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第763話

♪♪♪♪…♪♪♪♪…♪♪♪♪…… 電話の音が遠くから聞こえる…… そこでハッとし、直ぐにスマホを手にし電話に出た。 「ミキ!」 相手を確認せずにミキからだと思い名前を呼んだ 「ミキは、帰ってないのか?」 祐一からだった。  心配して電話くれたとは思うが…今は相手をしてられない。 「……ああ。それで?」 「それで?じゃねーよ! 気になって仕事終わってから、何度も電話したんだぞ!」 仕事終わり? 今、何時だ? 時計の針は昼近くだった。 昨夜は後悔し悶々と考えて居たが……いつの間にか寝てたのか⁉︎ 酒の力もあったんだろうが、こう言う時でも人間って寝れるんだなと、他人事のように考えてた。 「悪い」 「マコも心配してる! 何がどうなったのか?話を聞きたい! 今、直ぐにこっち来い!」 「いや、ミキがいつ帰って来るか解らない。動く訳には行かない」 「解った! なら、俺とマコでそっち行く! 待ってろ」 良いと言って無いが、祐一はさっさと電話を切った。 昨夜から今に至るまで、ミキが永瀬の所から帰って来なかった事に、改めてショックを受けた。 そうか……泊まったんだな。  泣き疲れて寝てると言ってた……何もないだろう そう思いたい! 俺はショックの余り頭が真っ白になり、今度は何も考えられなくなりボーっとしてた。 まるで廃人のように何もせず、ただスマホを見つめてた。 鳴らないスマホと今だに未読のままのLINE。 どの位そうしてたのか? 部屋のチャイムが鳴った音でハッとし、玄関に走った。 玄関ドアを急いで開け「ミキ!」と呼ぶと……そこには祐一と真琴君が立って居た。 2人は俺の勢いに驚き、そして直ぐに怪訝な顔をした。 「その様子だと、まだ帰って無いって事か」 「成宮さん! 何があったんです‼︎ミキが僕の所にも来ないなんて‼︎」 祐一は冷静に話し、真琴君は俺を責めるように問い正す。 「マコ、話しは部屋に入ってからだ。邪魔するぞ」 祐一と真琴君を部屋に入れ、リビングのソファに座った。 「で、何がどうなった?」 俺は永瀬と直接対峙した所から話し出した。 まだ話しの途中だが、真琴君が怒り口を挟んできた。 「何、それ! 先輩に何言われても、現在の恋人は成宮さんでしょ! ガツン!と ‘俺の恋人に手を出すな!’って言えば良いでしょ! そんな先輩の挑発に乗ってバカみたい! 2人共、ミキの気持ちを無視して自分勝手!」 「マコ! 最後まで聞けよ。それに恋人としての自信もあったはずだ、だから敢えて伊織はきちんとミキの意思で選んで欲しかったんだろ。永瀬だってミキが決めた事なら諦めもつく」 「でも、祐さん」 「取り敢えず、最後まで聞こう」 祐一に諭され、頷く真琴君はまだ納得して無いようだった。 「それで?」 祐一に先を話すように諭され、俺はミキと永瀬が会ってる間に不安やミキがなんて返事したか?聞くのが怖くなる気持ちと大丈夫!俺とミキの絆は誰にも邪魔は出来ない! 俺から奪う事は出来ない!と言う気持ちが交互に押し寄せ1人で部屋でビール飲んでたが、1人で悶々と考えてるのが耐え切れずビールが尽きたタイミングで祐一の店に行って話を聞いて貰い時間潰しと強い酒も飲みたかったと話した。 「そんなの自分勝手な話しじゃん。行かせたく無かったら行くな!って言えばいいじゃん。LINEとかも嫌なら、そう言えばよかったじゃん。何も言わずに大人ぶって! ミキは優しいから、先輩の滞在期間が短いから良い思い出にと付き合ってただけ! それも解らないの⁉︎」 「マコ‼︎」 「真琴君の言う通りだ。永瀬に対して、上に…優位に立ちたいと言う男の見栄や意地を張った。俺の愚かさだ」 「ふん! バッカみたい!」 「マコ‼︎ で、俺の店で何があった?」 店のトイレでの話をポツリポツリ……話した。 真琴君は目を見開き怒り、祐一は頭を抱えてた。 「裏切り者‼︎ そんな場面を見たミキの気持ち解る⁉︎」 「いつも永瀬と会うと遅いから…ミキが来るとは思わなかった。それに裏切ってない‼︎ キスされそうになったが拒否したし、あっちだって触られても勃たなかった。相手がミキじゃないと思うだけでダメだった。幾ら、酔ってても体は正直なんだって思い知った!」 「何それ! 言い訳じゃん! 拒否したとか勃たなかったとか言うけど、浮気しようとしてた事実には変わらない‼︎」 「マコ‼︎ 言い過ぎだ‼︎ 俺も悪かった。伊織に幾ら帰れ!って言っても帰らないし、俺が見てないと思ってバイトに酒お代わり貰ってただろ?ヤバいと思ってタクシー呼ぼうと思ったが、お前が素直に帰らないと思って一応ミキに電話したら家に帰る途中だって言うから、お前を連れて帰って貰うように俺が言った。