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第806話

火曜日に仕事終わりに2人で外食し、そのまま車で龍臣の実家にミキの荷物を取りに行く事と叔父さんと叔母さんにお礼と挨拶に向かった。 もちろん龍臣達も来る事になってた。 龍臣の実家に着くと、良二と健太が玄関先で出迎えて待ってた。 「美樹ちゃ~ん! 会いたかったよ~!」 「美樹ちゃんが居ないと寂しいよ~! 勉強も捗らないし~」 「健太君! 良二君!」 情けない声で甘えて来る2人をミキは笑顔で対応してる光景を側で見てイラつく! 「おい! ベタベタ…触るな! 馴れ馴れしい!」 ミキに纏わりつく2人をシッシ!と追い払った。 「酷いっす!」 「少しぐらい良いじゃん! ケチ!」 「はあ⁉︎ どの口が言ってんだ⁉︎」 ドスの効いた声で威嚇するとミキに嗜められた。 「伊織さん! 2人には、お世話になったんですよ。2人が居たから、俺はここでも寂しく無かったし快適に暮らせました。それなのに……2人に、そんな態度とって! 謝って下さい!」 ミキが2人の味方になった事に気を良くした健太と良二はニヤニヤ…してた。 ムカつく! だが……確かに、ミキの話す事には1里あるし…2人の態度にムカつきながら口先だけの謝罪をした 「……悪かった」 「伊織さん!」 「良いよ.良いよ。一応、謝ってくれたし~」 「俺達、心広いからね~」 「ごめんね。良二君.健太君、ありがと!」 肩身の狭い! 居心地が悪い! 俺は話題を変えた。 「龍臣達は?」 「先程、いらっしゃっいましたよ~」 「待ってます」 「そうか、あまり待たせてもな。案内しろ」 「はい.はい」 まだ、ムカつきもあり、2人には横柄な態度と言葉だっだが、2人は鈍いのか?気にしない性格なのか?直ぐに龍臣達の所に案内した。 和室の大きな部屋の前に来ると、龍臣.優希さん.叔父さん.叔母さんで談笑してる声が聞こえた。 「美樹ちゃん達がいらっしゃいましたよ~」 「入れ!」 良二が襖を開け、俺達は部屋に入ると健太が俺達の分のお茶を出し、2人はお役御免と自分達の部屋に戻って行った。 俺達も座り、叔父さんと叔母さんに挨拶とお礼を言った。 「この度は、ご迷惑おかけしてすみませんでした龍臣や優希さんのお陰で無事解決しました。ミキの事も含め、色々ありがとうございます」 お礼を言いお辞儀をした。 「今、龍臣と優希から話を聞いた所だった。大変だったな」 「本当に、災難だったわね~。そう言うのって、巻き込まれ事故とでも言うのかしらね~。ま、解決したなら良かったわ。それで?美樹ちゃんは帰っちゃうの?」 「はい、荷物を取りに来ました。ミキも凄く居心地が良かったって言ってました。本当に、叔父さん.叔母さんには、お世話になりました」 「最初はどうなるのか?と不安でしたが、凄く良くしてくれて本当の家族みたいでした。良二君や健太君とも仲良くなれたし……寂しくなります。お世話になり、ありがとうございました」 ミキが寂しそうに話すと、叔母さんはとんでもない事を話し始めた。 「何言ってるのよ。同じ釜の飯を食うって言う事は、もう家族も同然ですよ。私達は美樹ちゃんの事を今までここで生活して巣立った子供達と一緒だと思ってるんだから。いつでも遊びに来てね。 そうだ! いっそう私達の子供になりなさいよ。優希ちゃんも養子縁組してるし……1人も2人も一緒よね。あっ! でも……そうなると龍臣のお嫁さんは優希ちゃんで……龍臣の愛人って思われるかしら?何だかややっこしいわね~。ん~、龍臣のお嫁さんは優希ちゃんで……じゃあ! 優希ちゃんのお嫁さんが美樹ちゃんって事でどう?優希ちゃん、どう思う?」 訳の解らない事を言ってる叔母さんに、俺とミキは面を喰らい直ぐには言葉が出なかったが、話を振られた優希さんは慣れたものなのか?平然と答えてた。 「お義母さん、それ良いですね~! 