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第773話

それから暫くは、平穏無事に過ごす日々が続いた ミキもあれ以来、永瀬の事を口にする事も無くLINEの遣り取りもしてないようだ。 以前の日常が戻ってきてた。 2人で話し合った月曜日から数日経った木曜日の事だった。 俺は今回の仕事の資料を纏め、部長に報告する為に席を外して居た。 部長の席の前で今回の仕事の件を報告すると 「ん、良いんじゃないか。ま、赤字にならなければ良い。それで、これは今後はどうかね?」 今回は赤字ギリギリの利薄だが、将来的に利益を取れる程の仕事になるのか?遠回しに聞いてくる 「今後はアメリカ支社との商談になりますが…… グッズ展開されれば、大幅に利益が出てくると思います。フェス名が浸透し、毎年開催されれば大丈夫かと」 「んむ。今後、どう化けるかだな」 「はい」 そして報告とは別にもう1つ部長の承認を貰うべく交渉してた。 俺は基本上司には報連相は欠かさない。 部下の責任は俺が取るのは当たり前だが、会社としての責任は上司としての部長の責任もあると思って居る。 部長が知らなかった!とか聞いて無い!と言わせない為にも、きちんと書類にし報告してる。 それは部長の為でもあるし、課の為でもある。 俺のもう1つの案には、部長も迷う所があるらしく直ぐには色良い返事は貰えなかった。 「少し考えさせてくれ。良く吟味した上で連絡するよ」 そう言われ、一応部長の連絡待ちと言う事で課に戻ってきた俺に田口が話しかけてきた。 「課長。今、永瀬さんと納期や枚数等の最終的な確認の電話してたんですが。永瀬さん、来週の火曜日に渡米するそうです。ま、元々1~2ヶ月の予定だったようですからね。永瀬さんが ‘本当に、お世話になりました。良い仕事できて光栄です。皆さんの期待に応えるように、必ずフェスは成功させてみせます! 本当に、ありがとうございます成宮課長にも一言お礼言いたいんですが…’ と言われましたが、課長席外されてたので ‘伝えておきます’ と言っておきました。残念そうな声で ‘そうですか。じゃあ、皆さんに宜しくおしゃって下さい’ と言って電話終わりました」 そうか、等々渡米するのか。 長かったような.短かったような。 永瀬の渡米の日にちがはっきりと解ると、何とも言えない気持ちだった。 「そうか、解った。教えてくれて、ありがとう。アメリカでも頑張って欲しいな」 「本当ですね。でも永瀬さんならやるでしょう」 「期待して待ってるか。俺達も負けないように頑張らないとな」 「そうですね」 そして俺は自席に座った。 暫くパソコン画面を見ながら考えてた。 永瀬に……折り返しの電話するべきか? たが、田口の話の内容では、一応挨拶済ませた形だ……わざわざ電話する必要もないか。 そして外回りから戻って来た佐藤とミキに田口の口から永瀬の渡米の事を伝えてた。 ミキの反応が気になる……。 「そうですか。何か…あっという間でしたね」 「そうだな。面白い仕事させて貰った。楽しかったな」 「はい!」 「香坂も寂しくなるな?」 「そうですね。でも沢山懐かしい話出来ましたから」 最初聞いた時は少し戸惑ってたようだが、ミキの話す声から吹っ切れたように感じた。 俺から、わざわざ言う必要もないな。 そう思い永瀬との仕事も終わった事だし、もう、そっとしておこうと思った。 たぶん、ミキもそう思ってるんだろう。 その後は、家に帰っても永瀬の話題はミキの口からは出なかった。 俺も話題には出さなかった。 いつもと変わらない日常……それが1番幸せだ!と噛み締めてた。

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