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第747話
その週の土曜日にゆっくり起きた俺達は朝昼兼用の食事をし、ミキは掃除.洗濯と家事に勤しみ、俺はその間書斎で過ごしてた。
「疲れたな」
目頭を押さえ首を回し体が鈍ってると思い、リフレッシュを兼ねてマンションのジムに行こうと思い立った。
家事の邪魔をしないように、その間に2~3時間ジムに行くのも良くある事だ。
書斎を出てミキを探すと、洗面台の鏡を磨いてた
「ミキ、ジム行って来る。程々にして、少しはゆっくりしろよ」
「はい、こことキッチンの所を掃除したら終わりですから。その後はゆっくりします。伊織さんこそ、あまり無理しないで下さいね」
「ああ。パソコンに向かってたら、目と肩が疲れた~。あと座ってたからな。ちょっとジムで走って来る」
走るのをメインにバイクと筋トレもか。
やるとなると結構本格的に体をいじめ抜き、そしてシャワー浴びるのが俺のリフレッシュになってる。
「じゃあ、行って来る」
一応、運動しやすい格好でマンションのジムに向かった。
その時の俺は3時間後に戻った時、部屋にミキが居ないとは思いもしなかった。
ガタンッ!
玄関のドアが閉まり伊織さんがジムに出掛け、俺はまだ部屋の掃除や片付けをして居た。
平日は軽く掃除するだけだし、日曜日はゆっくりしたいと思って土曜日には結構きちんと家事をする事に決めてる。
伊織さんは ‘平日は2人共仕事で居ないんだから、部屋は汚れて無いし、そんな無理しなくて良い。俺は汚いと思った事が無いぞ’と言ってくれるけど、1人で生活してた時の習慣もあり気になってしまう。
別に、1日中家事をしてるわけじゃないし、俺の気分転換にもなってる。
そう言う風に言ってくれる伊織さんの優しさも感じてる。
さて、あとは冷蔵庫の中を片付けて、少し棚の整理しようかな。
伊織さんが出掛けてから30分程家事をして過ごした。
「良し‼︎ 今日は終わり! さてとコーヒー飲んでゆっくりしようっと」
コーヒー片手にハンドメイド集とアクセサリー作品雑誌の2冊を持ちソファでパラパラ…見て居て暫く経った時だった。
♪♪♪♪~♪♪♪♪~……
テーブルの上に置いた俺のスマホが鳴った。
「ん、マコ?」
俺に電話掛けてくるのは伊織さん以外ではマコか沙織さん位で画面を見ずに電話に出た。
「はい」
「ミキ?俺、恭介」
「えっ‼︎先輩?どうしたんですか?」
いつもLINEでの遣り取りで電話は再会してから殆ど無かったのもあり、予想外の先輩からの電話で驚いた。
「ああ、ちょっと頼みがあってな」
何だろう?
俺に頼みなんて…。
「何ですか?」
「ちょっと困った事に……迷っちまって」
「え~~! 今、どこですか?」
「あ~~東京駅構内」
東京駅?
駅構内で迷った?
アメリカから帰国した先輩にはここ数年で様変わりした駅や街は戸惑うって言ってたし……駅構内も複雑になってるから……迷うかも。
困って、俺に連絡してきたんだ。
「そこから何か大きな目印になるような所見えますか?」
「スタバが見える」
東京駅にスタバは3店あるけど……迷ってるならどこのスタバか解らないよな。
「じゃあ、そこに入って待ってて下さい。俺、直ぐに行きますから」
「本当か?助かる‼︎」
「じゃあ、なるべく早く行きますから」
「待ってる」
電話を切って、直ぐに俺は出掛ける為に俺用の部屋に向かった。
クローゼットを開け服を選ぶ。
「どれを着ていこうかな」
自分の口から出た言葉にハッと気が付いた。
別に、デートじゃないんだから迷う必要ない。
それに先輩が困ってるんだから、早く行かなきゃ
青のサマーセーターと黒のスキニーパンツに着替え、軽く髪をセットしスマホと鞄を持ち部屋を出ようとして、伊織さんに連絡して置かなきゃと思い立った。
スマホはテーブルに置いてあるし、直ぐに帰って来るつもりだ。
わざわざジムに行ってまで話す事じゃないかな。
結局、テーブルに置き手紙を残した。
| ーーーーーーーーーーーーーーーーー-|
| 伊織さんへ |
| 先輩から連絡あって東京で迷ってる |
| らしく、ちょっと出掛けて来ます。 |
| |
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
これで良し‼︎
その時は困ってるだろう先輩を助ける事しか考えてなかった。
困った時に、俺を頼ってくれた事も嬉しかった。
そして駅に向かった。
この時に、ジムに寄って伊織さんに話せば良かったと後で後悔した。
そして電車の中で落ち着いて考えると駅員さんや人に聞いたりスマホ検索しても事足りるんじゃないか?と思ったり、行動力のある先輩にしては少し変だなと思ったりもした。
でも困って俺を頼ってるんだし…。
それが俺の勘違いと先輩の思惑や策略だったとは思いもしなかった。
会社帰り以外で初めて会うプライベートでの時間に、東京駅が近くなってくるとドキドキ…してきた。
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