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第785話

三田からの告白に対して断りを入れた日から数日程は顔を合わせる事もなかった。 お互い連絡先を交換した訳でもないし、会社などの最寄り駅も違うし通勤の沿線も違う。 どちらかが意図的に会おうと行動しない限り会う事もない。 三田も会い辛いだろうし、もちろん俺はもう会う事も無いだろうと思い、殆ど頭の中から三田の事も消えつつあった時だった。 告白された時から数日経ったその時も会社帰りに駅付近で三田の姿が見えた。 俺を待ってた? まさかな。 わざわざ振られた相手を待ってる訳ないか? なんだか通り辛いな。 なぜか?振った俺の方が気を使う。 直ぐに目を背け気付かない振りをしたが、三田は俺を見つけると、俺の姿をずっと視線で追っていた。 関わり合わない方が良いと思い、あからさまに無視するのも……判断に困る。 結局、軽く会釈だけし通り過ぎようとした。 「成宮さん!」 聞こえない振りで足を止めずに駅に向かうが、三田も小走りで隣に来て一緒に歩く。 「成宮さん! お仕事、お疲れ様です。夕飯まだでしょ?私もまだなんです。一緒に、どこか食べに行きませんか?」 俺……告白されて断ったよな⁉︎ 何で、普通に話し掛けて食事に誘うんだ? 神経が図太いって言うか.顔の皮が厚いって言うかあ~~、面倒臭え~! 駅に向かう人の中には会社の人も居るかも知れないと思い足を止め、三田の腕を掴んで目立たない所ではっきりと話す事にした。 「俺、この間お断りしましたよね⁉︎ こう言う風に待ってられるのも困るし誘われても困ります! 付き合ってる人以外と2人っきりで食事するのは、誤解されかねないので……食事もお断りします!」 はっきりと迷惑と言う言葉は出さなかったが、俺の言葉の端々で解るだろう。 「何で?食事ぐらい良いじゃない?それに、食事したなんて言わなきゃ解らないし~。そんなに束縛が激しいの? 嫌にならない? 私なら、そんな事しないわ。やっぱり、私の方が成宮さんに相応しいんじゃないかしら?急には無理でも、少しずつ私の事知ってくれれば私の方を選ぶわよ。だから、お互いを知る為にも食事に行きましょうよ。そして、私の事を解ってくれれば…成宮さんも好きになってくれるはず! ねえ~、美味しいお店があるの。是非、一緒に行きたいわ」 はあ⁉︎ 何で、俺がミキと三田のどちらかを選ぶ事になってんだ‼︎ 俺、断ったよな⁉︎ 今も食事の誘いも断ってるよな⁉︎ 数日前に告白されて会った時より、三田の頭の中では俺達は継続し進行形らしい。 どういう頭で、そう解釈してるんだ‼︎ それに俺が三田を選ぶと言う自信もどっからきてるんだ⁉︎ はあ~! 頭の中を見てみたい‼︎ 「三田さんの告白は先日きちんとお断りしました もう、これ以上は俺個人では会うつもりもありません。もちろん食事もお断りします。では、失礼します」 良し! はっきり断った‼︎ 三田をその場に残し、直ぐに駅に小走りで向かった。 なんか背後で言って居たが無視だ! 無視! 改札口を抜けて背後を見たが、追いかけて来る事は無かった。 ホッとして電車に乗り込んだ。 なんか厄介なのと知り合ってしまった! 俺、階段落ちそうな所を助けたよな? お礼のお茶はまだ解るとしても……告白や待伏せは無いだろう。 ま、一目惚れは俺にも経験があるから否定はしないが……断ったのに待伏せは無い! 助けてやったのに恩を仇で返すって、この事か⁉︎ 永瀬の件も片付き、やっと平穏な生活が戻ってきたっつーのに‼︎ 次から次へと……一難去ってまた一難‼︎ 今年は厄年か?それとも運気が大殺界とか? なんか……俺、悪い事したか? はあ~! はっきり言ったし、これで引き下がってくれれば助かるが。 ヤバい女を助けたもんだ! マジ、運が無い! 明日もまた待ってたら……はあ~気が重い‼︎ 気分が滅入る‼︎ こう言う時は、早くミキに会って癒されよう‼︎ あ~、早く会いて~‼︎

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