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第821話

年末が近くなり、今日で今年も仕事納めだ。 取引先への挨拶.各自の机の上を整頓し、定時で今日は終わる様に朝礼で話してた。 俺は各部署に年末の挨拶と工場関係とアメリカ支社.G&Kにも挨拶の電話をかけ、今日の仕事を終えた。 「課長、香坂。お先に失礼します。良いお年を」 「俺も帰ります。先輩、一緒に帰りましょう。じゃあ、お先に。良いお年を」 「俺ももう少しで帰る。佐藤、あまり羽目外すなよ。じゃあ、2人共、良いお年を」 「田口さん、佐藤さん。今年もお世話になりました。また、来年も宜しくお願いします。良いお年を」 一通り年末の挨拶をし、2人は帰って行った。 それから数分程で、ミキに声を掛けた。 「香坂、そろそろ帰れるか?」 「俺はいつでも」 「じゃあ、帰るか」 「はい」 俺達の部署の電気を消し、まだ残ってた2課と3課の人達に挨拶し会社を出た。 あまり2人で会社を出る事もない俺達にとって、何だか新鮮だった。 そして、その足でおやじの店に向かった。 ガラガラガラ…… 「よ! おやじ」 「ご無沙汰してます。大将」 「久し振りじゃのう、ヨシ君。元気か?」 おいおい! 俺も居るんだって~。 「元気です。今日はすみません。貸切にして貰って」 「久し振りに皆んなが集まるとなって、わしも嬉しいよ」 「大将の料理凄く美味しいから」 ミキにはデレデレ…のおやじだ。 俺を無視し2人で話す……ムカつく。 「おい! おやじ! 俺も居るっつーの!」 「おっ、居たのか?元気だったか?」 「元気だっつーの! ったく!」 「ほれほれ、むくれて無いで。料理運べ」 時間に合わせて作ってくれてた料理をミキと一緒に運んでると真琴君が顔を出した。 「あれ~、2人共早いね」 「マコ~」 「ミキ~」 駆け寄って喜ぶ2人。 おい! 女子高生か! 本当に仲が良い。 テーブルに料理が運ばれ飲み物も揃い忘年会の準備が整った所に、沙織達と龍臣達も顔を出した。 貸切と言う事で、おやじも一緒に俺達の忘年会に参加した。 『今年もお疲れ~。来年も宜しく~」 『乾杯~』 俺の音頭で、それぞれ周りに居た人と乾杯した。 ‘忘年会しよう’と俺が提案した。 仕事納めの日にする事にし、祐一以外で集まる事になった。 ミキと話し、皆んなにも報告しようと言う事になり ‘だったら、忘年会って言う事で集まって、そこで報告しよう’と2人で決め、忘年会と言う名目で皆んなを誘う事にした。 そうと決まったらLINEで連絡し、皆んな喜んで直ぐに了承したが、沙織だけは ‘珍しい~伊織からそんな事言うなんて~’ と、嫌味の1つを貰ったが口では嫌味を言いながらも喜んで参加してくれた。 まあ、大概こう言うイベント事は沙織が言い出しっぺで、俺が渋る事が多いからな。 何か勘繰ってる様な感じはあったな。 「成宮さん。今日は、祐さん来れなくて、ごめんなさい」 ミキの隣りに居た真琴君が俺に声を掛けて来た。 「いや、気にしなくて良い。年末近いし、祐一も店がある事は解って言ったし。祐一には悪いが、皆んなの都合が良い日が今日だったからな。逆に働いてる祐一には申し訳ないが、忘年会って事で今日は俺達だけで楽しもう」 「はい。祐さんも残念がってたけど……」 「マコ、今度は祐さんが都合良い時に集まれば良いんだから。ね?」 「そうだね」 ミキが慰め励ます様に言うと、真琴君も気が軽くなった様だ。 その祐一には忘年会の事を連絡する時に、クリスマスにミキにプロポーズした事や正式では無いが夫夫として、これから生活する事をその時に電話で話した。その事を忘年会と言う名目で集まった時に報告する事も話した。もちろん真琴君にも秘密にするように念を押した。 「そうか。良かったな。やっとか」 口数少なかったが、祐一も電話越しに喜んでくれてるのが声で解った。 一応、今日、来れない祐一には報告済みだ。 ガヤガヤ…ワイワイ…賑やかに話すこの雰囲気でいつ切り出そうかタイミングを計ってた。 久し振りの集まりに、花が咲いてなかなか話すタイミングを失ってたが、俺もそれなりに楽しんでた。 そろそろ終わる雰囲気になった所で ‘今だ!‘ と思い突然立ち上がった。 