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第777話

「どうして?俺が電話した時に、永瀬の所にミキが居ると嘘を吐いた?」 あの時は冷静では居られなかったが、後々考えると、いずれ解る嘘を吐いた事が腑に落ちなかった バレるのが解る嘘を……何となく永瀬らしくないような気がした。 その事か!と思い出した顔だった。 「その事で、揉めたりしませんでした?」 どう話そうか迷ったが、はっきりと答えた。 「いや、揉めたりはしなかった。あの後、遅くなったが、ミキは俺の所に帰って来たからな。ミキの帰る場所は俺の所しか無い」 嘘を吐いたが、自信持って答えた。 俺の答えに永瀬は残念そうな顔をし、そして笑顔で話す。 「そうですか、残念! 少しは揉めてくれれば…と思ったのにな。成宮さんに、ちょっとした悪あがきって言うか.一矢報いるつもりだったが……やはり簡単にはいかなかったか」 「一矢報いる?なぜ、そんな事を?」 「結論から言うと。あの日、ミキに俺の気持ちを伝えて……解って居たが見事に振られました。俺の気持ちを黙って聞いてたミキは直ぐには返事をくれずに、少し悩んでるようだった。俺はミキの様子から 、もしかして…迷ってるのか?このまま押せば何とかなるのか?と微かに期待を込めてミキに ‘迷ってるのか?’ と聞いたら ‘違うんです。迷う事はありません! この先、何があっても今お付き合いしてる人とは、俺から離れる事は無いです‼︎ ずっと一緒に居たい人です。直ぐに返事が出来なかったのは……。どう話したら、先輩を傷付けずに話せるか?と考えてただけで…。先輩の気持ちは正直嬉しい気持ちもあります。でも…もう終わった事です。先輩はいつまで経っても、俺やマコの憧れの先輩です。それは変わりません’ と見事に振られました。もう、ミキの気持ちは固まってるんだなと目で解りました。それから俺がミキの付き合ってる人が成宮さんだと知ってる事は内緒にして話をしてたら……ミキは凄く幸せそうな顔で成宮さんの事を話すから、本当に俺の出る幕は無いんだなと思い知らされました」 俺の質問とは違う返答だったが、思わぬ形であの時の2人の話を聞けた。 そしてミキの気持ちも……凄く嬉しかった。 「それで?」 「部屋に帰って、何となくミキに今日の事や日本に戻ってからのお礼を話すつもりで.これで最後にするつもりで電話した。電話に出たミキの声から何かあった⁉︎と感じた。それで、まだチャンスがあるんじゃないか?と淡い期待で ‘俺の所に来いよ’ と弱ってるミキに漬け込む形だとは思ったがこれが最後かもと思ったら、なり振り構わずに言った。‘今のこの気持ちでは会えません。先輩の所に逃げる訳にはいきません。そんな事したら……俺は最低な人間になって…しまう’ それを聞いて俺はミキの弱味に漬け込む最低な奴だと思った。昔のミキなら流されて頼って来る!…そんな気持ちもあったんだ。でも、やはりもう昔のミキじゃなかった。ミキも強くなったな!と、もう俺が知ってる昔のミキとは少し違うんだ!って思い知らされた。そんな風にミキを変えたのは…成宮さんなんだ!と思ったら……少し悔しかった。だから…… 成宮さんから電話あった時に、一矢報いたい気持ちと少し揉めてくれればと言う気持ちがあって、あんな事を……自分でも後から最低だなと反省した。でも、俺がやった事は2人には全然関係なかったみたいですね。ホッとした気持ちと残念な気持ちが正直な所ですが……すみませんでした‼︎」 綺麗な辞儀をし謝る永瀬は潔かった。 永瀬が本当にミキを愛してたと、だから嫉妬でそう言う嘘を吐いたんだと……少しはその気持ちも解る。 俺も……永瀬に嘘を吐いた。 本当は、散々揉めたが敢えて言わなかった。 永瀬に隙を見せたくなかった事と俺達はそんな事では揺るがないと知らしめたかった‼︎ ミキの戻る場所は俺の所だ‼︎ 俺の所以外は無い‼︎ 俺のプライドだな。 「もう良い‼︎ 永瀬の気持ちが解れば、それで良いなぜ?と考えてたからな。何だかモヤモヤ…してた。これですっきりした。それで永瀬からの話は?」 俺は永瀬に嘘を吐き通す事にした。 その方が永瀬も諦めがつくと思ったからだ。

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