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第750話
教授の行きつけの小料理屋で、食事しながら飲む事になった。
こじんまりとした小料理屋で明るい女将さんが1人で切り盛りして、家庭的な雰囲気が凄く居心地が良かった。
カウンターの他に4人掛けのテーブル席が3卓ありその1卓に教授と先輩が対峙し、俺は先輩の隣に座った。
和食で家庭的な料理が良いだろうと、アメリカ帰りの先輩を気遣いここに決めたらしい。
教授が推薦するだけあって料理もお酒も美味しく
ちょっと大将のお店を思い出した。
「美味しい♪美味しい♪」と言って、俺と先輩が食べると、教授も女将さんも嬉しそうな顔を見せた。
教授は卒業生がわざわざ連絡し尋ねて来た事が嬉しかったようで、最初は先輩のアメリカでの話を根掘り葉掘り聞いてたが、その内お酒が進むと俺達の学生時代だった頃の思い出話に花が咲いた。他にも、今の学生の要領の良さや主体性が無い.覇気が無いとぼやいて居た。
そう言いながらも教授は俺達の時もサークルの良き理解者で特にボランティア活動に賛同し、今のサークルの学生とも交流し相談にも乗ってるようだった
結局、面倒見が良い教授だ。
先輩もそんな教授には学生の時から懐き就活などの相談もしていた程、尊敬してた。
教授もそんな先輩を可愛がって居たのは、俺も学生の時から知ってた。
そしてその先輩と一緒に居る事が多かった俺やマコにも気さくに声を掛けてくれて可愛がってくれてた。
学生の頃の話をすると目の前の教授にも懐かしさを感じた。
何年振りかの再会に花が咲き、食とお酒も進み和やかに時間が過ぎた。
そして教授と一緒に店を出て、駅まで向かう。
駅の構内で教授と挨拶し、ほろ酔い加減で上機嫌な教授を2人で見送った。
「楽しそうでしたね」
「俺も何年振りかで会って楽しかった。思い切って連絡してみて良かった」
思い立ったら行動に移す所も先輩らしいな。
「じゃあ、そろそろ俺達も帰りますか?」
教授も見送ったし、雰囲気としては帰る感じだった。
先輩は駅の時計を見て
「まだ19時半じゃん。もう1軒行こう! そうだ‼︎ この間行ったbar行こうぜ!」
教授との食事会は早い時間から始まった事もあり確かに、まだ早い時間は時間だけど……。
俺が躊躇してると、先輩は「行こうぜ‼︎」と言って、俺に有無も言わさず腕を引っ張られ電車に乗せられてしまった。
ここまでずっと先輩のペースに乗せられズルズル…ときてしまってる。
「この間行ってから、もう1度行きたい!って思ってたんだよ。俺、ワインに嵌りそう」
先輩も俺も酒が入って良い気分ではある。
確かに、あそこのワイン美味しかったな。
ワインに詳しく無い俺に黙って美味しいワインを出してくれるマスターも感じが良かったし、落ち着いた店の雰囲気も良かったな。
「俺、ワインの事詳しく無いけど、確かに美味しかったです」
「だろ?俺もワインは全然だけどな」
そう言って笑う先輩を見てたら……少しだけ付き合っても良いかなと、お酒も入ってた事と時間も早い事で気持ちが少し大きくなってた。
そして肝心な伊織さんに連絡する事も忘れてた。
伊織さんが心配して待ってる事も考えて無かった
そして目的のbarの店に入り、前回と同じようにカウンターに座った。
直ぐにマスターがお絞りとお通しを出し、笑顔で対応してくれた。
「また、ご来店頂きありがとうございます。お飲み物は如何致します。先日と同じ物にしますか?」
「ん、そうだな。先日と同じ白ワインから貰おうかな。ミキもそれで良いか?」
「はい」
「じゃあ、それで。あと、軽いツマミも頼む」
「畏まりました」
1度しか来てない俺達を覚えてくれたマスターにちょっと感激した。
祐さんも結構人の顔を覚えてるから、やはり職業柄なんだろうな。
でも、客としては嬉しいな。
そして白ワイングラスとミックスナッツ.クラッカーとチーズが置かれた。
隣の先輩がグラスを掲げ、俺も慌ててグラスを持ち軽くグラスを合わせ一口飲む。
ん~、やっぱり美味しい♪
フルーティで軽く口当たりが良い。
「やっぱ、美味いな」
「うん。口当たり良いからグイグイいっちゃいそう。気を付けないと」
「そうだな」
ワインを楽しみながら、さっきまで一緒に居た教授の話や見て回った大学構内のやはり懐かしい話をすると話も弾む。
白ワインを飲み干すと先輩が「赤も飲もうぜ」と言って、俺の返事も聞かずにマスターに頼んで居た。
赤ワインも直ぐにグラスで置かれ、先輩が直ぐに手にし一口飲み「ん、こっちも美味い!」と、話すとマスターも嬉しそうにしてた。
そして俺もワインを一口飲む。
白ワインと違い芳醇な香りと葡萄の濃さを感じた
「美味しい!」
グラスをカウンターに置くと視線を感じた。
先輩が俺の飲む姿をジッと見てた。
俺もつい先輩の顔を見てしまった。
その目と先輩から漂う雰囲気が変わった気がした
さっきまで懐かしい話をして穏やかな雰囲気だったのに……突然、雰囲気が変わった事で、俺の胸がドキドキ…し始めた。
また……ドキドキが……。
先輩と居ると偶にドキドキ…するのは……何故だろう。
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