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第827話

♪! スマホのワン切りで沙織からの合図だ!と解り、別室で既に支度を整えて居た俺はミキの元に向かった。 ス~ハ~.ス~ハ~…… いつになく緊張してる自分を落ち着かせようとドアの前で数回深呼吸した。 ミキ…驚いてるよなぁ~。 それとも……怒ってるか? 少しの不安と共に別室に居るミキの部屋をノックした。 コンッ!コンッ! 「良いわよ♪」 沙織の機嫌の良い声で返事をされ、俺はドアをゆっくり開けた。 俺の目の前の光景に目を見開き驚き、そして目が離せなくなった。 綺麗だ‼︎ 凄く綺麗だ‼︎ いや、美しい‼︎ 本当に実在する人物なのか⁉︎ いや、女神か⁉︎ ミキの居る場所だけが光り輝いて見えた。 ドアノブに手を掛けたまま呆然と立ち尽くす俺に沙織がクスッと笑い話し掛けて来た事で、やっと我に返った。 「何、見惚れてるのよ。さっさとドア閉めて側に来て良く見なさいよ」 沙織に言われて、ふらふら…とミキに吸い寄せられるように近づきミキの目の前に立ち尽くす。 「綺麗でしょ⁉︎ 我ながら渾身の出来よ‼︎ んもう‼︎ 最高‼︎ 早く、皆んなにも見せてあげたいわ♪」 自画自賛でうっとりミキを見て語る沙織だ。 「綺麗だ」 もっと言葉を掛けたかったが、余りに美しいミキを目の前にありきたりな言葉しか出なかった。 「……ありがと……伊織さんも凄く…素敵です」 俺の白いタキシード姿を褒めてくれ、そして恥ずかしいのか?小さな声で話すミキと見つめ合った 「プランナーの人が呼びに来るまで少し時間あるから、2人でどうぞ。さてと…私も会場に向かうわ」 ミキに目を奪われて沙織の事は眼中に無かったが沙織の格好を良く見ると、もう既に青いパーティドレスに着替えドレスアップしてた。 男と知られないように、沙織自らミキの支度をしてくれた気遣いと沙織の趣味擬きを兼ねてだと思うが、自分の支度とミキの準備とで……大変だっただろうな。 「沙織、ありがとう」 「良いの.良いの。私も充分楽しめたしね。でも、もうこんな機会ないと思うと残念だわ! あ~自分でやっておいて何だけど…凄く良いわ~」 ミキの前髪を少し直しながらうっとり見つめながら話し、そして少しの間俺達を2人きりにする為に沙織は部屋を出て行った。 俺は正面に居るミキの左手を取り、薬指に付けてるプラチナリングを撫で手を繋いだ。 本来は長い休暇の時にしか嵌め無い事になってたが「結婚指輪を皆んなに見せびらかしたいから」と我儘を言い、昨日の夜から2人共着けて居た。 手を握ったまま一歩下り、ミキの姿を頭の天辺から足元までマジマジ…と見つめた。 髪は上手くアレンジし一纏めにしたシニヨンヘアにはティアラが輝き、前髪はサイドに流し眉も綺麗に描かれアイメイク.チーク.そして赤い口紅が色っぽく、元々綺麗な顔が化粧を施し更に美しい。 ドレスは胸元は大きく開き肩から腕に掛けてレースの7分丈で、Aラインのドレスには刺繍やレース.ビーズで華やかに施された美しい純白のドレスに身を包まれ、そして足元からも白いヒールの爪先が見えてた。 沙織が選んだウェディングドレスは上品でいて華やかで、ミキにとても似合ってた。 まさにプリンセス…いや、女神降臨って感じだ‼︎ 「とても綺麗だ」 俺がマジマジ…と見てた時には照れ臭そうな恥じらいの仕草をして居たが、今は少し口を尖らせ拗ねてる表情に変わった。 その姿もまた愛らしかった。 「ん?どうした?凄く似合ってるぞ」 「……伊織さん……この事知ってたんですか?」 あ~そう言う事か。 自分だけ知らなかった事に拗ねてるらしい。 その気持ちも解るが……。 「ごめん、知ってた。でも、言い訳をさせて貰うなら、沙織から俺の所に連絡きた時には、既に皆んなに根回しが済んでたし決定事項で拒否権は無かった。ミキに結婚式の事を話すと ‘嫌だ!’ と言われ兼ねないからって。スキー旅行って思わせて、皆んなからのサプライズをしたかったようだ。御祝儀無しでホテル代.結婚費用は皆んなからの結婚祝いとしての俺達へのプレゼントらしい。1人だけ仲間外れにされたようで拗ねる気持ちも解るが皆んなミキに喜んで欲しくって思い出になれば…と企画したんだ。ミキなら皆んなのそう言う気持ち解るだろ?折角、皆んながミキに喜んで貰おうとサプライズしたんだ。気持ち良く受け取ろう」 俺がここまでの経緯を簡単に説明し、皆んなの俺達を祝う気持ちを力説した。 「……ごめんなさい。自分だけ知らなかった事が……。でも、伊織さんの言う通りですね。