチークや口紅がまた仄かな色香を醸し出してる。 髪も去年は地毛で片方だけ耳に掛け大きめな髪飾りをしてたが、沙織は前髪だけサイドに流し、あとは一纏めにし長いストレート髪が背中までありかんざし1本だけ結び目に刺しシンプルだが古典的な髪型がまたミキに良く似合ってた。 真琴君じゃないが…うっとりいつまでも見てられる。 パンッ! パンッ! パン! 沙織が手を叩き、うっとりミキの姿を見てた俺を正気にさせる。 「見惚れるのは解るけど! どっぷり自分の世界に浸らないで欲しいわ!」 「悪い.悪い。ずっと見てられる!」 「伊織さんったら…恥ずかしいです」 天然で両頬に手を当て照れてる姿が、また綺麗なのに可愛いらしい。 あ~~完全に骨抜きにされたな。 愛おしくって仕方ない! 「ミキと写真を撮りたい!」 「私もマコちゃんやヨシ君と撮りたいわ。大ちゃん達も浴衣だし、皆んなで撮りましょ」 撮影大会が始まろうとした時にチャイムが鳴った 「たぶん、優希さん達よ」 沙織は龍臣達を迎える為に玄関に向かった。 煩い沙織が居ないこの数分の間に、俺はミキの髪を触って見たり唇が触れる程近く顔を近づけたりイチャイチャ…し始めた。 祐一達も仲睦まじくしてた。 「やっぱり、優希さん達だったわ。ほら、入って.入って」 沙織に続き龍臣が堂々と浴衣姿で入って来た。 やはり似合ってるな。 体格や強面の顔もあり、ちょっとイカついか。 龍臣の背中に隠れるように優希さんも入って来た 「優希! 隠れてもどうしようもないだろ?どうせ見られるんだから」 背後の優希さんを前に押し出した。 「何だか…恥ずかしいが……どこか変じゃない?」 俺と祐一に問い掛けてきた。 「似合ってるよ」 「変な所なんて無い。女性にしか見えない。大丈夫.大丈夫」 俺達が揃ってそう話すと、優希さんは「本当か?」ともう一度確認するから、俺達は頷くとやっと安心したらしい。 「だから言っただろ?全然、大丈夫だ!って」 黒地ときなり地で反則的な縞模様の中に小さな椿の赤.白.藍色の3色の花が散りばめられたレトロ感のある浴衣は大人な優希さんに似合ってた。  髪型は地毛で、去年のミキみたいに片方だけ耳に掛け飾りを付け、化粧は派手では無いが少しキツめのメイクをし赤い口紅が印象的で、しっとりと大人の雰囲気と少し姉さん風だったが、それがまた龍臣との雰囲気に合う。 沙織が近づき突然優希さんの胸を触った。 「な.何!」 「あら~、ちゃんと胸も作ってたのね。流石だわ」 龍臣からは前持って、優希さんの支度は母親がやると張り切ってると言われ、沙織はがっかりしてた。 どうも、今回の件で優希さんに浴衣を買おうと思い母親に相談した所「浴衣なら、たくさんあるから自分のをあげるから」と言われ、支度も母親がすると言い出したらしい。 「娘に着物とか浴衣を着せるの夢だったのよね~」と嬉しそうに話し、張り切る母親に断れずに頼む事になったらしい。 「お義母さんが…」 小声で話す優希さんは恥ずかしいらしい。 「あら、恥ずかしがる事は無いわよ。マコちゃんやヨシくんもタオルで胸作ってるし、女の子でもする人居るし。お義母様なかなかやるわね! 優希さんのイメージにぴったりの浴衣で凄く似合ってるわ。あ~~残念! 私が支度したかったわ」 「それは、また今度頼む!」 「龍‼︎ 勝手な事言うな! 」 そうか、ミキ達もか。 今日の夜に…ガバッと襟元から胸を開け帯を解いた時にポトポト…タオルが落ち、恥ずかしそうにするミキを見るのも “萌え” かも知れねーな。 俺は1人いけない妄想をしてると、祐一と目が合い2人でニヤッと笑った。 考える事は一緒か? 「皆さん揃ったし、さっき言ってた写真撮りませんか?取り敢えず、皆んなで集合写真でも」 花火大会に出掛ける前に写真撮影会が始まった。

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