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第810話
クリスマスの日が近づくと‘もう少しだな’と、俺の中でも楽しみで仕方がない。
ミキもそうらしく何だかウキウキ…と毎日嬉しそうだった。
24日に○が付けられたカレンダーは2人が楽しみにしてる証だ。
ミキからのサプライズがあったのは、クリスマス前日の日の事だった。
明日の朝早く出発すると言う前日の金曜日に、俺は残業し少し遅く帰って来た。
もう既に、部屋の中には良い匂いが漂っていた。
「ただいま~。めっちゃ良い匂い‼︎ 腹減った~」
「そろそろかなって。親子丼にするから着替えて来て~」
「解った~」
ミキは親子丼に取り掛かり、俺は着替えに寝室に向かった。
着替えてダイニングテーブルに着くと、既に何品かテーブルの上に置かれてた。
唐揚げ.サラダ.厚揚げの煮物.味噌汁。
「はい、どうぞ」
美味そうだなぁ~と思ってると、湯気が立ってる親子丼が目の前に置かれた。
卵が半熟で美味そうだ。
「美味そう‼︎ いただきま~す」
「召し上がれ。いただきま~す」
味噌汁は野菜たっぷりの具沢山で甘味があって美味い‼︎
親子丼を口に入れると卵の甘さと半熟具合、そして鶏肉にしっかり味付けされて格別に美味かった
「美味い! 美味い!」
「実は…今日、あまり時間無かったから……前に伊織さんと一緒に行った焼鳥屋さんで焼鳥買って親子丼にしてみたんです」
「だから、鶏肉に味がしっかりついてたのか。なる程な。美味いよ!」
「この唐揚げも、その時買って来ちゃった~。手抜きになって、ごめんね」
「全然手抜きじゃないよ。それに偶には楽をしろよ、お互い仕事してんだし。俺1人の時は、弁当か.惣菜か.カップ麺だったしな。ミキと一緒に生活して格段に食生活が豊かになった。ミキには感謝だ」
手抜きって言ってるが、こうして焼鳥も工夫してるし.煮物だってあるし.健康面を考えて具沢山の味噌汁だって作ってくれてる。
あ~~俺は幸せ者だ‼︎
「伊織さんは何を出しても‘美味しい.美味しい’って食べてくれるから作り甲斐があります。美味しそうに食べてくれる姿見ると、こっちも嬉しくなります」
「俺は幸せ者だ~‼︎」
ついつい心の声が出た。
「俺もです」
幸せに包まれた食事が終わり、先に風呂に入りゆっくりソファでTVを見ていた時に、交代で風呂に入り終えたミキから、綺麗にラッピングされた大きめな箱を目の前に出された。
「はい! 1日早いけど、俺からのクリスマスプレゼントです。本当は、明日渡すべきなんでしょうけど、明日出掛けるのに持って行くの荷物になると思って。今日、渡しちゃいます」
1日早いクリスマスプレゼントだった。
これはこれで思って無かったサプライズになり、俺は喜んだ。
「ありがとう‼︎ 嬉しいよ。早速、開けて良いか?」
「はい! ……気に入って貰えたら嬉しいけど…」
ミキが選んだ物を俺が気に入らないわけがない!と思いつつ、不安そうな顔を見せるミキの前でガサガサ…と箱を開けた。
箱の中には、綺麗に畳まれたコートだった。
「コート?」
「はい」
箱の中から取り出し目の前で広げた。
軽く肌触りが良い‼︎
色も黒に近い紺で何でも合いそうだ。
普段使いにも仕事用にも着られるコートだった。
「良いな‼︎ 形も色も俺の好みだ‼︎」
そろそろ新しいコートが欲しいと思ってた所だった。
今、仕事用に来てるコートも値段もそれなりにしただけあって良い品で何年も着て居た。
イタリア製…か。
結構な値段したんだろうな。
「良かった~♪ 今、伊織さんが着てるコートも凄く良い品だと思ってたけど。気に入ってるとは思ってたんですけど……何年も着てるから……。併用で来て貰えれば……と思って。喜んでくれたなら、良かった~」
俺の事を良く見てると感激した。
それが凄く嬉しかった。
「ありがとう‼︎ 俺もそろそろ新しいのを買おうと思ってた。今のは黒だから、色的にも被って無いし併用で着るよ。ミキ……いつもありがとう」
いつもありがとう……それはプレゼントだけじゃなく、俺の事を考えてくれる事に対しての感謝の意味を込めて言った。
「そんな……俺こそ…いつもありがとうございます」
お互い感謝の言葉を言い合った。
良いな~。
いつまで経っても感謝の心を忘れずに居るって…
俺はこれからもずっとそうしようと決めた。
俺はコートをその場で着て見せた。
着心地も良いし太腿位の丈で丁度良い。
色も一見黒に見えるが、光が当たると紺だと解るのも良い‼︎
さすがミキだ‼︎
抜群のゼンスと俺の好みを把握してる。
「どうだ?」
両ポケットに手を入れ、左右に体を揺らし見せた
「凄く似合ってます‼︎ 伊織さんは背も高いし凄くカッコいい~。モデルみたい‼︎」
「それは言い過ぎだろ?でも、ミキにそう言われると嬉しいよ」
「言い過ぎじゃないです‼︎……これでまた女性社員がキャ~キャ~…騒ぐんでしょうね。カッコ良すぎるのも……問題です」
それを俺に言うか?
自分はどれだけモテると思ってんだ?
仕事用じゃないミキは本当にモデルか.芸能人かと思う程なのにな。
自分の評価が低過ぎて解ってないのも困りものだ
が……鈍感なミキに救われる面もある。
俺は心の中で苦笑した。
「ま、モテない彼氏よりは良いだろう?」
「ん……どうだろう?俺はモデるモテないと言うより、俺だけを愛してくれる人が1番良いな」
「それなら俺が1番適任だ‼︎ 俺よりミキを愛してる奴は、どこにも居ないからな‼︎」
「……自信たっぷり……でも、そう言う所も好き」
プイッと横を向き明後日の程を向きながら話すミキは照れてらしい。
その仕草…可愛い過ぎる‼︎
ったく‼︎ どんだけ俺を惑わせるんだ‼︎
「プレゼント、ありがとう。俺からのプレゼントは明日な?楽しみにしてろよ」
「えっ! 明日のスキー旅行がプレゼントなんじゃ…」
「いや、旅行は旅行‼︎ プレゼントは別‼︎」
「……無理しないで下さい。俺、旅行だけでも充分なのに……」
「今回だけ‼︎ クリスマス位は、金の事は言うなよ」
「……解りました。今回だけですよ。次のクリスマスは、そんなにお金使わないで下さいね」
次のクリスマス……って、ミキも当然のように話す。
それだけ俺達にとって2人で居る事が日常になってるんだと思うと嬉しかった。
俺もミキと同様には思ってるし自信もあるが…いつも少しの不安もあるのも事実だ。
だから、ミキが当然のように言われると、その度に安心する。
「解った‼︎ クリスマス明けから着て行くかな。ありがと。よ~し‼︎ 明日も早いから寝るか?」
「そうですね。あ~~伊織さんとの初めてのスキー楽しみ♪俺も学生以来だから」
「俺も何年も行ってない……骨折だけは止めような」
「心配になってきた~」
「俺も」
くっくっく……
クスクスクス……
明日のスキー旅行が楽しみで仕方ない俺達はそう言って笑った。
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