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第757話
「俺に?何の頼みだ」
燻かしく思いながらも、永瀬に聞く。
「ミキと2人っきりで話がしたい。明日、ミキを誘うつもりです。それを邪魔しないで欲しい」
はあ⁉︎
今までも何やかんや会ってたじゃねーか!
何で、今更俺の許可を取る必要があるんだ!
「なぜ、それを俺に?俺がミキの恋人と知ったから?知らなかったとしても、今までも会ってただろ?なぜ、わざわざ許可を取る必要がある」
永瀬の考えてる事が解らない。
「俺は今回仕事で纏まった日程で帰国する事が決まった時に決めてた! もし、偶然にミキに出会う事が会ったら、それは運命だ!と。早々運良く出会う事が無いと思っては居た。それならそれで仕事が一段落したら思い切って携帯に電話してみよう.前に住んでたアパートに行ってみようとか.友人の誰かに連絡先解る奴が居ないか?聞いてようと考えてました。それが運良くミキと仕事で出会ったこれは運命だ!と、更に携帯の電話番号やアドレスも変わってないって言う。俺を待ってたんじゃないか?って…出会った時には有頂天になってた」
仕事で出会ったのは、本当に偶然だろう。
運命と言う大袈裟なもんじゃない‼︎
携帯の番号やアドレスを変更しなかったのは、良くある面倒臭いって事だろ⁉︎
それにアパートだって、今は引き払い俺と同棲してる。
もう何年も月日は流れて、ミキの環境も変わってる。
その証拠が俺だ‼︎
そう強気に思うが……永瀬の話す事に不安も感じる。
本当に、そうだろうか⁉︎
携帯の番号やアドレス変更しなかった事、俺と出会った時にも学生時代からずっと住んでたアパート……永瀬を待ってたのか⁉︎
表面的にはケジメをつけたつもりでも、心の底では…待ってたのかも知れない……。
だから永瀬と別れてからも誰とも長続きしなかった⁉︎
もし……そうだったとしても、俺と出会う前の事だ!
俺が愛情を注ぎ、ミキの気持ちを変えたんだ‼︎
「それで、ミキと何を話し合うつもりだ」
グビッとワインを飲みマスターにお代わりを頼む
直ぐにワインは俺の前に置かれた。
「さっき成宮さんにお話した渡米して音信不通になった訳を話し詫びたい」
「それで?詫びるだけか?」
「そして……今でもミキを愛してると伝えたい!
俺にはやはりミキしか居ない! さっきも話したけど、仕事に余裕出来てミキに連絡し辛くなり……この何年間に付き合ってた人が居ないわけじゃなかった。でも、誰と付き合ってもミキと比べてしまう。そして俺の心の中に、ずっとミキへの気持ちがあるから誰と付き合っても上手くいかない。ずっとミキを忘れられないんだ。今度会ったら、もう離さないと誓った。俺はミキの事をずっと忘れられなかった.今でも愛してると話します! そして、今度は離れない為にアメリカに連れて行くつもりです‼︎」
何だと‼︎
何勝手な事抜かしてんだ!
自分勝手な事をしておいて、何都合良く考えてるんだ!
「ミキがそんな事を了承すると?」
「再会してから、少しずつミキと距離を縮めてきました。少しずつ昔の2人に戻りつつあると俺は思ってます。俺の熱意と決意をミキに伝えます‼︎」
「忘れてないか?ミキには既に俺と言う恋人が居る!」
「解ってます! だから、こうやって正々堂々とお話してるじゃないですか?あのミキに恋人が居ないとは思ってませんでしたから。ただ、恋敵が成宮さんだと解った時には……強敵だと思いました恋人があなたと解った上で、ミキにやり直さないか?伝えます。俺は男はミキだけです。ミキの最初の男は俺です。誰でも、最初の人って早々忘れる事は出来ないでしょ?」
……最初の男…か。
その言葉は俺の胸に突き刺さった。
そして永瀬の勝ち誇った顔も腹が立つ‼︎
俺が何も言えないで居ると、また追い討ちを掛けるように話し出す。
「俺が怖いですか?ミキを奪われそうで」
永瀬の挑発的な顔と言葉にまた腹が立ち、今度は言い返した。
「誰が怖いって! 俺とミキには永瀬が居ない間の長い付き合いと絆がある‼︎ 誰にも、俺からミキを奪えない! 俺が離さない‼︎」
言い切ってやった。
「それ程自信があるなら、それなら明日俺がミキと会う事は問題無いですね。邪魔はしないで下さい。俺も時間がないんで必死なんです‼︎ ミキに俺の想いを伝えて、必ずあなたから奪います! ミキがどんな答えを出しても、お互い文句は言わない事にしましょう‼︎」
永瀬も自信がある感じで話すが……どこからその自信が出るのか俺には解らない。
永瀬とは何年も会って無い……それなのに、この自信は……それ程、この短期間にミキと距離を縮めたのか?
ミキも永瀬と会うと ‘解らないけどドキドキ…する’と言った。
それが俺の不安要素でもあるが……俺も今日までのミキとの時間と絆がある!
「それとも自信がない?とか」
蔑んだ言い方に、また腹が立つ!
「解った‼︎ 俺も自信がある‼︎ 明日は黙ってミキを送り出す‼︎ その代わりミキが俺を選んだ時、いや俺を選ぶに決まってるが、その時にはすっぱりミキの事は忘れろ‼︎」
「解りました! それで良いです! 今は成宮さんの恋人ですが、俺に少しでも可能性があるなら…全ての気持ちをミキに話し、今度は離しません‼︎」
「俺だって、ミキを愛してるし大切に思ってる‼︎ こんなに人を愛した事はない! 人を愛する楽しさを教えてくれたのもミキだけだ‼︎」
俺も負け時に永瀬に言い放った。
俺の剣幕に永瀬は薄ら笑いを漏らした。
その勝ち誇った笑いに……奥歯を噛み締めた。
重苦しい張り詰め雰囲気の中での永瀬との会話は
精神的に疲れを感じた。
結局、永瀬からの話しとは俺からミキを奪うと言う決意表明と挑戦状だった。
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