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第820話
「いお…伊織さん.伊織さん」
俺の名を呼ぶ声が遠くから聞こえる。
誰?
この声はミキか。
肩を揺り動かされ少しずつ覚醒していく。
「伊織さん、起きて」
「ん……ミキ。今、何時?」
寝てた⁉︎
…少し寝た様だが、まだ、後数回は出来るだろう
「10時です。お腹空きません?朝食はどうなってるんでしょう?」
10時?朝食?
そこでハッとしガバッと起きた。
キョロキョロ…辺りを見回し、朝の日差しそして時計の針は午前10時を指してた。
「くそぉ~! やっちまった~‼︎」
「何がやっちまったの?」
頭を抱え後悔してる俺を不思議顔で聞いてきた。
ミキに顔を向け堂々と言い放った。
「昨日は夫夫になった記念日だ。忘れられない夜にしようと思って、一晩中セックスする予定だったんだ! いつ寝た⁉︎ あ~くそぉ~一生の不覚だ‼︎」
丁寧に時間掛けた愛撫と激しいセックスを1回しその後に ‘体を綺麗にするから’と言い含めて浴室に連れて行き、体を洗う流れでそのまま2回目が終わり、割と大きめな風呂に折角と思い背後からミキを抱きしめ風呂に浸かった。
その後に、ベットで暫く休んだらヤロウと横たわりながら少し話してたはず……その後が…俺の記憶が曖昧だ。
ミキの声も途切れ途切れの言葉で欠伸混ざりだった気がする。
俺はミキの話す声を聞きながら……その後の記憶が無い。
「先に、俺が寝た?」
「ん~どうかな~。俺も話してたけど……最後の方は記憶ないから伊織さんがいつ寝たのか?は解らないです」
「ごめん! ミキ。折角の記念日に」
隣に座ってるミキは頭を軽く振り微笑んだ。
「伊織さんが記念日に思い出を…って言う気持ちは良く解ります。凄く素敵な思い出になりました
一晩中シタかったとかは……まあ、どうかな?って気がしますけどね」
「ミキはシタくなかったのか?」
自分の体のあっちこっちについてるキスマークを見て溜息を吐きながら呆れた様に話す。
胸や腹.腕だけじゃなく背中にも頸.太腿にも付いてるんだけどな。
ミキには見えない所にもたくさんな。
俺の愛の証だ。
「そうじゃなくて。俺は充分満ち足りましたよ。それに、そんな事したら帰りの運転は2人共キツイじゃないですか~」
「帰りは、昼まで寝てチェックアウトすれば良いと思ったし、それまでには体力もある程度回復してるだろ?だから、朝食は邪魔されたくないと思って頼んでない。早めにチェックアウトして昼食兼ねてどこかで食っても良いと……」
「んもう!……ホテル予約した時からそのつもりだったんですね?ったく! 伊織さんらしいって言うか.ちょっと呆れます」
「……いや…記念日にしようと……忘れられない日に……」
「それなら充分ですよ。セックスも大事ですけど
……何より2人で初めてのスキーやイルミネーションとかチャペル……そしてプロポーズ全てが素敵な思い出と記念日になりました。いつも俺の事喜ばそうと考えてくれる伊織さんの気持ちが、なにより1番嬉しいです」
そう言って薬指に嵌めた俺が送ったプラチナリングを愛おしそうに撫でてた。
その顔を見ただけで俺も嬉しくなり、知らず知らずに顔が綻んでた。
こう言う些細な事も幸せなんだよなぁ~。
「伊織さん。お昼兼用で良いですから、ちょっと早めにチェックアウトしましょう」
「腹、空いてるなら、何か売店で買って来るか?それともルームサービス頼むか?」
「ううん。折角だし、地元の美味しい物を食べて帰りましょう」
「そうするか?じゃあ、それまでイチャイチャ出来るな?」
「イチャイチャは良いけど…Hはだめですよ?」
「え~! Hはだめか⁉︎ ま、良いか。じゃあ、ここに来て何か美味しい物あるか一緒に調べようぜ」
俺はベットヘットに体を預け大股に開き、ここに座れと手招きした。
サイドボードに置いたスマホを取り、いそいそ…と俺の股の間に入り俺に体を預けてスマホを弄る
俺は背後から抱きしめ肩越しにスマホを覗きに見た。
「やっぱ信州蕎麦かな?」
「だな。野沢菜漬けも良いよな。あっ! これミキ好きそう」
「うわぁ~美味しそう‼︎ 蕎麦クレープだって~。絶対! 食べるぅ~」
「解った.解った。本当に甘いもん好きだな」
「別腹?」
女子か!ってツッコミたくなるが……。
屈託なくにこにこ笑う顔が可愛い過ぎる。
それから色々検索したり写メ見たりとベットの上でだらだら…イチャイチャ…して過ごした。
これもこれで楽しかった。
少し早めにチェックアウトし、検索してた目的地の蕎麦屋まで車を走らせた。
蕎麦屋では既に列を成してたが、そんなに待たずに入る事が出来た。
信州蕎麦と天麩羅を堪能した。
やはり蕎麦は美味かった。
そしてミキが楽しみにしてたクレープ蕎麦を食べに行った。
迷うミキに2つ頼んで交換して食べようと提案すると、パァっと顔が明るくなり嬉しさ全開だ。
買って、車の中で食べた。
もちもち…カリカリ食感で香ばしく普通のクレープより俺はこっちの方が好みだ。
ま、クレープなんて普段は食べないから新鮮だったが、やはり甘い!
苦いコーヒーが必要だな。
隣のミキは嬉しそうに美味しそうに食べてる。
マジ! 可愛い‼︎
車の中と言う事もあり、周りを気にせずに交換して食べたり食べさせ合ったりとこれはこれで良かった。
そして帰りには休憩がてらSAに寄り野沢菜漬けを買い少し見て回った。
夕方には俺達の愛の住処のマンションに着いた。
クリスマスにプロポーズは大成功に終わった。
これからは正式ではないが、俺達の意識の中では夫夫になった。
次の日の日曜日の昼過ぎに、ミキの家族が眠ってるお墓に結婚報告しに行った。
花を飾り手を合わせ心の中で報告した。
‘戸籍上では正式では無いですが、俺達は夫夫になりました。これまでも色々な事がありましたが、この先も2人で寄り添い仲良く暮らしていきますミキを産んでくれてありがとう。必ず、幸せにします。俺にミキを任せて下さい‘
そして2人で手を繋ぎ墓石を見つめた。
俺はミキの前で、そしてここに眠る家族にもう1度誓いの言葉を口にした。
「これからも困難な事や色々あると思うが、俺はミキと離れない‼︎ ずっとこれからも2人寄り添い生きていきます!」
「伊織さん……」
隣のミキは感極まり涙ぐむ。
「泣くな。これから俺達には沢山の幸せが待ってる。俺はミキが側に居てくれるそれだけで幸せなんだ。だから、笑ってくれ」
「俺も伊織さんとずっと一緒が良い‼︎」
そう言って泣笑いした顔を忘れない。
‘良かったね。幸せになるんだよ。ミキを宜しくね’ 空の上から家族でそう言って俺達を見てるだろう
その週末はずっと2人の薬指にはプラチナリングが輝いてた。
普段はネックレスに付けて胸に仕舞う事にし、長い休暇には嵌めようと2人で決めた。
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