私も美樹君なら問題無いです! 美樹君なら、毎日癒されるだろうし仕事の疲れも吹っ飛びます。それなら平日は龍臣と暮らして週末にこちらで美樹君と過ごしますよ」 「良いわね~。優希ちゃんも来てくれるなら毎週末賑やかになるわ。3人で買い物とかも行きたいわね~」 「良いですね~。楽しそう♪」 「それとね。料理も3人で作って…旅行とかも行きたいわね?」 「温泉とかどうですか?3人で部屋に泊まって夜通し飲んでお喋りするってのは?」 「優希ちゃ~ん。それ凄く良いわ~」 叔母さんと優希さんの会話は妄想付きでどんどん話が膨らんでいく。 龍臣と叔父さんはただ黙って聞いてた。 俺は龍臣に小さな声で聞く。 「なあ~、これって、姑x嫁問題⁉︎」 叔母さんの嫌味に表面的には和やかに対応し、優希さんも嫌味で返してるのか?と思ってたが…。 「いや、あの2人凄い気が合うんだよ。冗談だから気にするな」 「あれで気が合ってるのか?」 「母さんも嫌味とか嫁いびりはしないしな。思ったままを口にするし竹を割ったような性格だからな。優希も母さんの性格は解ってるし、あ~言う冗談には話を合わせてるんだよ。そもそも優希の嫁じゃなく俺の愛人で良いじゃん。な! 伊織もそう思わね~?そしたら俺って両手に華じゃん」 「はあ⁉︎ お前まで何言ってんだよ‼︎ ミキが俺以外の嫁とか愛人なんてなる訳ねーだろーが‼︎ 大体、俺が許さねー! 冗談もほどほどにしろ!」 叔母さんと優希さんには面と向かって言えなかったが、龍臣の話を聞いて思わず大きな声で反論してた。 その場が一瞬シーンと静まり返り、そして叔母さんと優希さんがケラケラ…笑い出した。 「やだなぁ~。冗談に決まってるだろ?マジになって! ウケる~」 「伊織君って冗談も効かないの?若いのに頭固いのね~」 冗談も効かない男と小馬鹿にされた気がしたが、この2人には逆らわない方が良いと本能で察知した。 たぶん、叔父さんも龍臣もそうなんだろうと何となく何も言わないで居た2人を見てそう感じた。 「すみません……俺、ミキの事に関しては冗談とか……無理です。あと…ミキの事を家族の様に思ってくれる事には感謝してます。でも、俺とミキも家族なんで!」 「…伊織さん」 ミキは感動したと言う顔をし俺を見つめてた。 「あらあら、見つめ合って~。仲が良いのね。安心したわ。伊織君が美樹ちゃんの事を家族だと思ってる事に。恋人や夫婦は相手が1人だけどね、家族は多い方が良いのよ。美樹ちゃん、伊織君だけじゃなく、私達や健太.良二も家族だと思ってねここにはいつでも帰って来て良い場所だからね。 実家だと思って何もなくても気楽に遊びにいらっしゃい。もちろん、何かあった時には力になるからね」 「母さんも美樹君が居なくなるのが寂しいんだよ 冗談で言ってたが、養子縁組しても良いってくらいには、自分の子供だと思ってるって事だよ。ここには若い衆が何人も生活しそして巣立って行った。そいつらもわしらにとっては、子供だと思ってる。だから、短い間でも一緒に寝起きを共にした美樹君も同じだよ。また、いつでも気軽に遊びに来なさい」 さっきとは打って変わって、叔母さんは真面目に話し叔父さんも多くを語ってた。 ミキへの優しさと本当に子供みたいに.家族と思ってる気持ちが伝わった。 ミキは目に涙を溜め、とうとう涙を流して頷いてた。 俺はそんなミキの頭をぽんぽん…し慰めて居た。 その光景を4人が微笑ましく見てたのは知らなかった。 昔、極道と言う特殊な環境の中で育った龍臣が腐らず根の良い奴に育ったのは、この2人を知れば解る。 グレたり社会の行き場を無くしたこれまで何十人と言う若い衆がこの人達を慕いここに人が集まって来るのは2人の情の深さだろう。 人間としての器の大きさが違う‼︎と感じた。

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