こんなにも皆んなが俺達を祝ってくれる気持ちは凄く有難いです。ウェディングドレスじゃなくタキシードでも良かったんじゃないか?とは思いますが 沙織さんが発案なら……こうなるのは必然でしょうし……男の俺がウェディングドレス着る事は一生無い事なのに……これも良い思い出と受け止めます」 ミキも皆んなの気持ちが解ったんだろう。 開き直りとも取れるが、良い方向に考えてくれた 俺は、ミキならきっと解ってくれると思ってた。 「俺も自分の人生で結婚式なんて出来るとは思っても居なかった。だから、沙織から聞かされた時には、ミキと結婚式が出来る! 花嫁姿を見れる!と正直凄く嬉しかった。そして皆んなの気持ちもな」 「うん‼︎ そうだね。ここまでしてくれた事に感謝しなきゃね。拗ねてる場合じゃなかった」 笑顔を見せた。 「それにしても凄く綺麗だ! ん?これはどうなってる?」 胸が少し膨らみをもってた、その胸をツンツン…と人差し指で突っつき聞いてみた。 笑顔だった顔が一瞬で嫌そうな顔に変わった。 今日はコロコロ…と良く表情が変わるな。 小さな膨らみのある胸を押さえ少し照れながら上目遣いで話す。 「……チュートップブラ……パットとタオル…です」 そんな可愛い顔でブラとか言うなよ~。 上目遣いとか…ヤバッ! めっちゃ可愛い~‼︎ 心ではそう思うが、そんな事を言ったらミキに拗ねられたら困ると思い、顔には出さずに話した。 「なる程な。詰め物って事か。でも全然解んねーな」 「嫌だったけど…沙織さんがそうしないとパカパカ…してみっともない!って言い張って…それで仕方なく……。やっぱり偽物って解ります?男だと解りますか?」 沙織に言い負かされたってわけか。 まあ、沙織相手ではミキには太刀打ち出来るわけねーしな。 「心配は要らない! どこからどう見ても女性にしか見えない‼︎ 胸だって偽物とか言われても全然解らないぞ」 小さな膨らみは貧乳の女性って所だな。 Aカップ…もう少しあるか。 「でも、皆んなには男だと解ってるし、胸の事も ……あ~恥ずかしい」 「そんなの気にしてたら埒が明かないぞ。大体、皆んなミキのウェディングドレス姿を見てるだろうし、ピンポイントで胸だけ見る奴居ねーよ。大丈夫‼︎ 自信持て‼︎ 沙織が太鼓判押したんだから‼︎」 「そうですよね‼︎ 沙織さんが大丈夫って言うなら…」 俺より沙織の言ってる事を信じるのか? まあ、この場合は仕方ねーか。 コンッコンッ… 「失礼します。牧師様もいらっしゃいました。そろそろお時間ですので…皆さんお待ちです。ご主人様は先にチャペルの方へ行って待ってて下さい」 プランナーの人に言われ、俺は「先に行って待ってる」とミキに言い残し部屋を出た。 ご主人様……か。 デレデレ…ニマニマ…と締まらない顔をしてた。 部屋の外にはもう1人のプランナーが待って居た事で、キリッと顔を引き締めた。 「本日は、おめでとうございます。チャペルにご案内致します」 「ありがとう」 全く知らない人からの祝福の言葉に ‘今日、結婚式を挙げるんだな’と実感し、またデレデレ…顔になってたと思う。 パタンッ。 伊織さんが出て行って、プランナーさんが俺の姿を見て話し出した。 「本日は、おめでとうございます。とても綺麗でいらっしゃいます。本来は、私共プランナーがお支度をする所なんですが、ご友人の方が ‘大切な友達の晴れの日だから、どうしても自分で支度をしてあげたいの!’ ‘私じゃなきゃだめなの’と話されて…ドレスもヒールもティアラも全て1人でご用意されて。これまで数多くの結婚式をプロデュースして参りましたが、初めての事でした」 にこにこ笑って話してるけど……。 「すみません! ご迷惑お掛けしました」 「いいえ.いいえ。謝る事はありませんよ。素敵なご友人をお持ちですね。皆さんが祝福したい!って言う気持ちが伝わりました」 ドレスの裾や髪を直し一通り見て、白薔薇のブーケを手渡された。 「可愛い♪」 「アフターブーケにプラザードフラワーにして、お送りします」 「うわぁ~嬉しい♪」 「素敵な思い出になりますよ」 「はい」 「さて、皆さん、お持ちでしょうからチャペルにご案内致します」 「お願いします」 「とても素敵です。今日一日が、お2人にとって素敵な日になりますよ」 プランナーさんの話を聞いて、沙織さんが尽力を尽くしてくれた事.皆んなが俺達の為にサプライズしてくれた事……素直に嬉しいと思えた。 胸の中がほっこりと温かく感じた。 ありがとう…皆んな‼︎

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