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第831話
そしてやっと食事会が始まった。
ここでも沙織が仕切り乾杯の音頭をとった。
「それでは皆んな~グラス持った~。伊織とヨシ君の夫夫としての門出を祝って! 乾杯‼︎」
『乾杯‼︎』
カチンッ.カチンッ…カチンッ……と、あっちこっちでグラスを合わせる音が聞こえる。
俺もミキとグラスを合わせた。
「これからも宜しくな」
「こちらこそ!」
カチンッ!
「おめでとう♪」「幸せになれよ~」「お似合いです」「おめでとう♪」「伊織が嫌になったら、いつでも言ってくれ」「浮気すんなよ~」「ミキに逃げられるなよ~」
祝いの言葉の中にどさくさに紛れて、碌でも無い事を言う輩が2名程居た。
龍臣と祐一を軽く睨む。
「お~怖~! 優希、図星刺されて睨んでるんですけど~」
「龍! ‘伊織が嫌になったら、いつでも言ってくれ‘って、どう言う事?何?成宮から美樹君を貰い受けるって事かな~?それなら私が可哀想な成宮を慰めてあげるけどね」
平然と話す優希さん…おっかね~。
ばかが‼︎
調子乗ってるからだ……ざま~みろ!
「ち.違うって。そう言う意味じゃなく相談に乗るって言う事。もちろん優希と一緒に」
「ふ~ん……ま、そう言う事にしておこうか。今日は2人のお祝いの日だからね」
「そうそう、お祝いの日だからな。楽しくやろうぜ」
こっちは一件落着か。
で、あっちでも何か言われてるな。
「祐さん、浮気とか.逃げられるとか.縁起でもない事言わないの! 成宮さんやミキに失礼でしょ!」
「そんなつもりじゃ……。いや、いつものノリで
……。伊織だって冗談だ!って解ってるって。そう怒るなよ~マコ」
「マコ、祐さんが軽い冗談で言ってるって解ってるから気にしてないよ。ありがと。だから…喧嘩しないでね」
「ミキがそう言うなら」
ミキが真琴君を諭し一件落着か?と思ったら、珍しく祐一が拗ねた。
「マコは俺よりミキの言う事は聞くんだよな~。俺、ちょっと寂しいかも」
「そんなんじゃないよ~。ミキも大切だけど、祐さんも同じ位大切なんだよ」
「本当か?」
「うん!」
ミキの仲裁で何とかこっちもなりそうだ。
ま、祐一は何とか話を逸らしてたがな。
「まあ.まあ。それよりお腹空いたわ~、食べましょう♪」
沙織の一言でその場の空気が変わった。
「俺も腹減ってた~。これ美味そう」
「ん、これね。はい、大ちゃん」
'あ~ん’ と口を開け、沙織が肉を口に入れてやってる。
沙織が矢島君とイチャイチャ…してる姿は……何だか見てられなかった。
皆んなも腹が空いてたらしく、料理に舌鼓を打ちワインを飲みワイワイ…ガヤガヤ…その中で、突然、龍臣がニヤニヤ…して話し出した。
「なあ、何で誓いのキスの時にデコにしたんだ?
伊織ならぜってーこれ見よがしに、なげーキスするか?絶対にベロチュウすると思ったのによ~」
「俺もそう思った。伊織の性格ならな」
龍臣と祐一は長い付き合いで俺の性格を読んで、そう思ったらしいが……まだまだ俺の事解ってねーな。
「そうかな?成宮さんは皆んなの前ではしないと僕はそう思ったけど?」
おっ! 真琴君の方が解ってるじゃん!
「はっ?マコ、どう言う事だ?」
祐一が真琴君に問いかけたが、真琴君が話す前に俺から言った。
「ばっかじゃねーの! 俺がミキのキス顔をお前らに見せるわけねーじゃん!」
そう言い切ると、龍臣と祐一は納得した顔をした
「なる程な。そっちの線もあったか」
「嫉妬深いって言うか.狭量な奴だな」
「ふん! 何とでも言え! ミキに関しては、俺は狭量で構わない!」
「伊織さん!」
ミキに嗜められたが、俺は構わず思った事を話す
「祐一も同じ立場なら、絶対に俺と同じ事をしたはず」
「……確かに……マコのキス顔は見せたくねーな」
「だろ?祐一は解ってくれると思った。龍臣は、これ見よがしに優希さんとキスして自分の者だ!って主張するタイプだよなぁ~。俺も似た性格だけど、恋人に対してはちょっと違うな」
「俺の者を主張して何が悪い!」
「はい.はい。この話はこれで終わり~。それより凄く美樹君のウェディングドレス似合ってたね?