急に立ちがった俺に驚き皆んなの注目を浴びた。 「俺とミキは晴れて夫夫となりました‼︎ 今、ここで報告させて貰う!」 ミキも立ち上がり皆んなに笑顔を見せた。 皆んなの反応は、キョトンとしてその場はシーンと一瞬静まり返った。 そして口火を切ったのは真琴君だった。 「ミキ、おめでとう♪」 「ありがとう」 「成宮さん、ミキの事宜しくお願いします。2人共幸せになってね。おめでとう」 「ありがとう、真琴君」 やはりミキの1番の親友だな。 それから皆んな口々に話し出した。 「そうか.そうか。めでたい!めでたい! ヨシ君、こんな奴だが宜しく頼むよ」 おやじ~! こんな奴は余計だ! 「ヨシ君を幸せにしなさい。泣かせるんじゃないぞ!」 前回の事もあり、おやじからは諫められた。 それに対して俺は黙って頷いた。 「おめでとうって言うか。今更?」 「龍! そんな事言うもんじゃないよ。こう言う事は、きちんとした方が良いんだよ。大切な事なの! ごめんね。成宮.美樹君、おめでとう」 「優希~。そう言う意味じゃなくって~。俺はもう夫夫として見てたって事!を言いたかったんだよ」 余計な事言って優希さんに怒られてやんの! まあ、龍臣がそう見てた事は嬉しかったし、喜んでくれてるのも解ってる。 それより上が居た。 「やっぱり~何かおかしいと思ってたのよ~。だって~伊織から忘年会しようなんて。いつも誘うと文句絶対言うのに。ま、良いわ。ヨシ君、おめでとう! 伊織! ヨシ君を泣かせたら承知しないわよ!絶対に幸せにしなさいよ!」 文句は良いから、素直に祝えよ! それに俺に対して何か沙織は上から目線なんだよな~。 「沙織さん、そう言う事言わないの! すみません 成宮さん。でも、沙織さんは素直じゃないけど、本当は誰よりも喜んでます。ヨシ君.成宮さん、おめでとうございます」 流石、矢島君だ! 沙織の性格を良く知ってる。 矢島君じゃなきゃ沙織は結婚出来なかったんじゃないか~。 お前こそ、矢島君に感謝しろ! まあ、それぞれの性格もあったが皆んなに祝いの言葉を貰った。 「皆んな、ありがとうございます」 ミキは皆んなに祝って貰い感極まって目に涙を溜めて話す。 こっちは素直過ぎだ。 誰かさんと違って、本当に可愛い性格してる。 「皆んな、ありがとう! 夫夫と言っても仕事の事もあり、戸籍上はまだ養子縁組出ないがプロポーズし受け入れてくれた。優希さんも言ってたが、ずっとミキとの事はきちんとしたいと思ってた。養子縁組は何年か先になるかも知れないが、俺達の意識の中ではこれからは夫夫としてやっていく皆んなにも知ってて貰いたかった」 『おめでとう!』 『お幸せに!』 皆んなから拍手と共に祝いの言葉が飛んだ。 それからは皆んなに色々聞かれた。 どんなシチュエーションで?とか.いつプロポーズしようと決めたの?とか.結婚指輪は?とか.プロポーズの言葉は?とか……質問攻めにあった。 まるで、芸能リポーターみたいだ。 一応答えられるものは答えたが、プロポーズの言葉は内緒にした。 シチュエーションを話すと「キザ!」「ロマンチック」とか色々言われた。 沙織には「こんな嫉妬深いし我儘な性格で苦労するわよ。それでも良いの?ヨシ君」と、余計な事を言ってたが、ミキは「伊織さんが良いです!」と言うとヒューヒュー…と冷やかされる事になった 素直な気持ちを言い冷やかされ、そこで気が付き自分の発言に赤くなり照れてた。 たぶん、沙織はミキがそう言うと見込んで話したんだろう。 場がもっと盛り上がる様に。 性格が良いんだか?悪いんだか? ま、沙織の思わく通り、お陰で場は盛り上がりもう一騒ぎした。 仲間って良いな。 真琴君がしきりにミキに「良いなぁ~」「羨ましいな」と言ってたが、ミキと夫夫になった事を今日来れない祐一に先に電話報告した時に、祝福の言葉と共に「俺もそろそろきちんとしなきゃな」「先、越されたな」と、独り言を呟いてたのを俺は聞き逃さなかった。 ミキにもこの事は言ってないが、真琴君と祐一が夫夫となる日もそう遠くないと俺は勝手に思ってる。 その報告がきた時には、2人をこうやって皆んなで祝福したい! 俺達は皆んなに祝福されて幸せな日になった。

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