739 / 858

第741話

週明けの月曜日に仕事を終え、ミキと時間差で会社を出て待合せをして居た。 昨夜から、今日の夕飯は外食しようと強引に誘った。 俺達の最寄りの駅で待合せし、前に行った焼鳥屋で夕飯がてら少し飲む事にした。 週始めで明日も仕事だと言う事で、ビールジョッキ1杯でお任せの焼鳥や唐揚げをつまみに飲み、締(し)めの飯は2人共親子丼を食べた。 どれを食べても「美味しい.美味しい」を連発しながら食べるミキの姿に店主も喜んでた。 本当に美味しそうに幸せそうに食べるんだよなぁ 一緒に食事をすると、こっちまで幸せな気分になる。 そして腹もいっぱいになり、2人で部屋に帰って来た。 「あ~~お腹いっぱい! 美味しかった♪ あんなお店が家の近くにあるって良いですよね♪」 「そうだな。コーヒー入れるから少し休んだら、先に風呂に入れよ。風呂の準備しておく」 「今日は随分至り尽くりなんですね?」 ふふふ…と可愛く笑う。 「いつも家事頑張ってくれてるミキに、偶には楽をさせてやりたいって思ってな」 「あっ! だから今日、外食しようって……。伊織さんの気持ち凄くありがたいです。でも、家事の事は気にしないで下さい。伊織さんには秘密にしてましたけど、これでも平日とか手を抜いてますから。あっ! 言っちゃた~」 本当に可愛いな! 「お互い仕事してるんだ。手を抜いても構わない俺1人の時は平日なんて掃除しなかったし、洗濯だって1人だから溜めてからやったしな」 男の1人暮らしなんて、そんなもんだろ。 1人で生活した時ほ日中は仕事だし部屋には居ねーから、そんなに汚くならねーし。 だが、ミキは割と豆に掃除をするし洗濯もする。 これも性格なのか?  同じ男だが……家庭的って思わせる。 コーヒーを入れ、そんな事を話しゆっくりした所で、先にミキが風呂に入った。 俺はその間にスーツから部屋着に着替えソファに座りTVを眺めてた。 ミキが風呂に入って数分後にテーブルに置きっぱなしのミキのスマホからLINEの知らせが鳴った。 ♪ピロ~ン…… ミキのスマホか。 LINE? 瞬時に永瀬からだと思った。 そしてミキのスマホに手を掛けようとして………止めた。 幾ら付き合ってるとしても、人のスマホの中身を見て良いはずが無い。 もし…俺もそんな事されたら嫌だし……。 誰からか?どんな内容か?気になるが……もし、仮に……見たとして…ショックな事が書かれてたら、立ち直れない。 それに永瀬って決まってないかも知れないし。 真琴君や沙織や優希さんの可能性もある。 仕事絡みなら田口だってそうだ。 まるで永瀬からのLINEじゃない事を願ってるようだな。 そしてまた…♪ピロ~ン…LINEが鳴った。 気になるが……無視する事にした。 そして20分程でミキが風呂から上がり、リビングに濡れた髪をタオルで拭きながら現れた。 「また~。髪、乾かせって言ってるだろ?今、ドライヤー持って来るから、ソファで待ってろ」 俺はソファから立ち上がり洗面台に行きドライヤーを手に戻って来た。 そしてミキの髪を乾かす。 ゴォ~.ゴォ~…ゴォ~ゴォ~…… 少しずつふわふわになっていく髪と気持ち良さそうにしてるミキ。 こう言う時って幸せを感じるな。 数分後には髪も乾きふわふわ…となった。 その頭の天辺に1つキスを落とした。 「良し! 乾いたぞ。じゃあ、今度は俺が風呂に入って来る」 「ごゆっくり」 そして俺はドライヤー片手に浴室に向かった。 俺も20分程で風呂から上がり髪を乾かしリビングに向かった。 ミキはスマホを片手にカチャカチャ……指先を動かしてた。 そして俺が風呂から出たのにも気が付かずに集中してたようだ。 LINEの相手は誰?とも聞かず……。 笑顔で夢中でLINEのやり取りをしてるミキに少し離れた所から声を掛けた。  「ミキ、少し書斎で仕事するからな」 俺の声に反応し、スマホから顔を上げ俺を見た。 「あっ! はい。仕事持ち帰りしてたんですか?」 「仕事って言うか、調べ物だな」 「そうですか。そんなに時間は掛からないですか?」 「そうだな。30分かそこらか」 「解りました」 そして俺は書斎に向かいドアを開ける時に振り返りミキを見ると、既にスマホを弄ってた。 そんなに……夢中になる程の……やはり永瀬か。 そんなミキの姿に気持ちは落ち込む。 その気持ちのまま書斎に入りパソコンを立ち上げた。 念の為、パソコンは開いておこう。 スマホで時間を確認すると20時を少し回ってた。 大丈夫だろう。 そしてスマホを弄り、目的の相手に電話を掛けた ♪♪♪♪…♪♪♪♪…♪♪♪♪…… 数回のコールの後で電話に出た。 「伊織か。そろそろ電話掛かってくるだろうと思ってた」 電話に出るなり、そう話する祐一。 「そうか。なら、今の俺の状況解ってるんだ?」 「ああ、マコに聞いた。永瀬が偶然仕事絡みで再会した事や3人で飯を食べた事とかな。それで… 何を聞きたい?」 やはり長年友人関係だけあり、俺の事は解ってる 俺はミキからの聞いた事を祐一に話した。 「ミキから聞いたなら、俺に聞く事はもう無いだろ?何が気になる?」 「なぜ、別れたのか?知ってるか?ミキは原因は解らないって。あとは……‘ミキ’と呼ばせるだけあって……本当に信頼し好きだった相手って事だよな?」 龍臣にも話したが、その2つはどうしても気になってた……あと何か解らないが、俺の中でモヤモヤ…とした何かが……気になる何かがあるが、それが今は何か解らず…ずっと引っかかっていた。 祐一の話を聞けば、それが何か解るんじゃないか?とも思った。 「別れた原因は、俺もマコもミキも解らない。永瀬だけが解ってると思う。急に、音信不通になって何度もミキは連絡したんだ。その内ミキも連絡しても何も返ってこない事に怖くなり、少しずつ連絡する頻度が減っていった。永瀬が渡米して半年経って、殆ど表向きは諦めてるように振る舞ってたが、マコから聞いた話しだと ‘あと半年待って連絡無かったら永瀬の事は忘れる’って言ってたらしい。結局、永瀬から連絡無くてな。その後のミキは永瀬を忘れさせてくれる人や好きになれそうな相手を選ぶようになった。相手は本気でも、そんなミキの気持ちはどこかで解るんだろうな。数ヶ月とか半年も続かなかった。女や男とコロコロ変えて、寂しさや愛情に飢えてるようで見てられなかった。俺とマコで変な相手に捕まらないように見張る事しか出来なかった」 それ程、好きだった相手ってわけか。 「元々、家族の事もあって…寂しさとか愛情に飢えてた時に永瀬と会ったんだろうな。その寂しさを埋めて側に居てくれたんだろう。前に、マコが親友でもやはり埋められない事があるって、悔しがってたからな」 「真琴君でもそう思う程、永瀬はミキの事を…」 「大学の時の事は俺にも詳しくは知らない。後でマコに聞いて見ろよ。俺が知ってるのは…最初に会ったのはミキやマコじゃなく永瀬だったんだ」 「どう言う事だ?」 頭の中がこんがらがる‼︎ 俺が知らない事が次々と……。

ともだちにシェアしよう!