８月の仮決算会議も終わり、9月に入った時。 その日は課で内勤してたのは、俺と田口だけだった。 それは1本の電話からだった。 「課長、外線で…IＰ企画さんと言う会社からです」 「解らんが、取り敢えず電話回せ」 そして一応話しを大まかに聞き、後日時間を取り詳細を聞く事にし電話を切った。 「何の電話ですか？」 取引先や業社でも無く今まで聞いた事も無い会社に、田口も不思議に思ってるようだ。 「イベント.プロデュース企画する会社らしい」 「それでIP企画？何か安易な会社名ですね」 「社名はどうでも良いが、少し会社を調べてみよう。後日、時間を取り詳細を聞く事にした。どうなるか解らんから、まだ何とも言えない」 「解りました」 田口が自席に戻ると俺は早速パソコンでIP企画とやらの会社を検索してみた。 イベント会社か…。 国内事業部なら展示会などで仕事をする機会もあっただろうが、俺達は海外事業部でメーカー.総合商社だしイベントするにしても海外の会社とアメリカ支社とで行う。 そう言う事もあり、なぜ？と疑問に思ってた。 IP企画.IP企画……ん、これか。 まあまあ日本ではイベント会社としては大きい。 アメリカ支社もあり、海外でも仕事してるのか。 近々、中国にも進出する予定か。 手広くやってるんだな。 取り敢えず話しだけは聞くか。 どうするかは話しを聞いて判断する事にした。 俺は仕事に関しては利益を重んじてる。 直ぐに利益の出る仕事に関しては無条件で進めるが、そうで無い場合でも先々利益が得られ見込みのある仕事かどうか詳細を吟味し判断する事にしてる。 あとは…面白そうだと直感した場合も赤字にならないギリギリで仕事をする事も稀にある。 ただ単に利益追及の仕事だけしてるんじゃ仕事に対してマンネリ化と向上心が無くなる。 偶には、面白い仕事をし課の士気を高めアイディアや色々な意見を出し合い社員の成長を促す意味でも、そんなに多くは無いがそう言う仕事も受ける時がある。 今回は……まだはっきりとは詳細聞いて無いが、直ぐには利益が出そうも無いが、初の試みで面白いかも知れないと直感したが……面白くとも赤字になるようなら仕事をする意味が無い、その事もあり将来的に継続し利益が出るか？詳細を聞いて判断するつもりだ。 初仕事の相手の出方次第だな。 営業マンを見れば相手方の仕事に対しての考えや意欲など見えてくるもんだ。 そして、その会社もな。 そう言う事も共に仕事をする上での判断の1つとしてる。 そう言う点では、電話の相手の声には意欲がありそうな感じだと思った。 この電話が…いや電話相手が……俺を悩ます相手になろうとは、この時には思っても居なかった。 そして幸せな毎日の中に、この男の出現で影を落とすとは…ミキの愛を疑う様になるとは……。