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第734話

今週は永瀬との打合せも無く、通常業務と並行し田口は資料作りをしミキは業社との連絡窓口とし先日決まったプリント画での手拭いサンプル製作の為にパソコンで送った内容詳細を連絡してた。 サンプルは次回の永瀬との打合せに必要な為、業社への連絡も密にとっていた。 佐藤も俺に言われた仕事をし、俺も含め皆忙しくしてた。 サンプルが無い事には先に進めず、今週はサンプル待ちで永瀬との打合せは無かったが、あれ以来仕事が終わった時間帯なのか?それとも部屋で寛いでる時間帯なのか?殆ど毎日の様に、永瀬からミキにLINEがくるようになった。 それは長くは無いが10分程の遣り取りで、ミキも楽しそうにLINEの内容を俺に報告する。 仕事絡みの事は無く、大概が永瀬がイベントを手伝い何をしたとか.どこに行ったとか、そう言う下らない内容だが……側から見れば、そんなLINEの遣り取りをしてる2人は付き合いたてのカップルのようにも見える。 ミキも後ろめたい事が無いからLINEの内容を俺に話すんだろうが……最初の頃はそれが安心に繋がってたが、それが3日も4日も続くと苦痛に感じる様になってきてた。 たかが10分や15分と言え……。 そして2人の仲が再会した時より確実に距離が縮まってる気がしてた。 俺の中で……焦る気持ちと不安が少しずつ広がってた。 それでもLINEの遣り取りだけで会う事が無いのが唯一の安心材料になってた。 やはり、次の打合せの後にもミキを夕飯に誘うのだろうか? この間は不意打ちだったが、今度は……阻止してやる! こちらから先手を打って……。 俺は何とか2人で会わない様に画策してたが、永瀬の方が動くのが早かった。 それは木曜日の夜に夕飯を済ませ、まったりと過ごして居た時だった。 ♪ピロ~ン… ミキのスマホからLINEを知らせる音が鳴った。 またか⁉︎ テーブルに置いてあったスマホを手に取りLINEを開いて微笑む。 カチャカチャ…LINEの遣り取りをしてたかと思ってたが、唐突にLINEの手を止め俺に話し掛けてきた。 「伊織さん、明日なんですけど。会社帰りに出掛けて良いですか?」 「永瀬か?飯か?」 真琴君や沙織達とは言わずに、直ぐに永瀬と言った事は嫌味ぽかっただろうか? 気にしてると思われたか?いや、実際は気になってるが……。 「まあ、そうなんですけど。大学のサークルで先輩の仲良かった友達と会うらしく、俺とマコも来ないか?って。俺とマコにとっては…先輩もですけどお世話になった先輩方だったので、卒業以来会って無いので……会いたいなぁ~って」 会いたいと言われたら…だめだ!とは、言い辛い。 真琴君も一緒なら、それに永瀬の仲良かった友達とやらも来るんだろうし……2人っきりじゃなければ良いか。 「解った。そうなると飯じゃなく飲むんだろ?あまり飲み過ぎるなよ。まあ、真琴君が居れば安心だが」 俺が了承すると、ミキは俺の顔色を伺ってた顔から蔓延の笑みに変わった。 「マコに聞いて返事します。ありがとうございます」 早速、嬉しそうに真琴君にLINEしてた。 そんなに、その先輩らと会いたかったのか? それとも永瀬に? いや、疑心暗鬼になるのは止めろ。 ミキは隠さずに言ってくれたじゃないか。 俺の気持ちは色々と葛藤してた。 カチャカチャ…カチャカチャ…… 「マコも大丈夫だって。明日の夜にマコと待合せて行って来ますね。伊織さん、夕飯は大丈夫ですか?」 「ああ、俺の事は気にするな。適当に食べるから」 相変わらず俺の夕飯を気にするミキ。 その些細な事だが、俺の事を考え気にしてくれてると解るだけで嬉しかった。 「すみません。じゃあ、先輩に ‘行く’ってLINEしますね」 カチャカチャ…カチャカチャ… LINEを打ち込む音が煩く聞こえる。 俺は気にして無い風を装いTV画面を見てた。 それから店の場所や時間が決まったらしく、やっとスマホを手放しミキの口から明日会う先輩達の話を始めた。 永瀬の同級生でサークルの先輩2人と言う事と永瀬と一緒にサークルの皆んなを纏めリーダー的先輩達だったと卒業して以来会う事が無く久し振りで変わってないかな?とか話すミキはやはり懐かしい先輩達に会うのが嬉しそうだった。 俺は心の内を隠し、黙ってミキの話を聞いてた。 そしてこの事がキッカケで更に2人の距離が縮まる事になっていくとは……真琴君の存在や先輩達と一緒と言う事で俺も油断してた。 嫉妬や狭量な男だと思われたく無かった事もあり ミキの前では昔の男の事は気にしない寛大な男を知らず知らず演じてたのかも知れない。 そう言う自分が後々に自分で自分の首を絞め身動き出来なくなっていく事は後々解る事になろうとは…。

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