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第784話
それから2日後に、また会社帰りに駅付近で女が待ってた。
気付かずに通り過ぎようとした時に、背後から声を掛けられた。
「成宮さん!」
振り返った時に、三田が笑顔で駆け寄って来た。
まさか、待ち伏せしてたとは知らずに呑気に挨拶した。
「奇遇ですね。もう、お体は大丈夫ですか?」
「はい! まだ少し調子が思わしくないですけど。混雑する時間帯は避けて出勤してます」
「その方が良いです。じゃあ」
「成宮さん! あの…お話があるんですけど。お時間頂けたませんか?」
話?
俺には無いが……。
少し寒そうな姿の三田を見て、俺と話をする為に待ってた?と思うと無下に断れなかった。
「えっと、じゃあ、この間のカフェで良いですか?」
「はい!」
こうして、またまた三田と話す事になった。
面識も特に無い三田との話が何なのか?
この間、話してた心配事を相談されても困るな。
はっきり言って、俺には関係ねーし。
サクッと話して、さっさと終わらせて帰ろ!
カフェでコーヒーとラテが運ばれ、直ぐに、三田はラテで暖めるように両手で持つ飲む姿を見て、11月に入りそろそろ寒くなってきてたし、俺も1時間程残業してた事もあり、その間待ってたのか?と思うと少し申し訳なく感じた。
「いつ来るか解らない俺をずっと待ってたんですか?」
「あっ! はい! あと…30分程待っても現れなかったら、帰ろうと思ってたから会えて良かった」
三田の会社から定時に終わって来たとして30分以上は待ってたって事か。
後30分は待つつもりだったと言うが、そこまでして話す事があるのか?
さして面識もないのに?
とっとと終わらせようと話しを切り出した。
「それで?話したい事って何ですか?」
「あの…成宮さん。……私、成宮さんの事好きになりました! はっきり言って一目惚れです! 私と付き合って下さい! お願いします!」
はあ⁉︎
何で、俺?
一目惚れって……それはあり得るか。
俺自身がミキに一目惚れしたからな。
確かに、俺は男にもモテるが女にもモテる。
学生時代も女から告白は頻繁にされてた。
その度に、曖昧にはせずに諦めて貰う為にはっきりと「付き合ってる人が居る」とか「好きな人が居る」(居なくてもそう言ってた)と言って断ってた。
大概はそれで諦めてくれる。
社会人になってからも、社内でも取引先でも告白はされたが同じような事を言って断ってた。
今は、社内では俺が恋人にベタ惚れと言う噂で告白も無くなってきた。
少しそう言う事を話すだけで、女子どもの噂話はオヒレが付き広まるのも早いのを逆手に取り、俺が意図的にした事だ。
今は平和だっつーのに!
何の因果で……はあ~面倒臭さ‼︎
取り敢えず、いつもの作戦でいくか!
「そう言って頂けるのは男として嬉しい事ですが俺には現在付き合ってる人がおります。申し訳ないが、お断りさせて頂きます。あなたなら他にも良い人が現れますよ」
付き合ってる人が居ると解れば、大概は諦める。
これで終わるだろう。
俺が断りを入れると俯き黙ってたが、直ぐに顔を上げ必死に話してきた。
「成宮さんみたいに素敵な人に彼女が居ないとは思ってません。彼女が居ても良いので、私と付き合って下さい! 付き合っていくうちに私の事を解ってくれれば……いずれ彼女と別れてくれれば良いです。待ちます! 私…成宮さんの事諦められません。お願いします。彼女居ても良いので、私とも付き合って下さい。必ず、彼女より私の事好きになって貰えるよう努力します‼︎ お願いします‼︎」
必死に話す三田は鬼気迫る感じで、少し怖いっつーか.危ねぇ~と感じた。
それに彼女居ても良いとか.待ちますとか慎まやかに言ってるが、自分を好きにさせる自信がある!とその言動から見え隠れする。
俺も自信家の方だが、女の自信のあるのは何だか傲慢な感じで同性に嫌われるタイプだろうなと思った。
逆に、こう言うタイプは男にはモテるんだろうな
だが、俺には感じ悪く感じた。
確かに顔も整って綺麗系だし化粧映えもするし、髪もカールし華やかな感じだ。
胸はデカそうだしスタイルも良い。
トータルすると男好きするタイプだ。
こりゃ~、女には嫌われるな。
ま、俺は女に興味無いから関係ねーし、俺には愛するミキが居る‼︎
はあ~、困ったな‼︎
大概は、これで皆んな引き下がるんだが……。
「申し訳ない‼︎ 俺は二股とか考えられないし、そんな事して付き合ってる人を悲しませたくない! それに凄く大切にしてるので! 悪いが、他の人が入る余地は俺の中には無い‼︎ 俺の事は忘れて、他の人を見た方が良い。三田さんなら、直ぐに見つかりますよ」
「……どうしても?……私と付き合うのは無理ですか?」
「すみません。無理ですね」
「………そうですか」
もう顔も上げずに俯いたままだった。
これ以上は話すと事も無いし、振られた三田と一緒に居るのも居心地が悪く、冷たいようだが俺は話しは終わったとばかりに席を立ち2人分の会計を済ませ先にカフェを出た。
はっきり断られた事で普通の神経なら諦めて、もう、俺の前には現れないだろうと単純にそう思った。
帰り際に俯いままだったのは悲しい思いでそうしてると思ったが、実は悔しさで俯いてたとは思わなかった。
どうやら俺的には丁寧にお断りしたつもりだが、今まで自分がアプローチして男に断られた事が無かった三田のプライドを傷付け逆に燃え上がらせ俺に対し執着する切っ掛けになったのは後に知る事になった。
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