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第775話
ガラガラガラ……
「よっ! おやじ」
「お久し振りです」
「大将~。ご飯、食べに来たよ」
「皆んなで横浜行って来たから。これ、お土産です」
4人で顔を見せた事に、おやじは目を細め喜んで居るのが解った。
その顔を見て…おやじも心配してたんだな。
「おっ! わざわざ済まないね。楽しかったかい?」
「「うん! 楽しかった~♪」」
ミキと真琴君の返事に、おやじは嬉しそうな顔を見せた。
店には数人の客がカウンターに居た、俺達は4人掛けのテーブル席に座った。
「生3つとウーロン茶。あとは…料理はお任せで」
「成宮さんの奢りだから、沢山お願いしま~す」
「はいよ!」
直ぐに、生3つとウーロン茶が用意され、ミキと真琴君が運んできた。
『乾杯~』
グビグビ……飲むミキと真琴君と祐一。
俺はウーロン茶をゴクゴク…飲んだ。
夕飯はおやじの店で食べよう!と提案したのは、俺だった。
中華街で中華料理を食べようと思ってたが、急に思い立ったからだ。
おやじに一言嫌味を言ってやろうと言う気持ちと心配してるだろうと思い、ミキと2人で揃って顔を見せたかった気持ちもあった。
それなら祐一が店の前で俺達を降ろして一旦帰って車を置いてタクシーで来る!と言ったが、面倒だろうと思い、店からの帰りは俺が運転し祐一のマンションまで帰り、タクシーで自宅に帰る!と俺の方から言った。
責めてものお礼の一貫だ。
美味しそうに目の前で飲む3人が少し羨ましい。
部屋に帰ったら、少しミキに付き合って貰い俺もビール飲もうと思った。
それから刺身.唐揚げ.サラダ.煮物.魚の煮付け.etc
…と料理が並び飲んで食べて、今日の横浜での話しで盛り上がった。
誰も今回の件には、もう触れなかった。
1時間程で俺はカウンターに移り、ウーロン茶片手におやじに小声で話し掛けた。
「あやじ、色々迷惑掛けた」
「はて?何の事やら」
とぼけてやがる!とは思ったが構わず話した。
「ま、仲直りはした。色々誤解もあったけど、お互い言いたい事や聞きたい事言って誤解を解いた何だかモヤモヤ…してたのが無くなってすっきりした。でもよ~、おやじもおやじだぞ! ミキがここに来たなら、俺に一言連絡あっても良かったんじゃねーの! すんげぇ~心配したんだからな!」
嫌味を込めがてら報告した。
「そうか、仲直りして良かったのう。わしは何もヨシ君からは聞いておらんぞ。だが……あの様子を見れば何かあったとは解る。少し、お前を懲らしめてやるつもりとヨシ君がわしを頼ってくれた事が嬉しかったんじゃ」
「チッ! おやじもミキの信者かよ!」
「はて?信者って?言ってる事がよく解らんが、ヨシ君は良い子じゃ。あんな良い子を泣かせるお前が悪い! わしにとってヨシ君やマコちゃんは孫みたいなもんだ!」
おやじがミキを孫みたいに可愛がってるのは解ってた。
はあ~。
どんどんミキの信者が増えていく。
それはミキの魅力がそうさせてるんだろうけど…
そんなミキが誇らしいが、俺のミキなのに~!…と言う小さな嫉妬もある。
「おやじ! ミキもおやじの事を本当の祖父みたいに思ってる。もう無いとは思うが……もし、ミキがおやじを頼ってきたらまた力になってくれ! 出来れば、俺に連絡して欲しいが」
皺だらけのおやじの顔が皺を深くし嬉しそうに笑った。
「お前も一人前になったな。昔のお前では考えられない台詞だな。自分の事より相手の事を考える事が出来るようになったな。ヨシ君のお陰だな」
ミキだけじゃなく俺の事も自分の子供のようにずっと見守ってくれてたんだな。
何だか、嬉しさとそして照れ臭い。
「自分でも変わったって思う! 自分より大事に思う人が出来た喜びと今まで味わった事のない苦悩と……。でもな、その苦悩がその時はすげぇ~大変だし辛いけど……お互い信じてれば、必ず解決出来るし出来た後は何倍もの絆が深くなる。それが幸せを何倍にも感じてな。あ~俺は今幸せなんだ!ってな。ま、2人で居ればいつも幸せなんだけど」
最後は惚気てしまったが、本当の気持ちだ。
おやじは嬉しそうに聞いてた。
「その幸せを大事にしろ!」
それだけ言われたが、すげぇ~心に響いた。
「解ってる!」
何だか照れ臭くなり、ミキ達の居るテーブル席に戻り何食わぬ顔で話しに加わった。
おやじに一言嫌味と文句言ってやろうと思ったが
逆に惚気と決意表明になっちまった。
でも、おやじの俺達を見る優しい眼差しが全てを物語ってる。
また1人ミキの大きな味方と信者が現れた事を知った日だった。
ここにも俺達を応援してくれる人が居る。
応援してくれる人達のお陰で、俺達の幸せは成り立ってるのも一理ある。
感謝の気持ちでいっぱいだった。
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