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第748話

東京駅に着き、構内にある3店舗のスタバを順番に探し、2店舗めの店の中で永瀬先輩の姿を発見した。 スマホを見ながらコーヒーを飲んでる先輩の席に 駆け寄り声を掛けた。 「先輩!」 「おっ! ミキ。来てくれたのか?」 のんびりとした声で拍子抜けした。 「来てくれたじゃないですよ。駅構内で迷ってるなら駅員さんに聞いた方が早かったんじゃないですか?」 「えっ! 俺、駅構内で迷ってるって言った?」 「えっ! 違うんですか?だって、電話で迷ってるって言ってたじゃないですか?」 「ああ、あれな。迷ってるって確かに言ったけど道に迷ってるじゃなく、どの土産を買うか迷ってたんだ」 「はあ⁉︎ どう言う事?」 「まあ、ミキもコーヒー飲む?来てもらったから俺、奢るから。何、飲む?」 目で座れと合図され、取り敢えず席に座った。 「じゃあ、ラテで」 「OK! 待ってろ」 先輩は足取りも軽く、俺の分の飲み物を買いに行った。 何? どう言う事? 道に迷ったんじゃなく……お土産? 「お待たせ」 笑顔でラテを渡され、お礼を言った。 「ありがとうございます」 先輩も目の前に座り、コーヒーを飲んでる。 「あの~、どう言う事?お土産って?」 「この間言っただろ?大学の時に世話になった教授の所に会いに行くって。それで手土産待って行こうと思ったんだけどさ。店も多いし、何買って行けば良いか目移りしちまって。本当はアメリカ土産持って行ければ良かったんだけど。家族とか会社とか友達に渡して残ってないんだよ。ま、教授と会おうと思ったのも、真司達と会って思い立ったからなんだけどな。こんなに日本に滞在出来るのも早々無いからな。会える時に会っておこうと思って。で、手土産買おうとして、どれにしようか迷ったわけ」 俺の早とちり?勘違い? 「てっきり…」 「ミキに何か美味しいお土産あるか?相談しようとしたらさ。くっくっくっ……。ミキ、勘違いして、相談する前にさっさと電話切っちまうからさま、俺も来てくれるならそっちの方がありがたかったけど」 笑って話す先輩はどこか嬉しそうだ。 「あの言い方だと勘違いしますよ! それで?候補は?」 「まだ決めて無い! 歩く度に、これも良い.あれも良いって思っちまって。本当に、日本のお菓子は全部美味そうに見える」 「解りました。折角、ここまで来たんです。お土産一緒に見ますよ」 「ありがと‼︎ 助かる。ついでに、このまま一緒に大学行かね~?」 「えっ! でも……」 大学か~、懐かしいな。 卒業してからは行く機会なんて無かった。 「教授と大学で会うからさ。何か講義と仕事あるから夕方が良いって言われてさ。こんな機会無いから大学で待合せしたんだ。正々堂々と入って行けるだろ?」 確かに用が無ければ…卒業生でも…それも何年も前だし……入り辛いのは確かだ…気持ちは解る。 「確かに……。俺も卒業してからは行ってないな」 「だろ?一緒に行って、ちょっと構内見て回らね?」 先輩の誘惑にちょっと唆られる。 サークルで使ってた部室や学食や構内にあるベンチ……変わって無いかな? 「ちょっと見てみたいかも」 「だろ?俺1人だとつまんないし、教授に会う前に少しだけ見て回ろう。な! そうしよう!」 「あ…うん。じゃあ、ちょっとだけ」 「やっりぃ~! 部室とか色々見てみたいなぁ~と思ってたけど、1人じゃあな~って思ってたから。マジ、感謝‼︎」 何か上手く押し切られような気がしないでもないけど……こんなに喜んでくれるなら…それに俺もちょっと見たいし…。 「じゃあ、これ飲んでお土産選んで行きましょう」 「そうだな」 大学か~。 本当に懐かしいな。 先輩に誘われなきゃ行く機会も無いし……少しだけ見て、それで帰ろう。 それなら大丈夫だ! 懐かしい思い出の詰まった大学に行ける事に少しワクワク…して居た。 そんな俺を先輩は嬉しそうに見て居た事は気づかずに居た。

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