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第830話
「あっ!そうそう、叔母様に写メ送る約束してたのよ~。そこに2人で並んで」
俺達は部屋の壁際に並ばされた。
「ミキ、叔母さん達も俺達を祝福してくれてるんだ。色々思う事はあるだろうけど、その気持ちは有難く喜んでやろう。笑って写真撮らないと叔母さんも気にするぞ。な?」
「……祝福してくれる気持ちは嬉しいです。ただ俺だけ皆んなの見せ物になってる気がして……
そうですよね…叔母さんも気にしますよね。解りました。逆に、もう開き直ります」
本当にこう言う時は潔い。
「そうこなくっちゃ!」
俺とミキは互いの腰に手を回し体をくっつけてラブラブ写真を撮って貰った。
真琴君や優希さんもシャッターチャンスだとスマホを向けカチャカチャ…俺達の写真を撮ってた。
周りからは冷やかされたが…今更だ!
逆に俺は見せつけるようにし写真を撮って貰った
数枚撮って満足した沙織は矢島君の隣の席に座りスマホをカチャカチャ…操作してた。
俺達も席に座った。
直ぐに沙織のLINEが鳴った。
「叔母様からだわ。‘凄く綺麗ね。やはりこのドレスにして良かったわ~。ウェディングドレスも素敵ね~。実際に見れなかったのは残念だけど…沙織ちゃん、ありがと。皆んなと楽しんで。それと伊織君と美樹ちゃんにおめでとう!って伝言お願いね。また、一緒にお出掛けしましょうね。今度は優希ちゃんと美樹ちゃんも一緒にね’ だって~」
沙織が読み上げた叔母さんのLINEにミキと優希さんは嫌そうな顔をして見せた。
だろうな、この2人と出掛けるなら絶対に女装だろうからな。
少し可哀想な気もするが見てみたい気もする。
今度は優希さんのLINEが鳴った。
「うわぁ~お義母さんからだ」
「母さん?何だって?」
「えっと……‘美樹ちゃんのドレス姿素敵だったわ
今度は優希ちゃんにも買ってあげるからね。今度は沙織ちゃんと美樹ちゃんと4人でお出掛けしましょう。楽しみだわ~’ だって~。あ~絶対に女装させられる~。夏に浴衣の着付け頼んだのがいけなかった~。あれから味を占めて……あの後に、もう1回女装させられて一緒に出掛けんだよ~。それからは何とか断ってるんだけど……はあ~断り難い!」
「まあ.まあ。母さんも悪気があるわけじゃないんだから」
「悪気がないのが解るから困ってんじゃん」
龍臣はそれ以上は何も言わなくなった。
「あら、良いじゃない。叔母様ったら面白いし、お金に糸目はつけないし話も解るし一緒に居て楽しいわよ。ね、ヨシ君」
「……俺……マコも一緒なら」
自分には関係ない話だと黙って聞いてたが、急に自分に振られた真琴君は焦って居た。
「ミキ! 僕は龍臣さんのお母さんとは面識も無いし関係無いよね?」
「マコ! 俺達、親友だよね?」
焦る真琴君を縋る目で見つめ話すミキから親友と言う言葉を言われると真琴君は弱いらしい。
困ってる真琴君に追い討ちをかける沙織。
「いやあねー。マコちゃんも、もちろん一緒よ~面識無くても叔母様なら直ぐに打ち解けるから心配しないで」
「………困る」
「マコ!」
「マコちゃん!」
1人でも多く犠牲者を……ミキと優希さんは必死だった。
蚊帳の外に居た俺達は笑いを堪えるのが大変だった、龍臣だけは自分の親が原因だと苦笑してた。
「解ったよ……1回だけで良いんでしょ?」
ミキに縋るような目で懇願されては、ミキには甘い真琴君は渋々了承するしかないらしい。
「やっぱり親友だね」
「マコちゃんは偉いね」
犠牲者が増えて、少しでも自分への目を無くそうと真琴君を煽てる。
必死だなぁ~。
ここで話しても実際には実現するかも怪しい話だ
しな。
沙織が1人で盛り上がってるだけだし。
ま、そこはミキも優希さんも解ってるだろうけど
「そろそろ食事会しないか?」
祐一が話は終わりと話題を変えてきた。
「そうだな。その前に1つだけ皆んなに頼みがある」
「何だ?」
