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第829話

写真撮影会が済み、俺達はホテルに戻り、俺とミキは着替える為にもう1度控室に戻った。 他の奴らはその間ラウンジでお茶をしながら食事会までの間待つ事にしたようだ。 沙織だけは、ミキのお手伝いをすると言い、ミキと一緒に控え室に向かった。 ウェディングドレスも靴もティアラも沙織の持ち込みの為、その片付けもあるんだろう。 俺は皆んなに合わせて、自分で持って来てたスーツに着替えラウンジに行き合流した。 30分程で、ホテルマンが「お食事会のご用意ができました。会場に、どうぞお越し下さいませ」と言われ、皆んなでぞろぞろ向かった。 まだ、ミキは手間取ってるのか?この時にはラウンジに現れなかった。 ま、俺よりは着替えたり化粧落としたりと時間がかかるだろうな。 食事会となる個室には、ミキと沙織以外は席に着き2人を待ってた。 「着替えに時間掛かってるんだね」 「それにしても綺麗だった。あれじゃ、そんじょそこらの女じゃ太刀打ち出来ないな」 「誰も女性って疑いませんよ」 「モデルかと思ったよ」 「今までミキの女装姿見てたけど…1番綺麗だった」 口々に、ここに居ないミキのウェディングドレス姿の感想を述べてる。 真琴君なんかうっとりして話す。 俺だって控室で見た時は凄く驚いた。 元々綺麗な容姿だったが、やはりウェディングドレスを着ると華やかさの中に可憐さもあり目を奪われて離せなくなってた。 それ程、綺麗で想像以上だった。 ミキのあの姿を見れただけで、このサプライズ計画をしてくれた沙織に感謝だ。 皆んなが揃って10分程で個室のドアが開いた。 「お待たせ~♪」 機嫌良く入って来たのは沙織だった。 にこにこと蔓延の笑みで……何だか怖い。 「時間掛かったな」 「ん~まあね」 「で、ミキは?」 「ちょっと待ってて」 そう言って入口の所に隠れて居たミキの腕を引っ張り背中を押して部屋に入れドアを閉めた。 さっきまでガヤガヤ…してた部屋の中は一瞬でシーンと静まり返り、皆んなの目が部屋に入って来たミキに注がれる。 その姿に、俺は思わず生唾をゴクッと飲んだ。 俺の他にも生唾を飲む音が聞こえ、他に「ほぉ~」とうっとりした声にならない息が漏れた音が聞こえた。 注目されたミキは徐々に不安そうな顔になり、沙織に縋り付く目をした。 「……沙織さん」 「やぁね~皆んな。どうしたの?綺麗過ぎて声も出ないの?」 ミキの不安そうな顔にハッとし、俺が最初に我に返り沙織に聞いた。 「ど.どうしたんだ?」 部屋に入って来たミキの姿は多少のメーク直しはしたのかも知れないが、髪や化粧はウェディングドレスの時と変わらないが、身に纏ってるドレスと靴が変わってた。 純白のウェディングドレスからワインレッドの胸元が大きく開け綺麗な鎖骨が見え、7分袖からは腕も透けて見えるシフォンロングドレスを見に纏って居た。 華やかさと色っぽさが際立ち大人の女性と言う雰囲気だ。 これはこれで凄く似合ってた。 ウェディングドレスの話は聞いてたが……この事は俺も聞いて無かった…にこにこしてる矢島君以外の皆んなの反応を見れば誰も聞いてなかったようだ。 沙織の単独のサプライズらしいと解った。 「これ?結婚式でお色直しはするでしょう?ウェディングドレス姿とは、また違って綺麗でしょ! もう今日は最高の日ね!」 お前がな! そりゃ~沙織は着せ替え人形さながら堂々とやれるんだから、今日一日楽しかっただろうし最高の日だっただろうな。 ま、俺にとっては有難いが……。 不安そうにしてるミキに安心させるように声を掛けた。 「ミキ、凄く綺麗だ! 沙織も言ってたがウェディングドレス姿も良かったが、こっちも綺麗だ!」 「……伊織さん……この事は知ってたの?」 「いや! この事は俺は何も聞いてない! だから、ミキが入って来た時には驚いた。直ぐに声を掛けられなくて済まなかった」 「そうなんだ……俺、てっきり。ウェディングドレスを着替えようとしてたら、沙織さんが食事会はこれを着なさい!って……何度も断ったんだけど沙織さんが叔母さんからだって言われて……叔母さんのお祝いする気持ちを踏み躙らないで!って強く言われて……結局、押し切られて」 叔母さん?龍臣の……? 何で、叔母さんの話がここに出てくるんだ? 「どう言う事だ?全然聞いてなかったが……叔母さんがどうして?」 