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第808話

「まあ、良いからそこに座れ。渡したい物がある」 「何.何~」 「良いもんくれんの~?」 さっきの感動劇とは打って変わって現金な奴らだ 適当に座った2人の前に、商品の入った袋を差し出した。 「え~、何かなぁ~」 「見ても良いの?」 「ああ」 嬉しそうに袋から商品を出し、それを見て目を丸くし顔を見合わせ、そして蔓延の笑顔で喜ぶ2人 「ええ~‼︎ 良いの?貰っちゃって~♪ずっと欲しかったんだ~♪」 「マジ? マジで嬉しいんだけど~♪」 「ああ、大事に使え。余り遊び過ぎるなよ。それと勉強もしっかりして、必ず高校卒業する事! ミキが世話になったお礼だ。ここで楽しく過ごせたのも、お前らのお陰だからな」 「うん! 絶対に卒業するよ‼︎」 「サンキュ! 美樹ちゃん、ありがと‼︎」 「俺のお金じゃないよ、伊織さんからだよ。お礼なら、伊織さんに言って」 「成宮さん、ありがと」 「大事に使うよ。サンキュ」 「俺の金って言うか.泡銭だから気にするな」 2人に選んだ商品は、前から欲しいって言ってたゲーム機とノートPCにした。 金とも思ったが、変に大金入ると遊びに使うかも ……と思い、勉強に使う商品と息抜きの商品として物を渡す事にミキと相談して決めた。 やはり、金じゃなくって良かったな。 商品を見て喜ぶ2人を目の前にして、そう思った 暫く喜んで商品を見て、あ~だこ~だ言ってた2人だが、ノートPCは使った事があるが初期設定が出来ないと言い、ミキを連れてまた部屋に戻って行った。 「あの子達にまで、ありがとうね」 「いや、2人にも世話になったし、何よりミキがここで楽しく暮らせたのは2人のお陰だし。あんなに喜んでくれて良かった」 「こんなに皆んなに色々渡したら、成宮の手元には殆ど残らないんじゃないの?」 「まあな。慰謝料貰った時にどうしようか?考えて、ミキと2人で相談して今回世話になった人達に、このお金でお礼しようと決めた。元々、泡銭で気分も悪い金だし手元に置いとくつもりもなかったしな。良いんだよ、これで綺麗さっぱりとした。残りは1万弱あるから、それでミキと焼肉屋にでも行こうと思ってる。俺達はそれで充分だ」 「ほんと、金には執着しねー奴だよ」 「ミキにも金遣い荒いって言われる。金がある時には気にせず使う、ない時には使わないって主義だし。まあ、その分ミキが節約家なんで。バランス取れてんじゃねーの」 「お前もしっかり尻に敷かれてんな~」 「龍臣には言われたくねー」 「はあ⁉︎ 俺ん所は違うわ‼︎」 「お前、気が付いてないかも知んねーけど。俺に 今 ‘お前も’って ‘も’って言ったんだぞ! それって龍臣も一緒って事だろーが! お前の潜在意識の中にそう言う気持ちがあるって事‼︎ 俺は別にミキの尻に敷かれても全然構わねーし」 「…………」 俺に指摘された事が図星らしく、龍臣は言い返す事も出来ずに押し黙って居た。 「まぁまぁ~、家庭が上手くいくにはカカア天下が1番なのよ。外では亭主を立て内では尻に敷く‼︎ これが家庭円満のコツね」 叔父さんも頷いてた。 夫婦生活を何十年も続けてる叔母さんの話には、説得力があった。 「なる程な」 「勉強になります」 俺と龍臣が納得した顔で返事をすると 「成宮さぁ~、ちょっと勘違いしてるよ。うちは別にカカア天下でもないし尻にも敷いてないよ。 龍が外では責任ある仕事と立場もあって気を張ってピリピリ…してるからね~。家だと何もしないしだらしないし甘えるんだよね~。ま、外で頑張ってるから、家ではのんびりして欲しいって思って私も何も言ってないよ。ただ、あんまり横暴な態度や言動には注意もするけどね」 優希さんの話を聞いて居たが……衝撃だったのは ……龍臣が甘える⁉︎ 想像するだけで…キモッ‼︎ この大男で強面の龍臣が⁉︎ 俺が笑いを堪えてると 「変な想像すんな‼︎」 長い付き合いの龍臣は俺が何を考えてるか?解ったようだ、嫌そうな顔で言ってきた。 「ま、家庭それぞれって事だ‼︎ 龍臣も伊織君もまだまだ若い。これからお互いの伴侶と自分達なりの家庭を築いていけば良いんじゃ」 叔父さんの言葉にも重みがあった。 俺達は何も言わずに頷いた。 それからは世間話をし、時間が過ぎて言った。 なかなか戻らないミキが心配になり、健太達の部屋の場所を聞き向かうと、部屋の中から楽しそうな笑い声が聞こえた。 「?……。ミキ、まだ終わんねーの?」 襖を開けるとTVの前で買ってやったゲーム機で早速遊んでた。 はあ?こっちは待ってたんだぞ~。 ゲーム機だけだと使えねーと思って、最新で人気のあるソフトも一緒に付けたのが不味かったか~ 盛り上がり、俺の声も聞こえてないようだ。 「おい! ミキ。そろそろ帰るぞ!」 「えっ! もう、そんな時間?」 「なかなか戻って来ないから心配した。で、遊んでるけどノートPCの方は終わったのか?」 