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第782話
その日は、いつもと変わらない朝だった。
「先に、出ますね。戸締りお願いします」
いつも通りに先に部屋を出るミキを見送り、俺も出社準備を始め戸締りをし部屋を出て会社に向かう為に最寄り駅まで歩く。
会社に20~30分前に着くように、ミキは俺より早く出社してる。
俺はと言うと、上司が余り早く出社するのも部下が気を使うだろうと、10分前に出社するように心がけ朝の電車に乗る毎日だった。
同じ部屋から出るのに、別々の時間に出なきゃいけないのが残念だが、そこは上司と部下と言う事もあり、俺もミキもケジメをつけて居る。
偶に、前の日にヤリ過ぎて腰が立たないミキを車に乗せ会社近くのパーキングまで一緒に行く事もあるが……極力、激しくなるのは週末にするようにはしてるが……頻繁では無いが、極偶にそう言う時も何ヶ月に1回位はあるかも知れない。
ま、ミキを愛すればこそだ‼︎
始まっちまえば……ミキの色っぽい喘ぎと敏感な反応の良さに……ついつい愛撫する事もしつこく濃密になり回数もいっちまう。
抱いても抱いても…抱き足らない‼︎
自分でも性欲はある方だと思ってるが、ミキと出会ってからは増したような気さえする。
朝の混み合う電車の中で、ここにミキが居たらなぁ~とか混み合う中では体の密着も自然に出来るのになぁ~とか、そんな事を毎朝思って乗ってるが、会社が近づくにつれ今日の仕事の手順を頭で考え始める。
混雑する電車を降り、改札を抜け駅の階段に向かう。
行き交う人混みの中を歩いてると、俺の前を歩く女が何だかフラフラ…としてるような気がした。
二日酔い?
具合でも悪い?
後ろ姿だけでは何とも言えないが……何だか危ねぇ~なと思って見て居た。
「キャッ‼︎」
駅の階段を降りて直ぐにその女は足元がふらつき階段を踏み外す寸前に、叫ぶ声と同時に俺は腕を掴んで何とか階段から転げ落ちるのを阻止した。
「危ねぇ~」
「…ありがと…ございま…す」
お礼を言って顔を上げた顔からは、階段から落ちる恐怖なのか?元々、具合悪かったのか?顔色が青褪めてた。
「いや、それより大丈夫ですか?具合悪い?」
「……すみません。……体調が良くなくって」
「階段は危ないですから。取り敢えず、外まで一緒に行きます」
「すみません」
俺はまた階段から落ちたら大変だと思い、腕を掴んだままゆっくりと一緒に階段を降り、外のロータリー近くのベンチに座らせた。
「少し、休むといい」
「ありがとうございます」
バックを横に置きベンチに座った女から離れ、近くのコンビニに行きスポーツドリンクを買い戻った。
「貧血かも知れないから、これでも飲んで休んで
具合良くなってから、動いた方が良い」
スポーツドリンクを手渡すと頭を縦に振り、そしてペットボトルの蓋を開けゴクゴク…飲み始めた
それを見て、取り敢えずは大丈夫だろうと判断し時計を見てヤバいッ!と思い「じゃあ、これで。お大事に」そう言って、直ぐに小走りでその場を去った。
背後で女が何か言ってたようだったが、たぶんお礼だろうと思い、時間が無い事もあり振り向きもせずに会社に急いで向かった。
就業開始ギリギリに課に滑り込んだ。
「おはよ」
『おはようございます』
挨拶し、少し荒い息を整えながら自席に行きパソコンを立ち上げた。
ピロ~ン*♪
LINE?
胸元からスマホを取り出しLINEを見ると、ミキからだった。
※♪遅かったですね?*♪
*♪出社途中でちょっとな。帰ってから話す*♪
*♪了解‼︎*♪
いつもの時間に出社しなかった俺を気に掛けてたようだ。
ミキらしいな。
それから仕事に没頭し、少し残業し家に帰った。
夕飯を2人で食べながら、今日の朝の出来事をミキに話した。
「そんな事が。でも、良い事しましたね」
「目の前で落ちそうな奴が居たら、誰でもするだろう」
「まあ、そうですけど。で、どんな女性でした?」
気になるのか?
妬きもち?
可愛い~なと思いながら、何でもない顔で女を思い浮かべたが……あまり記憶にない。
「ん~、良く見なかったが。確か…まあ、綺麗系だったような……。そんな良く見てる暇はなかった。ただ顔が真っ青で、それが印象深い」
「ふ~ん。綺麗系……ね」
俺が女に興味が無い事は知ってるし、それ程誤解はされずに済むが……それでも、妬きもちは愛されてるって解り嬉しいもんだな。
一応、誤解されないように言っておくか。
「本当に、良く見てないんだって。どんな人って聞かれたから、可愛い系より綺麗系だったかな?って程度だ。俺が女に興味無いのは解ってるだろ?」
「まあ、そうですけど……。それに関しては安心してますけど……でも、伊織さんはその気なくっても女性にモテますから……。心配です」
「モテるのは否定しないが、俺はミキ一筋だし。それ以外は女も男も目に入らない‼︎ 心配もする必要なんてないぞ」
「俺も伊織さんが1番です‼︎ ずっと側に居て欲しいし側に居たいです」
「俺も同じ気持ちだ‼︎」
朝の出来事から結局はお互いの愛を語る事になった。
何だか良い流れだと思い「片付けたら、一緒に風呂に入るぞ‼︎」決定事項のように言い放った。
遠回しだが、セックスの誘いだ。
「はい、解りました」と頬を染め返事をくれた。
平日だったが、抑えが効かずに風呂で1回.ベットで1回してしまった。
行為の疲れでスヤスヤ…と、俺の腕の中で幸せそうな寝顔のミキを抱きしめ俺も眠った。
まさか、あの女がとんでもなく最低女だ!いや性悪女だ!とは、この時は思いもしなかった。
あの女と知り合った事で、俺は災難に巻き込まれいや、降り掛かって来る事になろうとは……。
そしてミキと暫く一緒に居られなくなるとは…。
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