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第724話

「……と言うわけで、資料にもある通りフェスの記念品(粗品)を打診された。初めて手掛けるフェスで、もしかすると今回限りかも知れないが、上手く成功すれば、次にも繋がり将来的に記念品(粗品)だけじゃなくグッズ等の受注の可能性も出てくると見込んでる。俺としては仕事の幅を広げる意味でも今回この話は受けようと考えてる。もちろん、やるからには赤字は出さない。利薄でも利益は出すつもりだ。それに皆んなにも良い勉強の機会になると考えてるがどう思う?皆んなの意見も聞きたい」 一応、先方の資料を見ながら、この間商談した内容と俺の意見を一通り話した。 「私はやってみたいです。面白そうですし、課長が言ったように勉強になります」 田口が率先して意見を言った。 ま、田口には事前に詳細は話してたからな。 「私も良いと思います。やってみないと先の事は解りませんし面白そう」 佐藤も賛成した。 「…私も…良いと思います」 ミキは少し躊躇したような感じで賛成した。 それがミキの中で何か蟠りや不安があるのか?といらぬ考えをしてしまう。 やはり元彼には極力会いたく無いのかも知れないとも思った。 田口や佐藤はミキの性格もあり慎重派だと言う事で、ミキの躊躇した事には気にしてないようだ  「良し! 皆んなの意見が一致したなら、この話は受けよう。それで後日、また担当者が来社する時に、ある程度こちらから採算が取れる商品を提案しようと思う。記念品と言っても、来場者に粗品として渡す位の商品になるから、早々、金額は掛けない方向で、それでいて見映えも良い物を考えてる。何か意見があれば」 一応、俺なりにも考えてはいたが、ここは皆んなの意見やアイディアを聞きディスカッションしようと考えてた。 「日本的な物を…って事ですよね?それなら、やはり外国人からの日本のイメージだと…富士山とか.侍.忍者.芸者.神社や寺.桜や紅葉とかですかね」 田口の意見は一般的に外国人が持つ日本のイメージだ、それを活用しようと言う事らしい。 「あとは、受けが良いのは漢字ですね。変な漢字が書かれたTシャツを意味も解らず着てますからね」 佐藤の言う事も一理ある。  「芸者絡みで言うと着物や浴衣も好きですよね。浅草とか浴衣を着て歩く外国人とか多いですから」 ミキがそう話す。 それから色んな意見が出て結構白熱した。 良い傾向だ。 俺が考えてた事とも、ほぼ一致する。 「色々意見が出たが結論として。手拭いにプリントするって事で。プリントの内容は先方の意見もあるが、我が社としては富士山か忍者で水墨画のイメージと、あとは漢字プリントにするかの2択で提案する事にしよう」 プリントにすれば経費も抑えられるし、生産も早い1種類の色にするのも経費を抑える為だ。 「良いと思います。フェスには良くタオルを振り回したり汗拭きにも使ってますから、その手拭いバージョンで使って貰えれば」 「フェスで使い終わっても、好きな人は部屋の飾りにも出来ますし」 「良いじゃん.良いじゃん」 ある程度、決まったな。 3人の顔からも意欲が出てる。 「良し! その線で話してみる。それでだ、先方との窓口は田口にして貰う。今回は初めての試みと言う事もあり田口、頼むな」 「はい」 「香坂には手拭い業社との窓口で頼む。田口と連携してやってくれ」 「解りました。田口さん、宜しくお願いします」 「佐藤は2人のサポートを頼む。俺はアメリカ支社との連絡窓口になる。じゃあ、今日はここまであとは先方に連絡して、また後日打合せする」 課でのミーティングが終わり会議室を出て、それぞれ本来の仕事に取り掛かる。 俺も自席でパソコンにミーティングで決定した内容を先方との打合せの資料成作と上司への提案書を作成した。 あまり会いたく無さそうなミキの躊躇いを見て、俺の中で少し気になってた。 昔の事なんだし何とも思って無ければ躊躇う必要も無いんじゃないか?と思うが……ミキの性格上から言って俺に気を使って…とも思い直した。 ミキからはっきりと「伊織さんの事を愛してます」と言われた事が、まだ俺の自信にもなってた。

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