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第727話

「香坂、知合い?」 田口さんが不思議そうに聞く。 「大学の先輩なんです。先日、来社した時に何年か振りに会いました」 「そうか。それにしては、他人行儀だな」 「仕事中ですから。先輩、何ですか?」 「すみません。ちょっと、失礼します」 田口さんとの打合せを一旦中断し、俺の側に寄って来た。 「香坂。この間、飯食いに行こうって話し、金曜日の夜でも良いか?」 あれは……社交辞令じゃ……だって、連絡無かった。 「……マコにも聞いてみないと」 突然言われても返事に困る……かと言って、田口さん達の前で、久し振りの先輩後輩がご飯食べに行くのを断るのも変だし。 行くとしても、やはり3人じゃないと……。 「それで良いから、マコにも確認してくれ。これ俺の携帯の電話番号とアドレスだから」 メモを渡された。 「…解りました。マコに確認して連絡します」 「いや、俺から香坂に連絡する」 こう言うちょっと強引な所も変わって無い。 「解りました。今日でもマコに確認します」 「宜しくな」 嬉しそうに笑う先輩の顔も懐かしい。 「それじゃな。失礼しました、次の打合せの話しをしましょう」 田口さんと打合せに入ったのを確認して、ドアの所で待ってた佐藤さんと一緒に課に先に戻った。 課に戻る途中で、並んで歩く佐藤さんは俺と先輩の事を根掘り葉掘り聞いてくる。 付き合ってた事以外は、正直に掻い摘んで話した 同じ大学でサークルの先輩.どう言うサークルだったとか.先輩の性格とか佐藤さんは世間話なのか…ただ好奇心からなのか…。 それから15分程で伊織さんが課に戻り、田口さんが少し遅れて戻って来た。 「永瀬さんは帰ったんですか?」 「ああ。今、エレベーター前まで送った。次は、来週の火曜日の午後に打合せだ。それまでに、何種類かの富士山のプリント画を用意しておかないと。そうだ、永瀬さんが香坂とは同じ大学でサークルで一緒だったって言ってたが、どんなサークルだったんだ?」 田口さんと佐藤さんの話しを聞いてた俺に突然振られ、佐藤さんに話した内容を田口さんにも話した。 「へえ~、大学時代から。今の会社もそう言う職種だろ?本当に、企画したりイベント事が好きなんだな」 「そうですね。大学の時も皆んなを纏めて率先して頑張ってました。リーダー的存在でしたから」 「永瀬さん、大学でもモテただろうな。あれは、女が放っておかないタイプだ」 そう言う恋愛事には、佐藤さんの方が興味深々だ やはりこの手の話しは大好きだ。 「…そうですね。モテてましたよ。彼女も何人か居ましたし」 俺と付き合う前には、何人か彼女は居た。 「やっぱりな~~。俺とはタイプが違うけど、モテるって感じするもん。男らしいって言うか」 「じゃあ、お前はどんなタイプなんだ?」 「俺はなんて言うか、今風で言うとシャニ系?かな。幅広い年代にモテちゃうもんね~」 「下らん‼︎ ただのチャラ男だろーが! 本当に、モテるって言うのは課長や永瀬さんみたいな人を言うんだよ。お前は、ただのチャ・ラ・男。遊ばれてんの!」 「酷~~い‼︎ 幾ら、俺でも傷ついちゃう~~‼︎」 また、漫才みたいな2人の会話を側で聞いてた。 「そろそろ仕事しろよ」 伊織さんに注意され、俺達は仕事を始めた。 パソコンで先程までの打合せの内容を打ち込みながら考えてた。 ミキを呼び止めた時に、永瀬は思わず ’ミキ‘と言いそうになったのを寸前で ‘香坂' と呼び直した。 ミキの仕事場である事を考え、そして今は仕事中と言う事もあったんだろうが、ミキの事をミキと呼ぶ事が自然に出ると言うか、永瀬にとっては当たり前なんだろう。 それ程、長い間呼んでたと言う事だろうな。 あれからミキに聞いたが、飯の誘いの連絡は無いと言ってたが、なぜ今日改めて誘った? 改めて、ミキと対峙し懐かしさからか? 取り敢えず、ミキの返事が真琴君と一緒ならと言った事にホッとした。 真琴君が居れば大丈夫だろう。 本当は行かせたく無いが、3人で会う分には変な事にはならないだろうし、旧友を温める事で終わるだろう。 真琴君が居て良かった。 ずっとミキを守り抜いて今も守ってる真琴君だ。 それに永瀬も後1~2ヶ月で渡米するんだ。 真琴君とその期日だけが俺の安心材料に繋がってた。

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