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第725話
「ありがとうございます。本当に助かります。実は…貴社に伺う前に何社かに打診したんですが ‘採算が取れない‘ とか ‘将来的にどうなるか解らないようでは…。国内でならともかくアメリカとなると…’と、色良い返事を貰えなかったんで。私も日本滞在日数も余り無いので、この2ヶ月の間に何らかの形にして、アメリカ支社に戻る予定だったので少し焦ってました。本当に、ありがとうございます。絶対に、損はさせません! 成功させてみせますから」
「解りました。是非、お願いします。それでは、明後日、お待ちしております」
「はい! 伺わせて貰います」
丁寧にお礼を何度も言われ、次の日時と時間を話し電話を切った。
電話からも、この企画に対する意欲と自信が感じられた。
たぶん、仕事が出来る奴なんだろうな。
まだ1度しか会って無いが……ミキが惚れた相手と言う事もあり、どんな奴なのか?興味もあった
電話の内容から言って…日本に滞在するのも2ヶ月だけで、いずれ渡米する事が解りホッとする気持ちもあった。
ミキより俺の方が奴を気にしてるのかも知れない
俺もミキも恋愛遍歴はあるのは当たり前だが……やはり目の前に、昔の男が現れると心中穏やかではいられないな。
そう言えば……以前も祐一の店で…昔付き合ってた男と遭遇した時があったが……あの時もやはり心中穏やかでは居られなかったが……あの男には何故か?解らないが胸騒ぎする。
それが何なのか?は俺にも解らないが、1つだけ解ってる事は ‘ミキ’と呼ばせる位心を許し信頼してたって事だ……それくらい惚れてた相手だと言う事だろう。
それを裏付けるのは祐一の店で会った男は ‘美樹’と呼んでいたはず。
仕事中にも関わらず、そんな事を考えてしまった頭を振り仕事モードに切り替えた。
「IP企画との打合せは、明後日の午後1時に決まった。顔合わせがてら皆んなも参加するように時間空けてくれ。良いな?」
『はい』
俺はミキをチラッと見たが、普段のミキと変わらない。
やはり前回は突然の事で動揺してたのかも知れない。
あれから数日経つし、俺とも話しをし心も落ち着いたんだろう。
あの時には、ミキを飯に誘うような事を言ってたが、この数日あの男からミキへ連絡がある事は無かった。
奴の中でも終わった事なんだろう。
俺の方が気にしてるようでは……もう終わった事なんだから…と、俺も気持ちを切り替えた。
それから数時間後に、ミキは外回りに行った。
「行ってきます」
会社を出て、今日回る予定の業社の所に電車で向かう。
明後日…先輩に会うのか。
ここ数日で、少し気持ちも落ち着いたけど……。
この間会った時には、突然で動揺した。
先輩は何も無かったように懐かしい後輩と会ったと言う雰囲気で接してきた。
俺の方は……胸がドキッ‼︎っとした。
そして会議室を出た時にはドキドキ…してた。
懐かしい声…そして相変わらず格好良かった。
ううん……大学の時より落ち着きと社会人としての自信が加わって更に格好良かった。
大学時代も良い意味で自信家で皆んなを引っ張っていけるリーダーだったし。
それでいて強引な所もあるけど、無理難題を言うわけでもなく自分も率先してやるし、皆んなと楽しむ事を1番に考えてた。
気遣い.優しさ.強引さ.自信家だけど、先輩を嫌う人は居なかった……皆んなの憧れの先輩だったな
だから良くモテたし、本人も自覚はあるんだろうけど、それをひけらかす事はしなかった。
俺も憧れてた……そんな先輩に ‘好きだ! 付き合って欲しい‘ と言われた時には、俺も嬉しかった。
もうその時には、先輩を憧れの人から好きな人に変わってたんだと思う。
それまで女の子としか恋愛事はしてなかったから少し躊躇した俺に ‘香坂の側に居たい! 俺も好きになった相手が男で散々悩んだけど……自分に正直に生きたい。俺と付き合って、絶対に後悔させない‼︎ だから俺と付き合ってくれ‼︎’ と、真っ直ぐに俺の目を見て意思の強さを感じて……迷いは消えた。
そして付き合うようになったけど、マコ以外は誰にも知られずひっそりと愛を育んだ。
俺は先輩に夢中になったし信頼もしてた。
楽しかったなぁ~。
大学の時の事を思い出し電車に揺られてた。
あのドキドキ…は、懐かしさからなのか?
大人になり更に格好良くなった先輩を見たからか?
それが何なのかは解らないけど……その気持ちを知りたい。
そうじゃなきゃ伊織さんに真っ直ぐな気持ちで対峙出来ない気がする。
伊織さんを愛してるのは、今も変わらないけど…
それでもあれから先輩からのご飯の誘いがなかった事で社交辞令だったんだと思うようになり、日にちが経つに連れ気持ちも落ち着けた。
もしかして……先輩から連絡来るのを待ってた気持ちもあったのかも……。
先輩の突然の出現で、俺の気持ちはどう言うわけか?揺れ始めてた。
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