「また、禄でもねー事だろ」
「伊織さん?」
ミキも俺が何を頼むのか?は知らない…言ってないからな。
俺は立ち上がり、胸ポケットから1枚の紙を取り出し広げて見せた。
『婚姻届⁉︎』
龍臣以外は皆んな驚いてた、もちろんミキもだ。
「ああ、婚姻届出す事は出来ないが結婚式も挙げたし、気持ちの上でも書いて置こうと思ってな。それで俺とミキの保証人欄には皆んなの名前を書いて欲しい。俺達が結婚し夫夫になったと言う証と立ち会い人と言う事で頼む!」
「そう言う事ならOKよ。婚姻届書くとこれから夫婦になるのねって実感するのよね~」
「喜んで書きます」
沙織と矢島君は快諾してくれた。
「ふ~ん、良いんじゃねー」
「もちろん、喜んで僕も書くよ」
祐一も真琴君も喜んで居てくれた。
「私ももちろん書かせて貰うよ」
「了解!」
優希さんも笑顔で答えてくれたが、龍臣だけはニヤニヤ…してた。
実は、だいぶ昔だが龍臣が俺達に ‘優希と夫夫になる事にした。親父に養子縁組して貰うが実質は俺と夫夫になる。で、やはり婚姻届だけは書く事にした。役所にも出せないし誰にも認めて貰えないかも知らないが、俺達だけが解ってれば良いしな。婚姻届書く事によって実感も湧くと思うし、今の気持ちを忘れないようにと思ってな。俺達だけの夫夫としての証だ’ と言ってた事を思い出し俺はこの旅行前に役所に婚姻届を取りに行った。
龍臣に話された時には俺も若かったし、まさか自分が夫夫になっても良い.生涯を共にする相手が出来るとは思わずに居たから、その時は ‘キザだな~’ とか ‘そんなもんかねー’としか思わなかったが…
…今は、その時の龍臣の気持ちが凄く解る!
正式な夫夫にはなれない俺達にとっては、何でも良いから1つでも多く夫夫としての証が欲しい!
たぶん龍臣は ‘俺の真似したな?2番煎じが~’ と思ってるんだろうな。
龍臣のニヤニヤ…顔で解る。
ま、何と思われようが気にしない。
「じゃあ、皆んな頼む! 俺の欄には祐一.龍臣.矢島君、ミキの欄には真琴君.優希さん.沙織で書いてくれ。じゃあ、俺達から先に書こう」
俺は座りテーブルの上に婚姻届を置いてペンを取り出し書き始めようとした。
緊張する~‼︎
住所と名前を書くだけだが……手が震えて字が乱れそうだ。
俺は深呼吸して落ち着けてから一文字一文字綺麗に心を込めて書いた。
そして隣で俺の書く様子を見てたミキの前に婚姻届とペンを渡した。
「わぁ~緊張する~。手が震えちゃうよ」
「俺もだった。時間掛けても良いから」
「うん!」
ミキも深呼吸し書き始め、やはり一文字一文字心を込めてゆっくり書いて居た。
「緊張した~。婚姻届なんか書く事ないと思ってたから緊張した~」
そして隣に居た真琴君と祐一に渡し、次に龍臣達.そして沙織達と書き終わり、俺の手元に戻ってきた。
俺とミキは皆んなの署名された婚姻届をマジマジ
…と見て感慨深く込み上げてくるものがあった。
「俺達は幸せ者だな」
それだけ言うとミキにも気持ちが通じたらしい、いや、ミキもそう思ってたんだろう。
「うん‼︎」
嬉しいさで涙目になってたが、笑顔を見せ返事をくれた。
俺はそんなミキの頭をぽんぽん…した。
周りの皆んなは微笑ましいと笑顔で俺達を見守ってくれてた。
俺は立ち上がり皆んなに向き直り、婚姻届を見せた。
「俺達は夫夫になった。ここに居る皆んなが証人だ。これからも俺達を温かく見守ってくれ。迷惑も掛かるかも知れないが宜しく頼む! 今日は本当にありがとう!」
ミキも立ち上がり「ありがとうございます。これからも末永く宜しくお願いします」と言って2人で頭を下げた。
パチパチパチ…パチパチパチパチ……
笑顔と拍手で俺達を祝ってくれた。
チャペルでの結婚証明書とこの婚姻届は額に入れチャペル前で撮った皆んなとの集合写真.俺達の結婚式写真と共に俺達の寝室に飾られる事になった
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