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第796話
色々考えて駅に向かうとあの女三田が待ってた。
俺の姿を見つけにっこり微笑む。
「成宮さ~ん」
俺は笑いもせずに淡々とここまで来るまでに考えてた事を直ぐに話した。
「あ~言う事は困る! これまでも駅や会社.マンションまで現れて散々迷惑してる!って言ったはずだ! 1度食事に行けば気が済むのか?それで、こう言うストーカー行為みたいな事を止めてくれるなら食事にも応じる! それで今後一切俺に関わらない!事が条件だ! それが無理なら食事も行かないし、こちらにも考えがある‼︎」
俺はカッとなり ‘今日、決着つけてやる!’と意気込んでた。
今までも何度も迷惑だ!とはっきり伝えたが、今日は会社にまで突撃した事で怒りとキツく言い放った俺の態度に三田も少し考えてた。
これでダメならさっさと帰って龍臣達と今後の事を話し合おう。
「……いいわ。成宮さんの条件で良いから、食事に行きましょう」
もっとごねるか?と思ったら、案外あっさり三田が了承した事にこっちが拍子抜けした。
そうか、やはり俺が誘いに応じない事が、三田のプライドを傷つけてたって事か。
食事にさえ行けば、そのプライドも回復するって訳だ!
下らねーが、こう言う女にはそう言うのが大切って事か。
綺麗系でスタイルも良いしプライドが高そうだが男に甘えるような仕草もするし、たぶん上手く使い分けてるんだろうな。
こう言う女に男は引っかかるんだろうし、本人もモテると自覚もあるんだろう。
前に、ミキの後輩でやはり女達に嫌われてた可愛い系でぶりっ子で男に甘え上手な女が居たが、それとも違うタイプで嫌われてそうだな。
プライドが高くモテる事を鼻にかけ周りの女を見下して高飛車なタイプだな。
ま、俺は女に興味ねーから関係ねーけど。
俺が最も嫌いなタイプだな。
良し!
ICレコーダーも録音してあるし、今後何か言ってきても一応証拠にはなるだろう。
「解ってくれたらそれで良い! 俺も大事にはしたくない。で、さっさと食事行こう。この場所からは離れたい」
会社からの最寄り駅だ、どこで会社の奴が見てるか解らないから場所を変えようと提案した。
「良いわよ~。ここから2駅先に良いお店があるの
そこに行きましょう」
「解った」
「じゃあ、行きましょう♪」
馴れ馴れしく腕を組んで来る三田の手を払った。
「何か誤解してるようだが。馴れ馴れしくするな!」
「ふ~ん……ま、良いわ。早く行きましょう」
駅構内に入って行く三田の数歩後を歩き、そして電車に乗り、三田の話した通り2駅先で降りた。
俺はこの街に来た事はなかったが、三田は何度か来てるらしく駅からどんどん歩いて行く。
駅の周辺はなかなか栄えていて居酒屋やコンビニ.ファーストフードや色々な店舗があった。
そして繁華街を抜け、数分歩いた所に数店舗のレストランが並んでた。
解り難い場所にある為、ちょっとした隠れ家って感じだった。
その内の1店舗の前で三田は止まり、背後から着いて来た俺を待ってた。
「ここよ~。結構素敵な店でしょ?イタリアンなんだけど、凄くワインも美味しいしパスタも美味しいのよ」
「……へえ」
気のない俺の返事も気にせずに店の中に入り、座席案内された。
確かに三田の話す通り、なかなか内装も洒落て照明が薄暗い感じで雰囲気も良かった。
家族連れって言うより恋人同士で来るって感じだな。
メニューもそれなりの値段だった。
「コース料理もあるわよ。ワインは赤で良い?」
「料理は別に任せるが酒は止めとく」
「え~、凄く美味しいのよ。やっと成宮さんと食事できるんだから記念に乾杯位はしたいわ。ね、お願い!」
……後々煩いのも面倒だし、1杯だけ注文してチビチビ…飲めば良いか。
ま、酒に酔わせて俺をどうこうしようとしても、俺は酒に強いし。
「解った。1杯だけ」
店員を呼びコース料理と赤ワインのグラスを慣れた感じで三田が頼んだ。
直ぐに、前菜と赤ワインが運ばれて来た。
「やっと念願叶った成宮さんとの食事に! 乾杯!」
「………」
俺は無言でグラスを合わせた。
三田がグビッ!と一口飲み
「やっぱり、ここのワイン美味しいわ~。成宮さんも飲んでみて?」
一口飲むと三田の話す通り、葡萄の芳醇な香りが鼻から抜け美味かった。
「……確かに」
「でしょ?でしょ?」
そこから三田はここ以外にも美味しいお店があるとか言ってたが無視した。
料理が次々運ばれテーブルを埋めた。
「食べながら話しましょう」
話す事は無いから料理をひたすら食ってた。
そんな俺に構わず、三田は1人で音楽.映画の話をし、俺は相槌を打つだけに留めた。
時間が経つに連れ、今度は会社の愚痴や同僚の愚痴に変わった。
やはり女だな~と、そう思いながら聞いてた。
事務職から抜擢され営業もするようになって同僚から僻まれてるとか、会社の男に交際申し込まれたが断ったとか、愚痴と自慢話に辟易してきてた
俺は食べる事に集中した為に粗方食べ終わったが話に夢中な三田は半分程しか食べて無かった。
無駄話してねーで、早く食べろよ‼︎ったく‼︎
三田が食べて終わらないとデザートやコーヒーまではいけない。
早くこんな時間を終わりたい俺はイライラ…してた。
三田は店員を呼んでワインを注文する。
飲んでねーで、さっさと食べろ‼︎
三田の注文してたグラスワインが置かれ、俺はトイレ行く!と言って席を立った。
トイレに行き、スマホを出し龍臣に駅名と食事してる店名と、あと最低30分はかかりそうだとLINEで送った。
ミキからの返信があった事に気が付いて開いた。
♪*大変な事になってますね‼︎ あまり無理しないで‼︎ 俺は伊織さんを信じてます‼︎♪*
やはり、ミキの為にも今日で終わらせる‼︎
そしてスーツのポケットからICレコーダーを出し今までの録音されてるか?確認し、三田の居る席に戻った。
まだ、三田はゆっくりとワインを飲んでた。
「成宮さん、全然ワイン減ってないわ。一杯だけは付き合ってくれるって言ってたのに~」
面倒くせーな‼︎
「解った。じゃあ、そっちもさっさと食べてくれよ」
「何で、そう言う風に言うの?最後位ゆっくり食事しても良いじゃな~い」
一応、最後と言うのは解ってるのか⁉︎
今まで何言っても変な脳内変換してたが……。
三田が食事を始めた事で、俺もワインを飲みながら待つ事にした。
相変わらず、自分の事ばかり話す三田に呆れながら相槌を打ち黙って聞いて飲んでた。
三田もやっと料理を食べ終わった所で、デザートとコーヒーが運ばれた。
これでやっとこの苦痛から逃れられる。
後少しの辛抱だ………。
イラつく俺の事など眼中になくのほほ~んと話す
「わぁ~可愛い♪ここのデザートは見た目も味も凄~く美味しいのよ♪」
そう話す三田の声が段々と遠くに聞こえてきた。
何だか頭が重くなり意識が朦朧とする。
「成宮さん……成宮さ……なり」
目が回る……そこで俺は自分の記憶が無くなった
俺は迂闊にもこの時まで三田の策略に嵌ってたとは気が付いて無かった。
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