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第804話

「今日、あの女性の自宅に内容証明と接近禁止等の書類を持参して、ご両親が在宅時間を狙って龍臣と伺った。あの金曜日の夜の彼女の態度や話にならず聞く耳持たない事で、ご両親も含め話し合った方が良いと判断してね。ご両親もご在宅で良かったよ」 優希さんの話から俺達があのホテルから出た後も大変だったんだと感じた。 「あの女! 本当に、何言っても聞きやしねーし、何言っても自分の都合良いように脳内変換するから話になんねーし。大変だっただろ?迷惑掛けた」 「それは別に良いよ。私も勉強のつもりだし。それで結論から話すと、成宮に関してはこっちの要求通りになった。最初は、ご両親も娘の話す事を信じてたけど、ストーカー行為や金曜日のあの夜の事もレコーダーに録音されてたからね。それをご両親の前で証拠として聞かせたら、娘の行動に驚いて顔が青褪めてた。それで、ご両親も観念して接近禁止令の書類に捺印と署名するように叱って説得してくれた。内容は 1.今後、ストーカー行為はしない。2.成宮との接近.接触禁止。3.2度と関わらない。違反した場合→罰金1回につき10万円と警察に通報! ま、細かい事は色々あるけど概ねそれで和解した。色々、彼女は言い訳やら喚いてたけど、ご両親は常識ある人みたいで ‘もう2度とご迷惑をお掛けしません。私達が責任持って監視します。迷惑料と言うか慰謝料です。今、家にある現金ですが…これで何とか穏便に’と、ご両親から慰謝料として50万提示してきたから有難く頂いてきた。ま、これで成宮の件は解決!」 鞄から取り出し接近禁止令書(示談書)のコピーと慰謝料の50万を俺の前のテーブルに乗せた。 「金はどうでも良い! 取り敢えず、俺に接近.接触しなければ、それで良い‼︎」 俺は金には目もくれず書類に目を通し、きちんと署名.捺印されているのを確認した。 ご丁寧に連帯責任者に、ご両親の署名.捺印まであった。 それを見て ‘やっと終わったんだ‼︎’と、今までの疲れと安堵感が押し寄せてきた。 隣のミキも書類を覗き込みホッと息を吐いてた。 「成宮がお金の事はいいって言ってたから、別にこちらからは要求はしなかったけど。ま、あちらがそれで気が済むならって受け取ってきたから、それは成宮の好きに使えば良いよ」 金の事は一先ず置いといて、不可解に思った事を聞く事にした。 「で、俺の件は?って言ってたけど、他にも何かあるのか?」 そこからが驚愕な事実が優希さんの口から語られた。 元々の原因は、あの女が会社の上司と不倫して妊娠した事からだったようだ。 妊娠発覚し悩んでるうちに母親に気付かれてしまい「付き合ってる相手が居るなら連れて来なさい子供の事もあるんだし、結婚に向けて話を進めないと…」と、妊娠が先だが母親は結婚に前向きでなかなか紹介しない事や誤魔化し先延ばしにする女とで言い合いが多くなってた頃に、俺と出会った事で ‘どうせ、結婚するなら容姿が良い方が良い’ ‘身なりや若くして課長と言う事から、今後の生活も安定できる’ そう言う打算的な考えから、俺を結婚相手.子供の父親にしようと考えたらしいだが、なかなか落ちない俺に容姿に自信があった女のプライドが傷つき半分意地にもなってたらしい。 そして最終的には薬を盛りセックスし、それを盾に ‘妊娠した’と責任を取らせようと考えたようだ それを聞いた俺とミキはあまりの浅はかな考えと女の執念を知り、呆れと恐怖を感じた。 「それって……妊娠して他の男に托卵しようって計画したって事か⁉︎ 関係ない俺がたまたま助けてやって、それでカモにされたって事か‼︎ 結局、誰でも良かったなら、俺じゃなくても良いだろーが‼︎ マジ‼︎ 最悪‼︎ 災難‼︎ ひでー女だ‼︎ 妊娠したならその不倫相手と話し合うべきだろう。何を他人に迷惑掛けてんだ! 結婚とか托卵とか人の人生を左右する重要な事なのに、自分の事しか考えてねーじゃん‼︎ 全く、許せない‼︎ もう金輪際、マジで関わりたくない‼︎」 俺が力説する横でミキは龍臣に托卵の意味を聞いて説明を受け驚いてた。 それだけでも充分に怒ってるが、更に、怒りを増す事実が語られた。 「不倫相手には妊娠の事は打ち明けたらしいが、不倫.