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第790話
「どこ?」
俺が聞くと龍臣と優希さんは顔を見合わせ笑い
「俺の実家‼︎」
「はあ?龍臣の?」
元極道だから、確かに安全安心だけど……。
「セキュリティはしっかりしてるし部屋も余ってるし、それに若い奴らもまだ何人か居るし」
若い奴ら?
ヤクザ家業は廃業したんじゃ……。
「だが……」
「遠慮するなって! 親父と母さんだけだし、あっ!今は、屋敷で住み込みで居る若い奴らは2人だったかな?親父、未だにそこら辺のごろつきを拾って来て面倒見てるからな。昔っからそうだったが未だに、見て見ぬ振りできないらしい。一緒に住んで、世間一般な常識やら更生するのに面倒見てる。まあ、親父も見る目もあるから変な輩は居ないし、そんな奴らなら他の奴らが黙っちゃいねーから、悪さはしないから大丈夫だ。ま、そいつらに生活態度や常識を教えて、俺の店でボーイとか運送業の方とか建設業の方で働いてるのが多い。その中で上昇思考の奴とか勉強したい者には勉強の機会も与えてるって感じかな。まあ、俺の家は昔から人の出入りがある家だったから今更って感じだし、親父達のボディーガードも兼ねてると思ってる。だから美樹君か1人増えても全然問題無い!」
確かに、龍臣の家は昔の家業の事もありセキュリティはしっかりしてそうだし若い奴らが居るなら安全だが……その若い奴らがミキに惚れる可能性もあるのが心配なんだ。
男にも女にもモテるミキだけに……。
「成宮の心配は他にもありそうだけど…。今は、そんな事言ってられないんじゃない?取り敢えず龍から若い子達には話しても貰う事で納得したら?」
「ん?ああ…そう言う事か⁉︎ それなら、俺から釘刺しておくから大丈夫だ! モテる恋人持つと大変だね~」
ニヤニヤ…して俺の嫉妬をバカにしてたが無視。
「……そうだな。そこが1番安全だな。ミキ、悪いが暫く龍臣の実家に匿ってもらおう! 早く戻って来れるように何とかするが……直ぐってわけにはいかなそうだ。まずは……1週間だけ我慢してくれ‼︎」
不安そうなミキだったが、俺がミキの安全を第一に考えての事だと理解してくれたようだ。
「解りました。……早く迎えに来て下さいね、待ってます」
「……ミキ」
不安そうなミキを抱きしめたかったが、龍臣達が居る事もあり我慢した。
「取り込み中悪いが、会社でも会えるんだから。何だか、永遠の別れみたいに大袈裟なんだよな~」
「アホか! 永遠の別れとか縁起でもねー事言うな‼︎ 会社は会社。プライベートとは別なんだ‼︎」
「はい.はい。そうですか」
「龍も成宮も止めなよ。取り敢えずは、行先は決まったね。後は、法でどうにかなるか?って事だけど…。ストーカー行為と言えばそう考えられるけど、毎日出没するわけじゃないし何かされたわけじゃないからね。少し弱いな。警察に被害届け出したとしても何かされない限り事件性が無ければ警察は動かないからね。せいぜい注意勧告ぐらいだろうし」
「そうか。あの女が諦めるまで待つしか無いって事か‼︎ はあ~、何で俺がこそこそ逃げ回らなきゃなんねーのか⁉︎ 理不尽だし、早く解決して平穏な生活してー!」
ついつい愚痴を言ってしまった。
ストレスが溜まってた。
「なあ、伊織はその女の事は何か知ってるのか?」
龍臣に言われて俺は頭を巡らせた。
「殆ど知らない。最初、お礼と言われお茶した時に、俺の勤務先から5駅先の会社に勤めてる事と営業事務と朝に母親と喧嘩したっていってたから実家暮らしなんだと思う。あとは…名前と歳か。俺から聞いた話じゃないぞ! 勝手にベラベラ…話してたのを聞いてただけだからな。ま、最初はこうなると思わなかったからな」
