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第825話
正月休みが終わり、仕事が始まると年始の挨拶回りやら電話などで慌しい1週間だったが、やっと通常業務と日常が戻り平穏な生活をしていた時だった。
昼休憩で近くの定食屋で昼食を済ませ会社に戻ろうとした時に、俺のスマホからLINE音が鳴った。
ん?ミキか?
スマホを取り出しLINEを見ると沙織からだった。
……嫌な予感がする。
♪*時間がある時に電話して!♪*
はあ~面倒だな。
大体、沙織からこう言う連絡が来る時は碌な事がねーんだよなぁ~。
さっさと済ませるか?
この時間なら、沙織達も昼休みだろうし。
面倒な事言われたら ‘昼休み終わる’ と言って早めに切れば良いし。
俺は定食屋を出て人が少ない場所で電話した。
矢島君の会社の事務兼経理を担当してる沙織も昼休憩だったらしく、直ぐに電話に出た。
そして沙織の話を聞き……俺はそれに乗る事にした。
俺にとっては申し分ない事だった。
碌でもねー事とか思ってたのは……悪かったな。
午後からは気分も上々で仕事がやけに捗った。
その日は1日外回りのミキに早く会いたくなった
ウキウキ…した気持ちでマンションに帰った。
「ただいま~」
「お帰りなさ~い」
リビングに入るとミキは料理の真っ最中だった。
「今日は早かったんですね?まだ、夕飯出来ないから少し休んでて下さい。それともお風呂先に入ります?」
「ん~そうだなぁ~。ビール飲むつもりだから、先に風呂入る」
「珍しいですね」
「偶には良いだろ」
「どうぞ.どうぞ。でも、明日も仕事だから程々にね」
「了解!」
飯が出来るまで風呂に入る事にした。
今日は気分良いし飲みたい気分だったからだ。
風呂から上がるともう夕飯は出来てた。
「あっ!鍋にしたのか?」
「はい。豚肉と白菜の鍋です。厚揚げのチーズサンドもあります。温かいうちに食べましょう。はい、ビール」
「ミキも付き合えよ。1本ぐらいは良いだろ?」
「ん~じゃあ、食べながら飲むとします」
『乾杯』
ブシュッ!
缶ビールのプルトックを開けゴクゴク…飲む。
「ぷぁ~、美味い!」
クスクスクス……
「笑ってないでミキも飲め。おっ!白菜が良い感じにくたくただ。美味そう」
白菜の甘さと豚肉が絶品だった。
ミキも食べ始めた所で話を切り出した。
「今日の昼休みに沙織から電話あってな」
「へぇ~、仕事中に連絡するなんて珍しいですね
何かあったんですか?」
「沙織が皆んなでスキーに行きたいからって連絡してきた。それで俺達が行ったスキー場ならホテルも併設してるし、そこが良いって連絡先教えて欲しいってさ。それと俺達の予定も聞いてきた」
「わぁ~! 皆んなでスキー行けるの! 嬉しい♪でもどうして俺達が行った所が良いの?ホテル併設な場所なら、もっと近くにもあるのに?栃木とかだったら朝早く言って日帰りで帰って来れるのに?」
「良くは解らんが、忘年会の時に俺達の話聞いてそこが良いと思ったんだろ?それに近場ならいつでも行けると思ったんじゃねーの。沙織は1泊するとか言ってた。土曜日に泊まって日曜日に帰る予定にしてるらしい。沙織は ‘それなら皆んな行けるでしょ?’って、スケジュールはほぼ決めてるって感じだった」
「皆んなで1泊⁉︎ 本当に⁉︎ 楽しそう! あっ! でも…祐さんは無理だよね?土曜日なら忙しいもんね。
そうなると……マコが可哀想だし……」
「この厚揚げのチーズサンド美味いな。あっ! その事なら、沙織が話しをつけてその日は祐一も行く事になったらしい。この間の忘年会も祐一は来れなかったし、流石に皆んなが1泊するのに真琴君が可哀想だと思ったんだろ?真琴君の事は祐一なりにきちんと考えてるって事だよ。真琴君も喜んでるってさ。龍臣達も大丈夫だ!って」
「沙織さん、凄いですね。根回しが良いって言うか。マコも良かった~。じゃあ、皆んなでスキーに行けるんですね! 楽しみ♪」
「そうだな」
「何か伊織さん…いつもと違いますね?」
ドキッ!とした。
「何でそう思う?」
「だって~、いつもなら ‘何で、皆んなで行かなきゃなんねーんだよ!’とか ‘俺はミキと2人が良いんだ!’とか文句言うじゃないですか?それなのに今回はやけに素直に喜んでるから」
確かに、いつもの俺なら必ずそう言ってる。
良く俺の事見てるな~。
「俺が何言ったって、沙織は言い出したら聞かねーし。結局は沙織に押し切られるからな。それにミキも言ってたが、もう皆んなに根回し済みだって言うし文句言っても仕方ねーって感じ?それに俺ももう1度行きたかったし」
「確かに、スキーして温泉入って夜はイルミネーション見て……充実出来ましたもんね。だから沙織さんもそのホテルに決めたのかな?」
「そうなんだろ?俺達が良かった.良かったって話したからな」
「やっぱり伊織さんもそう思います?で、いつ行くの?」
「ああ、2/14って言ってたな。ホワイトクリスマスじゃなくホワイトバレンタインとか.バカな事言ってたな。部屋もカップルで泊まるって言ってたからな。ロマンチックなバレンタインにしたいって事じゃねーの。俺はミキと2人で部屋に泊まれるんなら、それで充分だ。俺達がOKなら早く予約するって張り切ってた。勝手にOK出したが大丈夫だよな?」
「特に予定はありませんけど……バレンタインチョコ作ろうかな?って思ってたくらいですけど、沙織さんが予約とか全てやってくれるんですか?何か悪いですね」
「沙織が言い出しっぺなんだから、やらせれば良いさ」
「後で、お礼のLINE入れておきますね」
「それで充分だ」
それからはクリスマスの思い出話になり食卓は賑やかになった。
そう言えば、あれから1ヶ月程経つんだな。
あまりにも変わらない日常に幻想だったんじゃないか?って思う時がある。
それまでも夫夫同然に同棲してたのもあるが…。
そんなに劇的に変わるわけねーか。
でも、普段は胸のネックレスに付けてるプラチナリングを着替えや風呂の時に見ると実感する。
長い休みには薬指に着けると約束してる。
そうすればもっと実感が湧くんだろう。
長い休みとなるとGWか。
先の楽しみでもあるか。
時々、指に嵌るからこそ実感するのかも知れないな。
何年後かには誰の目も気にせずに、ずっと指に嵌めて居るだろう。
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