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第730話

「今頃は…飲んでるか」 残業をし、コンビニで買った弁当を食べ風呂に入り何もする事が無くなり、ソファに座り見てもいないTVを点け考え事をしてた。 ボーっとTV画面を見て、3人で飲んでるであろうミキ達の事で頭はいっぱいだった。 真琴君が一緒なのが救いだな。 ミキの信者でもある小さな騎士(ナイト)は、こう言う時は心強い。 真琴君を誘ってみる!と電話掛けた終わったミキに 「どうだった?」 「大丈夫でした、マコも行くって。でも……マコ ちょっと怒ってたから……凄く、心配です」 別れる原因が解らない事やその後のミキの事を側でずっと見て来た真琴君には、やはり許せないものがあるんだろうと俺には真琴君の心情が手に取るように解った。 真琴君は見た目子供っぽいが、結構しっかりしてるし物事もはっきり言うからな。 どうしたらやら。 真琴君も最悪な雰囲気にする程、子供では無いとは思うが……。 永瀬の方はどう言う気持ちで誘ったのか?  会社で会ったのは、本当に偶然だったんだろう。 出会った2人の様子から見て、そこに居た俺にも解った。 永瀬もミキも驚いて居たからな。 学生時代の懐かしさで誘ったのか? それならそれで良いが……もし…何らかの下心があるなら……ミキからの ‘真琴君も一緒に’ と言う話しを蹴っていただろうし。 帰って来た時のミキからの様子でどうだったか?解るだろう。 何も無ければ、ミキからも話してくるはずだ。 時間を見て、そろそろ帰って来る頃だろう。 そう思ってたが、ミキが帰って来たのはそれから2時間後だった。 俺はその間イライラ…悶々として待ってた。 玄関ドアが開く音がした。 「ただいま~~」 ミキの声がした事にホッとし、落ち着け! 冷静に!と自分に言い聞かせて普段通りに振る舞うように気持ちを切り替えた。 リビングに入って来たミキに「お帰り~。楽しかったか?」と何気なさを装い迎えた。 鞄を床に置き、俺が座ってるソファの近くのラグに座り込む。 ミキからは酒の匂いがした。 「楽しかったです~。学生時代の懐かしい話をずっとしてました~。あとは…先輩の日本の変わり様にカルチャーショック受けた話しとか。渋谷駅とか東京駅とか構内でも迷子になってグーグルで検索しながら歩いたとか.街中歩く時はスマホが手放さないって言ってました。先輩も忙しくって、まだそんなに出歩いて無いとか言ってました。フェスの記念品(粗品)の件が最優先で、それ以外にも会社に駆り出されイベントの手伝いとかしてるみたいで、会社以外の人と飲んだの久し振りって言ってましたよ」 楽しそうに話すミキの顔からも態度からも何も無かったと解り、また胸を撫で下ろした。 付き合ってるのは俺なんだ‼︎ 心配する必要は無いはずだが、やはり心中穏やかではいられないのも本当だった。 3人で会った様子を自分からここまで話すと言う事は大丈夫だったんだな。 良かった.良かった。 ただ、永瀬の事ばかり話すのが気になった。 「真琴君はどうだった?心配してただろう」 「うん。でも、電車の中でマコに雰囲気を悪くしないように話してたから。マコも解ってくれたみたいで、ずっと先輩と学生時代の話してました。本当に、良かったです」 目が潤み頬が薄っすら赤いが話す内容もしっかりしてるし、そこまで飲んでないようだ。 「そうか、良かったな。風呂は入れるか?」 「仕事帰りに飲んで、お酒臭いから入って来ます」 「飲んでるんだから気をつけろよ。それとも一緒に入ってやろうか?」 ニタニタ…笑って話すと 「伊織さんは入ったんでよね……その顔……エロオヤジっぽい。1人で入れます」 鞄を持ち、ミキ用の部屋に消えた。 心配するまでも無かったか。 ま、真琴君が居るしな。 楽しかったらしいし、これで蟠りも無く会社でも永瀬と会えるだろう。 ずっとミキが永瀬の前で緊張してたのは解ってた それもあり、今回の誘いには何も言わなかった。 会社では必然と会う事もあるだろうが、これでプライベートではそうそうミキを誘う事も無いだろうと、この時は思ってた。

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