妊娠が原因で離婚となると、有責と言う事で慰謝料が発生するのは今はまずい。1年後に何とか性格不一致で離婚するから、今回は堕ろてくれ!と言われ、悩んだ末に1年後に結婚出来るなら堕す必要無いんじゃないか⁉︎ 他の人と結婚して出産し1年経ったらこっちも離婚して晴れて不倫相手と結婚すれば全て上手くいくんじゃないか⁉︎と女の方は考えたらしい」 「はあ⁉︎ ばっかじゃねー‼︎そんな上手くいくわけねーじゃん‼︎」 俺は突拍子も無い考えに呆れて頭が痛くなってきたが、今度は龍臣からも更に呆れる話が飛び出た 「それがよ~。伊織と出会うちょっと前に婚活パーティーで出会った奴と直ぐに上手くいって調子に乗ったんだろ。黙って、そいつにしておけば良かったのに、欲出して伊織にも粉かけてきたってわけ! そっちの男は女の言いなりになってバッグやらアクセサリーやら貢がせて、お前に相手にされず断られた後に直ぐに電話して食事に行ったりしてたぞ。週一でホテルにも行ってたな。全て調査済み。で、その男はキープして、なかなか落ちないお前を落とす事に躍起になって、お前が落ちたらお前に乗り換えて妊娠を盾に結婚を迫る予定だったって事」 「で、なかなか落ちない俺に業を煮やして、最終的な手段を取ったって事か‼︎ 最低だな! クズだな!大体、そんな事をする女と結婚するわけねーだろーが! で、そっちの男はこの事知ってんの?」 「ああ、連絡とって優希と2人で会いに行って全部話した。最初はすっげ~ショック受けて信じられない!とか言ってたが、こっちも調査書や証拠を見せたら逆に怒ってな。で、直ぐに優希に弁護依頼してきたよ。普通のサラリーマンで人が良さそうな感じだったけど最後は相当怒ってたな」 「成宮の件も話したから尚更怒ってたね。‘騙された! ’ ‘人の気持ちを何だ!と思ってんだ!’とか言ってたし。弁護を受けて成宮の件が解決した後に、今度はそちらの内容証明書を出して話し合いしたよAさんの要望は、1.結婚詐欺で告訴する 2.告訴されたくなければ貢いだ金額(50万)+慰謝料請求(100万)合わせて150万円の支払い 3.接近.接触禁止を要求した。彼女はワーワー喚いてさ ‘自分は悪くない’ ‘結婚詐欺なんて結婚するつもりだった‘ ‘勝手に貢いだくせに~’ とか色々言ってたけど、父親は彼女を殴り母親は泣くしで修羅場だったよ。結果的には、成宮の分もAさんの分の慰謝料を親が立て替えて払う事になった。それで告訴はせずに示談になったよ。成宮もだけどAさんもたまたま悪い女に当たったんだよ。結果報告を電話でしたんだけど、Aさんは少し落ち着いたらしく ‘騙されて結婚して托卵される前で良かった。早く忘れて今度は良い人と巡り合いたい!’と前向きに考えてたよ」 「ま、騙されたにしても貢いだにしても何回かは良い思いしてんだからな‼︎ それに割と良い女だったしな」 「龍! そう言う事じゃないんだから‼︎ それに……あ~言う性悪女が好きなんだ~。へえ~、龍臣も見る目無いねー。それでキャバクラとかクラブとか経営してんだからね~。お店も心配だわ!」 「ゆ.優希~。一般論だよ~。一般的に見て、見た目は良いって言ったまでだ! な、伊織。そうだろ?それに大体俺のタイプじゃない‼︎」 「へえ~、龍臣のタイプはどんなの?龍臣には、あ~言う性悪女がお似合いかもね~。腹黒同士で良いじゃないの⁉︎ お似合いだよ」 「ゆ、優希~」 情けない声を出す龍臣に更に追い打ちをかけた。 「俺は女は無理‼︎ それに外見着飾ったって性格悪そうじゃん」 「お前~‼︎ 裏切るのか⁉︎ 俺が助けてやったのに」 「成宮を責めるのはどうかな?自分の目の節穴を責めるべきじゃないの?ま、あの程度の性悪女は龍臣の店にも沢山居るしね。良かったじゃん、選り取り見取りで‼︎」  「優希~。そんな事言うなよ~。店の子は飽くまで商品なんだって。何回も言ってるだろ?あー言う店の子は多少性悪じゃないとやってけねーんだって」 「あっそう。別にどうでも良いけど」 「優希~」 何だか話が脱線してる‼︎ 龍臣が優希さんに尻に敷かれてるのが良~く解る‼︎ 痴話喧嘩は家でやってくれ!

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