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第718話
「うわぁ~~やっぱり人が多いね」
「本当‼︎ 屋台もあって、ワクワク…する~♪」
「ほんと、人が多いわね」
「まだ、開始1時間前だけどね」
俺達の前を横並びに歩くミキ達は屋台や人混みの話題で盛り上がりキャッキャッ…楽しそうだ。
その背後から、俺達も横並びで後を着いて歩く。
「ここに来ると、浴衣でも恥ずかしく無いな」
「ああ。電車だと、ちょっと目立つよな。ま、時期的に花火大会に行くんだろうとは思われてるけどな」
「開催地が近くなると、やはり電車の中も浴衣着た人も多くなって気にならなくなりましたけどね」
「それにしても人混みが凄いな。マコ達とはぐれないようにしないとな」
「なるべく一緒に居た方が良いな」
この人混みではぐれる事もそうだが着飾った4人は目立つ、軟派もあり得るからと言う意味も含め他の3人に話した。
龍臣も祐一も矢島君も解ったらしく、前ではしゃいでる4人を見つめた。
「何か屋台で買ってから、どこか場所取って見ましょうよ」
沙織が振り返り俺達にそう話す。
「そうだな。去年、ミキと見た場所が穴場かも知れないから、そこで見ようぜ」
俺の話しは軽くスル~され、もう次の話題に移ってた。
ったく、どんだけはしゃいだんだよ。
「ビールとか飲む?」
「飲む.飲む!」
「もちろん飲むわよ」
「う…ん。僕は……」
ビールを飲みながら花火大会を見るのも楽しみの1つで当たり前だと思ったが、真琴君は何だか煮え切らずに言い淀むと、それを聞いてた祐一が透かさず真琴君の側に行き「俺の事は気にしなくて良いよ。俺は車もあるし、仕事だから飲めないが折角だし、気にせずに飲めよ。な、マコ」と、真琴君だけに見せる笑顔で話すと、真琴君も「ごめんね。祐さんには悪いけど…折角だからそうする」と、こちらも笑顔で話した。
そうか、祐一の事を気遣ったのか。
こんなちょっとした事だが、真琴君の祐一への愛を感じた。
周りは、そんな2人を温かく見守ってた。
俺もちょっと良いなぁ~と思ったが、イチャイチャ…してるようにも見えてくる。
「イチャイチャ…は家に帰ってからやってくれ! じゃあ、それで決まりな。場所取られる前に、食いもんとビール買って移動しようぜ」
俺が提案し屋台を見て歩く事にした。
焼鳥.唐揚げ.ポテト.焼きそば.たこ焼き.フランクフルト.お好み焼き…あっちこっち屋台を見ては買い
俺達は荷物持ち状態だ。
ミキ達はかき氷を食べながら、今度は何を買うか立ち話が始まり、俺達は少し離れた所でこそこそ話してた。
「なあ、まだ買うつもりか?」
「まあ、人数も人数ですからね」
「屋台を全部制覇する勢いだよな」
「そろそろ良いじゃねー。ビール買って場所移動しようぜ」
そんな愚痴を聞かれないように、こそこそ話してた。
「あっ! あれ、見て下さい!」
輪になって話してたから俺達からは見えなかったが、矢島君が気が付き指刺す方を見ると、ミキ達に話し掛けてる3人組の男達が見えた。
大学生っぽい少しチャラ男達がしきりに話し掛けてる。
沙織と優希さんが対応し、ミキと真琴君は黙って成り行きを見ているように見えた。
「軟派⁉︎」
祐一が冷静にそう話すと、矢島君は慌てたように話す。
「絶対、軟派ですよ!」
チッ‼︎
ちょっと目を離すと、直ぐにこれだ‼︎
ここまでずっと離れずに側に居たが…去年はミキ1人だから俺も牽制してたが、今年は沙織も優希さんも居るしと少し安心してたと後悔した。
その肝心の沙織と優希さんがニコニコ話してる。
どう言うつもりだ‼︎
俺はカッとしたが、俺より龍臣の方がカッとなってた。
「何だ‼︎ あいつら‼︎ 優希も何話してんだ‼︎ 無視しろよ‼︎」
俺の横で機嫌の悪そうな低い声で話す。
顔を見ると凄い形相で睨んでた。
怖~~‼︎
ヤベぇ~~‼︎
龍臣がツカツカ…ミキ達の方に歩いて行くのを、俺と祐一と矢島君は慌てて追いかけた。
相手の肩に手を置き「おい!」とドスの効いた低い声で言いグイっと引っ張り、その間に体を入れ優希さんを背後にし相手と対峙した。
矢島君も同じ様に沙織を背にし、前に立ちはだかった。
「てめぇ~、何してんだ‼︎ 人の女に手を出して良い根性してんじゃん」
凄い形相とドスの効いた低い声で威嚇する龍臣に相手もビクビク…とし、沙織と優希さんに恐る恐る確認する。
「あの~~…彼氏?」
「「夫よ!」」
「彼氏じゃなく⁉︎……人妻?」
そんなやり取りが聞こえたが、その内の1人がミキ達に気が付き向かう。
「こっちにも可愛い子ちゃん居るぜ! すんげぇ~~美人じゃん。ラッキー♪」
ニヤつく顔でミキの肩に触れようとするチャラ男の腕を掴む。
祐一は直ぐに真琴君を自分に引き寄せてた。
「俺の者に、汚ねぇ~手で触んな‼︎」
「痛っ! 解った.解った」
乱暴に手を離し睨みつける。
「おい、ヤベぇ~! 行こうぜ‼︎」
俺達にただならぬ雰囲気に圧倒され逃げる様に立ち去った。
「優希! お前な~」
「龍~。軟派されちゃった~♪男だってバレ無かったよ」
龍臣に睨まれても全然気にせずに軟派された事を楽しんでる優希さんはある意味凄い!
「沙織さんも‼︎ もう人妻なんですから‼︎」
あの温厚な矢島君も珍しく沙織に強い言い方をしてた。
「久し振りに軟派されたわ。それより…“人妻”って良い響きだわ~」
まだ言い合ってる2組はほっとき、俺達はミキ達を気遣う。
「大丈夫か?何かされなかったか?」
「俺達は何も。沙織さん達も断ってましたけど、しつこくって……ハラハラ…してました」
あの2人の調子じゃ…断りながらも楽しんでたんだろうな。
「無事で良かった。もう俺の側を離れるな!」
そう言い、俺は離れないようにミキの手を取り恋人繋ぎした。
最初から、こうしてれば良かったんだ。
祐一は真琴君の頭を撫でて居た。
ここに居ても仕方ねーし。
「そろそろビール買って、ここから移動しようぜ」
まだ言い合ってる2組は止め、俺の意見に従った
俺達はビールを買い去年の場所に移動する為に、ゾロゾロ…と荷物を持ち、今度はそれぞれカップルで手を繋ぎ歩いた。
その時に、ミキが俺の耳元で少し照れたように言った。
「さっきの伊織さん、凄くカッコ良かったです。俺の者に…って言ってくれて嬉しかった」
それを聞いた俺の方が嬉しくなり人の目も憚らずに抱きしめたくなった。
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