絶対、知らない人は男だって気が付かなかったよ」
「でしょ.でしょ‼︎ もう! 私の最高傑作‼︎ ウェディング雑誌のモデルで出ててもおかしくないわ。あっ、でも~それじゃ、他のモデルが可哀想だわね」
皆んなこの沙織の話には納得して黙って頷いてた
それからはミキのウェディングドレスの話や過去の笑い話.優希さんが居る為から俺達の高校の時の話……笑いあり言い合いありで面白ろ可笑しく過ごした。
沙織と矢島君が率先してスマホで写真をたくさん撮ってくれ、賑やかな楽しい時間を写真に収めてくれた。
食べて飲んで楽しかった食事会も終わり、名残惜しい気持ちとまだ時間的に早かった事もあり、最上階にあるbarで少しだけ飲み直そうと言う事になった。
程良く心地良い気分のまま8人で移動した。
barの入口で、ボーイに人数を言い席の空きを聞く沙織と矢島君。
「窓際のボックス席空いてるって~」
『ラッキー♪』
ボーイが席まで案内してくれる事になり、沙織達.龍臣達.俺と祐一.最後に真琴君とミキでぞろぞろと店内をボーイの後につき歩く。
沙織を見て少しざわつく……まあ、それなりには綺麗だからな。
それに気が付いた矢島君が前を歩く沙織に並び腰に手を当てエスコートした。
へえ~、矢島君でもそんな事するんだ。
温和で気の良い優しい矢島君でも牽制するだな。
面白いもん見たな。
後で、沙織を揶揄う良い材料が出来た。
そして俺達の背後で真琴君とミキが話をしなが歩いて居た。
沙織の時よりざわざわ…し、店内でひそひそ話する声.ミキの姿を目で追う者。
‘凄え~な’ ‘モデルじゃねー’ ‘あんな良い女見たことねー’……etc
薄暗い店内に流れる曲の中で、そんな声を耳にした。
言われてるミキ本人は真琴君との会話に夢中で周りのざわめきや話し声には気が付いてないらしい
隣に居る真琴君は流石に気が付いてるようだが…
「こちらです」
ボーイの案内で窓際のボックス席に着いた。
口々にボーイに礼を言いながら、目の前を通りソファに座った。
ミキもボーイに「ありがと」と言って席に着こうとした時だった。
ミキの姿を見たボーイは一瞬息を飲んだのが、俺には解った。
まあ、その反応は解るが……仕事しろ.仕事!
俺の隣に座ったミキの腰を引き寄せ、わざと俺の者だ!と主張した。
そこでハッとなったボーイはやっと言葉にした。
「お飲み物は?」
「じゃあ、俺はバーボンで」
「俺も」「俺も」
俺と祐一.龍臣はバーボンで、後はグラスワインを注文し軽いつまみも注文し、ボーイは去って行った。
龍臣が目敏く俺がミキを引き寄せた所を見てたらしく揶揄う。
「俺の事言えねーじゃん。主張しまくり~」
「ふん! 何とでも言え!」
「同類♪同類♪」
飲み過ぎか?いや、こいつは豪酒だしな。
楽しくって浮かれてやがんな!
まあ、その気持ちも解る。
窓から見下ろしイルミネーションを見てはしゃぐ真琴君や沙織.優希さんと、それを目を細めて愛おしそうに見る祐一と矢島君.龍臣。
俺達の為に、こんな素晴らしい企画をしてくれた仲間。
真琴君がミキの親友じゃなかったら…祐一と龍臣と俺が友達(ダチ)じゃなかったら…沙織と矢島君が付き合ってなかったら……俺と沙織が幼馴染でなかったら……優希さんが俺達の担任じゃなかったら……今、こんな風にしてなかった。
そう思うと不思議な縁だ。
何かあれば相談に乗り協力してくれ、頼もしい奴らだ。
会うと下らない事を話したり言い合いしたり揶揄ったり…笑ったり.怒ったり.叱ったり.泣いたり…
自分の事のように一緒に考えてくれる。
長い付き合いになる仲間だと思った俺の直感は当たってたな。
仲間って良いな。
「俺、幸せだな」
目の前で賑やかに笑い合う仲間を見て、心の声が口から出てた。
「俺もです」
隣のミキも皆んなを見て微笑みそう話した。
俺もミキも仲間がしてくれたこの日を生涯忘れないだろう。
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