「美樹ちゃんが全てやってくれて助かった」 「んで、少しだけ使い方教わって~。ちょっと前にゲームしてた所っす。美樹ちゃん、ゲームって殆どやらない!って言うからさ~。今時、珍しい~よね~」 「やると楽しいですよ~。伊織さんもやります?」 「いや、俺はいい。楽しんでる所悪いが、そろそろ帰ろう」 「あっ! はい。また、遊びに来るからね」 「美樹ちゃ~ん、絶対だよ~」 「俺達からもLINEするから、美樹ちゃんもLINEしてね~」 「うん! 勉強頑張ってね。解らない所あったらパソコンで勉強動画も見れるからね。また、必ず遊びに来るから」 はあ⁉︎ いつの間にLINE交換したんだ? 「その時には、俺も必ず来るからな」 「え~! 成宮さんも⁉︎ 別に、呼んで無いっす」 「美樹ちゃんだけで良いっつーの」 「俺とミキは常に一緒だからな。ま、遊びに来たついでに勉強も教えてやるよ」 「伊織さん、優しいですね。そう言う所、本当に尊敬します」 2人への嫌味だったが、ミキは言葉通りに素直に受け止めてる。 渋い顔の2人とは対照的に笑顔を見せる。 「さて、明日も仕事だしあまり長居してもな。龍臣達や叔父さん達に挨拶して帰ろう」 「はい」 健太達の部屋を出て、ミキと一緒に叔父さん達が待つ部屋に行き「また、今度2人で遊びに来ます」と、挨拶すると「何もなくても、ここが実家だと思って気軽に遊びに来てね。あの子達も待ってるし私達も待ってるから」「いつでも来なさい」と2人に言われた。 俺達と一緒に龍臣達も帰る事にしたらしい。 玄関まで見送る叔母さんと健太.良二は何回も「また、必ず来てね」と言い寂しそうな顔を見せた。 そして俺達と龍臣達はそれぞれの車に乗って帰路に立った。 帰りの車の中でも色々話したが、やはりミキは寂しそうだった。 「これで最後ってわけじゃないし、何もなくても遊びに来い!って言われたし顔を見せに、また行こうな。龍臣とは関係なく、俺達も叔父さん達の家族の一員って事で‼︎」 「そうだね。いつでも遊びに行けるんだし悲しむ事はないんだよね。必ず、遊びに行きましょうね」 そんな約束を2人で話した。 今回の件で色々あったが、最終的に叔父さん達や健太.良二と出会えた事が、俺達にとってまた大切な人が増えた。 それが人との繋がりを大切にするミキにとって掛け替えのないものだと言う事は俺にも解ってた。 叔父さんや叔母さん.健太.良二の話を嬉しそうに笑顔で話すミキの顔が物語って居た。 ~後日談~ それから数週間後に優希さんから報告を貰った。 別に、あの女がどうなろうと関係ないし気にも止めてなかったが一応聞くだけ聞いた。 結局、Aさんは結婚詐欺で訴えない代わりに慰謝料+貢いだ金額返金と今後一切接触禁止と言う事で公正証書にし示談したとの事。 三田は不倫相手の上司の奥さんの妊娠にショックを受け、次の日に会社でその不倫相手に詰め寄り大騒ぎし不倫が会社バレ、三田は会社をクビに不倫相手は地方に左遷されたらしい。 奥さんは既に子供も1人居て現在妊娠中と言う事もあり、謝り倒す旦那と再構築する事に決め一緒に地方の転勤先に着いて行ったらしい。 奥さんにもバレ、奥さんから三田に子供を堕す費用を引いた金額で慰謝料請求され、結局は子供を堕し家に引き籠ってるとの事。 俺とAさん.不倫相手の奥さんへの慰謝料は全て親が立て替え ‘娘が落ち着いたら働いて返して貰う’と言ってたそうだ。 親へ迷惑かけ心身共に憔悴し立ち直るのは時間がかかるんじゃないのか?って優希さんは話してた 不倫するのも.変な小細工をしたのも.欲を出したのも全部自業自得で、俺は同情の余地も無いと思ってる。 引き籠ってると聞き、俺への接触はないと解り一安心した。 その件は、優希さんの報告を受け、これでやっと終わった。 それとは関係なく、俺達はたまに叔父さん達の所に2人で顔を出し遊びに行ってる。 いつも大歓迎してくれる。 健太と良二に1度勉強を教えてやったが、ミキと違ってスパルタの俺に嫌気を指し「美樹ちゃ~ん成宮さん、怖い! 怖くて聞けない! もう、俺、嫌だ!」「解ん無いって言うのに ‘何度、同じ事聞くんだ!’ とか ‘脳みそあんのか?’とか ‘こんなの小学生でも解る!’ とかボロクソ言って……。俺達…精神的に保たない」と、ミキに告げ口し「伊織さんはもう勉強教えなくて良いです! 自分が解るからって、皆んながそうだとは限らないんですよ⁉︎ 根気強く教えないと」俺が叱られ部屋を追い出された。 それからはミキ達が勉強時間の数時間は叔父さんと将棋して待つ事になった。 叔父さんは嬉しそうだが……。 夕飯には、ミキと叔母さんとでキッチンに立ち ご馳走を作って、それを大人数で食べるから賑やかな食卓を囲んで帰るパターンだ。 頻繁とはいかないが1ヶ月に1度か?数ヶ月に1度は必ず遊びに行ってる。 数年後には、健太も良二も無事に通信であるが無事に高校卒業でき、龍臣の会社でバリバリ…働いて居る。

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