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第731話
今日が実質初めての打合せに、永瀬が午後に来社する事になってた。
先週は顔見せとこちらからの提案で大まかな事は決まったが、大事なプリント画の決定と細かい所まで決めると言う事で、田口から打合せに立ち会って欲しいと要望があった。
そして業社窓口であるミキにも打合せに参加するように要請し、永瀬を含め4人での打合せする事になった。
佐藤には、別件で俺は仕事を1つ任せてた。
午前中はミキと佐藤は外回りし、田口は今日の打合せの為に内勤して過ごした。
そして14時に永瀬の来社を受付から内線があり、また会議室で打合せした。
会議室に3人で待ってると、上野さんが永瀬を連れて来た。
会議室に入って早々にミキを見て笑顔を見せ、それから俺と田口に向き直り挨拶する。
「先日はありがとうございます。今日も宜しくお願いします」
「こちらこそ。今日はこちらで用意した前回決まった富士山の水墨画の写真を3枚程見て決めて貰おうと思います。その後は細かい所まで決めていければと…。香坂も業社との連絡しやすいと思いまして参加させましたので宜しくお願いします」
「宜しくお願いします」
田口が挨拶がてら話し、ミキも挨拶した。
ミキの挨拶に、また笑顔で永瀬は応えた。
「こちらこそ」
仕事モードのミキが面白いようだ。
俺と田口に対してとは違う親しみのある笑顔を見せる。
そう見えてしまうのは、俺が邪推してる所為なのかも知れないが…。
田口は大学の先輩後輩と言う親しみだと思ってるだろう。
俺もミキと付き合って無かったら、純粋にそう思ってたと思う。
俺の心の内とは裏腹に打合せは進む。
田口が3枚のプリント画をテーブルに並べる。
富士山と松・富士山と鶴2匹・富士山頂と雲海
どれも雄大な富士山をメインに松の枝.鶴が2匹飛来.富士山の麓に雲海.どれも富士山を良く引き出してる。
水墨画ならではの濃淡の白と黒の世界が日本らしく良いと思った。
永瀬は真剣な眼差しで3枚の写真を見てた。
さて、どれを選ぶ。
暫く永瀬が選ぶまで黙って見て居た。
そして1枚の写真を手に取った。
「これにします!」
それは富士山頂と雲海の図柄だった。
永瀬の立場なら、俺もそれを選んでた。
「どうして、これを?」
永瀬が選んだ意図を聞いてみた。
「どれも甲乙付け難かったんですが、強いと言えば、1番幻想的で外国人受けしそうだなと。あとは……フェス名と西暦(年)を入れたいので全体的なバランスを考えて、これに決めました!」
なる程な。
俺の考えてる事とほぼ一緒だ。
「解りました。私もそれが1番良いと思ってました。田口と香坂はどうだ?」
「私は永瀬さんが決めた事には異論はありません
うちはあくまでも仕事を請負っている立場なので」
「私も良いと思います」
「それなら、これでいこう!」
田口や香坂からの異論も無かった事で決めた。
「それでフェス名と西暦(年)はどこに?」
田口が聞くと永瀬は写真を眺め考えてた。
「真ん中に STARDOM festivarOO' と1番濃い色でフェス名と年をお願いしたい」
「真ん中ですか。少し斜にしてもカッコいいかと」
田口が提案すると
「それも考えたんですが、広げて見た時にはその方が良いと思ったんですが、使い道として鉢巻みたいにする人が居る事を考えた場合フェス名も見え易いかと。結構、そう言うの日本のイメージでやりたがると思うですよね」
「なる程~。そこまでは考えが及びませんでした
あと、失礼ですけどフェス名の由来も聞いて良いですか?」
「うちの念願だったフェスを3社共同と言う形で一応開催出来る事は凄く嬉しかったんですが、将来的には単独で開催出来るように高みを目指し、このフェスが長く続く事を込めてと何組かは付き合いやコネでそこそこ有名なアーティストやバンドが参加してくれますが、割とインディーズバンドやアーティストが多く占めます。これからの若者やインディースで頑張ってる人達にもスターにのし上がって欲しいと言う意味も込めました。フェス名に気持ちが入り過ぎて…ちょっと説明するのが恥ずかしいですけど」
少し照れたように熱い気持ちを語った。
フェス名に永瀬達の熱い思いが込められてるのが伝わってきた。
「良い名だな」
永瀬達の思いに共感し、思わず俺も声に出してた
「全然恥ずかしく無いですよ。その位の気持ちがあった方が絶対に長く続きます。それに、これからのアーティストの活躍の場になります」
田口も感銘を受け熱く語る。
「凄く良いと思います‼︎ 私も微力ながら力になりたいです!」
ミキも永瀬を真っ直ぐ見て気持ちを伝えた。
この事がキッカケで、ある意味チーム一丸となった気がした。
それからは細かい打合せに入り、記念品(粗品)だとしても.今回だけかも知れないが、それでも其々が良い物を作ろうと意見を出し合いノートパソコンに写真を取込み富士山の図柄はそのままに濃淡を加工したりフェス名と年の配置や大きさを決めた。
正味2時間程であったが、あとは香坂が業社に打合せと説明し、次までにサンプルを見せる所まで話しが進んだ。
永瀬の日本滞在期間が短い事もあり、早いペースで進行していく。
たが、短期間だが良い物が作れそうだと俺は踏んでいる。
今日の打合せが粗方終わり雑談を交えながら、次の打合せ日を決め挨拶と片付けをし、就業時間もあと少しで終わりと言う時だった。
「ミ…香坂。この後、飯食いに行かないか?」
唐突に、永瀬がミキを夕飯に誘った。
それと……やはり…ミキと言いそうになり香坂と言い直した。
テーブルの片付けをしてたミキは永瀬の誘いに顔を上げ、そして俺をチラッと見て返事に困ってるようだった。
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