ミキに後々俺の店に伊織が1人で来て飲んでるのバレるより良いと思って。余計な事をした」 「祐さんは悪くないよ。大体、部屋で1人で居るのが嫌だからって、祐さんの店に行って飲んでたらどうなるか?解るでしょ?ミキが居ないって言うのに、その隙を狙ってると思われても仕方ない行動だからね」 真琴君の言う通りかも知れないと、俺は今頃になって反省した。 「……あの時には、そんな気持ちはないつもりだった。ただ1人で居たく無く強い酒が飲みたかった。酒で現実逃避するつもりだったのかも。それと……祐一の店に行ったら、声の1つや2つは掛かる事も解ってた。断れば良いと思ってたし実際そうしてたが、俺の心の何処かでミキが永瀬と会ってるなら……浮気はしないが……でも、俺はモテる!と確認したい気持ちもあったのかも……だからミキも俺から離れないはず……と、おかしな思考になってたかも」 俺のこの話には真琴君も祐一も呆れてた。 「本当に、ミキの事になると冷静で居られないな それで、ミキとは連絡取れたか?ここに居ないって事はどこに行ったか?解らないのか?」 祐一のその質問には、俺も顔を俯いた。 「真琴君の所にも居ない、優希さんの所にも電話したが居ないって話す。電話もしたが電源が切られてるみたいだ。色々考えて、まさか!とは思ったが前に名刺を貰ってた永瀬の携帯に電話して聞いてみた……永瀬の所に居た。永瀬が言うには、泣き疲れて寝てるらしい。ミキが永瀬を頼った事がショックだ! 俺じゃなく永瀬を!」 俯きグッと手を握りしめた。 永瀬の所に居ると聞いた時の祐一と真琴君の息を飲む音が微かに聞こえた。 暫くの沈黙の後に、真琴君が怒りを抑え話す。 「成宮さんを信じて、この人ならって信頼してミキを任せたのに‼︎ ミキの気持ちは無視するし、信じても居なかった‼︎ 僕はあんな事があったから、本当は嫌だけど……ミキが先輩を選んだとしてもミキの意思を尊重するし何があってもミキの味方で居ます‼︎ 今の成宮さんは僕が信頼してた成宮さんじゃ無い‼︎ ミキを愛して、どんな事があっても離れない、ミキの家族だ!って言ってた成宮さんはどこに行ったの?昔、付き合ってた男が現れた位で、そんなに気持ちが弱くなってふらつくの?」 「………済まない」 俺は自分の不甲斐なさに情けなくなった。 そして、本当に真琴君は何があってもミキの味方なんだと固い意志を痛感した。 俺も口では俺達の絆は深いとか言ってたが……真琴君の気持ちには到底及ばない。 「伊織。マコも強い口調だが、2人の事を本当に心配してるだ。それは解ってくれ」 「解ってる。そして真琴君には感謝してるし、ミキの親友が真琴君で良かったと思ってる。何で、こんな事になったのか⁉︎」 俺は頭を抱えて話した。 「お前達、1回ちゃんと喧嘩しろよ! お互い思ってる事全て話してみろ! お前らって、ちょっとした言い合いはあっても喧嘩はないだろ?伊織はミキを大切にし過ぎて傷つけないようにしてるし、ミキはミキであの性格だろ?言いたい事があっても我慢するしな。お前のミキに言って無い色々な複雑な気持ちを素直に言えば良い。どう思うかはミキが考える事だし、それで喧嘩したって良いじゃねーか。喧嘩したぐらいでお前らの絆が切れる訳ねーと自信はあるんだろ?お互いの考えや気持ちを知って、その上で2人で今後の事を考えていけば。お前らお互いの事を大切に想い過ぎ‼︎」 今回の件では確かに永瀬に負けたくない気持ちもあって、大人ぶって余裕ある振りし器のでかさを見せつけてやるって言う気持ちがあった。 だから、ミキにも何も言えなかった。 結局、良い格好強いだったんだ‼︎ 子供だな‼︎ 祐一や真琴君に言われて、今になって自分のバカさ加減が嫌になった。 昼過ぎに来た祐一達は散々話し、夕方には帰って行った。 「夕飯を一緒に」と言われたが、食べる気にも成らず丁寧に断った。 祐一達が帰り、また部屋の中には俺1人で静かになった……。 ミキが居ない部屋は暗く寂しい……。 そして祐一や真琴君に言われた事を何度も思い出し考えてた。 ずっと待ってたが、夜、遅くなってもミキは帰って来なかった。 永瀬の所に……まだ居るのか? 明日は月曜日で仕事がある。 どうするつもりだ? 帰って来るんだろ? ……それとも今日も……泊まるのか? その日はいつミキが帰って来ても解るように俺はリビングのソファで横になり眠れない夜を過ごした。 電話やLINEは相変わらず通じない‼︎ それでも懲りずに祈る気持ちで電話やLINEをしてた。

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