「ふ~ん。あっちは伊織の勤務先やらマンションも知ってるのに、抽象的な事しかこっちは解らないって事か。だったら、こっちもその女を調べてみようぜ! 敵を知るのが1番の解決する早道だ‼︎」
「確かに。こっちだけ知られてるのも癪に触る‼︎ じゃあ、興信所でも頼むか?」
「俺の会社の奴に頼むって言うか.仕事させる!」
「はっ⁉︎ どう言う事?」
「そいつも親父が拾って来た奴で、元々やんちゃして高校中退して、なんでも屋やってたんだけどまあ、そうそう上手くいかなくってな。勉強はからっきしだけど、手先が器用で。鍵屋にも一時期勤めてたし、電気関係にも強いから使えると思ってな。本人も何でもやります!って言うから仕事させた。主に、貸しビルに入るテナント会社の信用調査とか店でトラブル起こす客とか店の子にストーカーになる奴も居るからな。そう言う奴らの素性調査などやらせたら、結構本人にも合ってる仕事だったらしく、知合いの興信所に頼んで研修させて今では本格的に色々と裏仕事させてる。ま、表面的には普通の仕事もさせてるけどな。ボーナス手当てとして裏の仕事もさせてるってわけ! 顔バレすると色々面倒だから、そいつの裏の仕事させてる事は俺と優希と秘書しか知らない。あと…親父か。ま、1週間そいつに調査させる」
「良いのか?仕事じゃないのに」
「別に! またボーナス手当てついて喜ぶさ。だが本人の姿は見せない! 陰で動くからな。で、1度だけ女と接触するか.写真が有れば女の顔が解るんだが……」
「写真なんかあるわけないだろ‼︎……解った。月曜日でも、また待伏せしてたら避けずに迷惑だ!と話す。それで良いか?」
「充分だ。顔さえ解れば、あとは素行調査するだけだ」
「それと一応接触した時にスマホでもICレコーダーでも良いから録音しておくように。後で、何かの証拠になるかも知れないから。その時に、なるべく迷惑だ!とかストーカー行為っぽい事を話すように」
龍臣からの提案と優希さんのアドバイスを貰い、月曜日から1週間その探偵さんが調査してくれる事になった。
「姿は見せないが、必ず側に居るし安心しろ! 後で、そいつのLINEだけ教えるから、それで連絡取れ! 俺にも何かあったら逐一連絡入れろ!」
「解った‼︎ ありがとうな」
「良いって! 持つべきものは良い友達(ダチ)だな‼︎」
自分で良い友達(ダチ)って……まあ、そうなんだが。
「龍臣さん、優希さん。宜しくお願いします‼︎」
ミキが2人に頭を下げて話す。
「大丈夫だよ。美樹君は安心して待ってて‼︎ それで、今から私達と実家行く?」
「いや、もう遅い時間だからな。荷物もあるし、日曜日の午後に俺が車で連れて行く」
「解った。場所解らなければ、連絡くれ! 俺と優希は先に行って話して待ってるよ」
「龍臣の実家は何となく解るが、後で住所LINEくれ」
学生の頃も龍臣の実家には尋ねた事が無かった。
最寄り駅や近くまで行き待ち合わせしたりしたが実家には龍臣も俺達を近寄らせなかった。
たぶん、素人の俺達の事を考えて極道の世界には少しも踏み込ませない!と言う龍臣なりの気遣いだと思う。
そう言う優しさは龍臣ならではだ。
友達思いな所も。
そして大体の事が決まり、龍臣達は帰って行った
日曜日に送ると言ったのは、少しでもミキと一緒に居たかったからだ。
ミキに危害を与えないようにと思えば、優希さんが話したように早いに越した事は無かったが……俺の我儘だった。
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