沙織に聞くのが1番早いと思い沙織に聞いた。 「叔母様が ‘美樹ちゃんと伊織君に何かお祝いをあげたい’って言うから、2人でお買物に出掛けて色々回って ‘やはり結婚式には、お色直しが必要ね’って話になって~。今度は、ドレス選びで色々回ったわ~。これは叔母様と叔父様からの2人へのお祝いよ~。因みに、結婚式場の費用も負担してくれてるからね~。全部持つ!とか言うから、それじゃ私達からのお祝いする事が無くなるわ!って言って、平等に費用は出して貰ったのよ~。叔母様ってセンス良いし一緒にお買物してても楽しかったわ~」 余程気が合ったらしいな。 この2人がタックを組んだら誰も太刀打ち出来ない! 最強のコンビだ! 良いんだか悪いんだか……厄介だな。 龍臣と優希さんの方をチラッと見ると、龍臣は知らんぷりで優希さんは申し訳無さそうな顔をしてた。 沙織の話を聞いて納得した皆んなもやっと話出した。 「ミキ~、凄く綺麗だよ~。凄く似合ってる」 真琴君の欲目だけじゃなく俺もそう思う。 「やはり元が良いからだな。似合ってるぞ」 祐一、そこは素直に綺麗だ!って言えよ。 「さっきのウェディングドレスも綺麗で似合ってたけど、こっちも綺麗で華やかだよ」 そうだよな、優希さん。 「確かにな。ウェディングドレスの時はなんて言うか.神聖な感じで触れてはいけない感じだったけどな。そのドレス着てるとまた違って色っぽいな」 皆んなの意見を黙って聞いてた俺は龍臣の意見には黙って居られなかった。 「お前はミキを見るな! 色っぽいとか変な目で見るな!」 「龍!」 優希さんに睨まれて小さくなってた。 バカめ! 1番まともだと思ってた矢島君が最後に天然な事を言った。 「海堂さんの言う事も解りますよ~。こんな姿見たら、沙織さん一筋の俺でもグラっときちゃいます」 「おい! 矢島君でも聞き捨てならない事を聞いた! 沙織一筋と言いながら、そんな直ぐに気持ちが揺れるとはな‼︎ この先、沙織も心配だな‼︎」 「やぁね~、大ちゃんがそんな事するわけないでしょ?ね?大ちゃん」 少し威圧的に矢島君に言い放つ。 「すみません、沙織さん。変な意味じゃなく芸能人とかモデルさんみたいだなって。手の届かない人への憧れとか理想とかそう言う事です」 訳の解らない事を口走ってる矢島君はパニクってるようだ。 こっちも尻に敷かれてるな。 「ふふふ…可愛いわね。大ちゃんが私一筋なのは知ってるから、大丈夫よ」 「俺はずっと沙織さん一筋です!」 他でやってくれ! 「ミキ、叔母さんと叔父さんの気持ちだ。色々思う所はあるだろうが、俺達を祝ってくれてるんだからな」 「それは解ってます……1度ならずも2度も……。 変じゃない?」 「いや、凄く綺麗だ! ウェディングドレス姿も凄く綺麗だったが、こっちもなかなか似合ってる! さっきもだが、今もミキから目が離せない! でも 1番好きなのはミキの優しい心と性格だ‼︎ それはミキがどんな格好してても変わらない‼︎ 外見だけじゃなく、ミキ自身.中身も綺麗な心の持ち主だからな」 目の前のミキしか見えず力説する俺を周りでは、ヒューヒュー.キザ!とか揶揄うがスルーだ。 ミキには悪いが、思いがけないサプライズプレゼントで俺の方は喜んで居た。 叔母さん、ナイス‼︎ 俺は今日2度美味しい思いをした。 後で、何で沙織と叔母さんが知り合う事になったか?龍臣にこっそり聞くと、龍臣と優希さんが実家に帰った時に、俺とミキの結婚式を皆んなでお祝いでサプライズすると言う話をしたらしい。 その時に、叔母さんが ‘じゃあ、自分もお祝いしたい! 娘を嫁に出すんだから、何かしてあげたい!’ と言ったようだ。 で、優希さんに買物に付き合って一緒に選んで欲しいと言われたらしいが、前に女装して一緒に買物に付き合わされた苦い経験がある優希さんは今回もピンッ!ときて、また女装させられると思い ‘行きたいのは山々なんですけど…仕事が忙しいので時間が……。それなら、この企画をした沙織さんと一緒に行ったらどうか?’と回避したらしい。 それで優希さんが2人の仲をとり連絡取れるようにしたらしい。 買物に行って2人は意気投合し、今ではLINEのやり取りをしてるらしいと話してくれた。 はあ~会わせてはいけない2人を会わせたもんだ!

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