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第832話 其々の夜 (沙織x大輔)

「あ~楽しかったわ!」 「はい、水です。俺も楽しかったです」 部屋に入って直ぐにソファに座ってると大ちゃんが、水のペットボトルを持って来てくれた。 本当に、気が利いて優しい♡ 「ありがと、大ちゃん♡」 渡された水を飲んで、隣に座った大ちゃんに寄り添い肩に頭を乗せた。 こう言う夜は……甘えたくなる♪ 大ちゃんも、そんな気持ちだったのかな? 肩に乗せた私の頭を撫でてくれた。 年下で優しいけど……こう言う所は男らしい一面を見せる。 大好き‼︎ 会社や他人が居る時には甘えない私が2人っきりになると、甘えるのは相手が大ちゃんだからだ。 大ちゃんは私が家の外では神経を尖らせ、偶には悪者になって言いたくない事も言ったり勝気な性格を知って「沙織さんは、本当は凄く優しい人です」と、フォローして頑張ってる私の事を凄く理解してくれてる。 そんな大ちゃんが好き! 私は猫のように肩に頭を擦りつけ、いつもより甘えてた。 ヨシ君達の結婚式を見て……少し気持ちが昂ってるのかも…。 ずっと頭を撫でながら 「お疲れ様! 今日も大活躍でしたね。ヨシ君のウェディングドレス姿も凄く綺麗でしたよ」 「ふふふ……私の最高傑作よ~」 ヨシ君のウェディングドレス姿を褒める大ちゃん ……ちょっとヨシ君に嫉妬しちゃうな。 「ヨシ君のウェディングドレス姿は確かに凄く綺麗だったけど…俺には沙織さんのウェディングドレス姿の方がもっと綺麗でした」 こう言う所も好き! 誰が見てもヨシ君のウェディングドレス姿の方が綺麗だった……でも、大ちゃんがそう言ってくれて心から嬉しかった。 ま、私も綺麗な方だったとは思うけどね。 「ふふふ…ありがと! 何だか、伊織達の結婚式見てたら、私達の結婚式思い出しちゃったわ」 「俺もです! 沙織さんのウェディングドレス姿を思い出して…神様の前で誓い合ったなぁ~とか.凄くドキドキ…して緊張したなぁ~って。成宮さん達も緊張したでしょうね」 「そうね。一生に一度の事ですもの緊張するわ。 それに伊織達には結婚式なんて縁がないと思ってたでしょうからね。ヨシ君にサプライズ成功したわね。ヨシ君にはちょっと迷惑だったかも知れないけど…伊織は大喜びね」 この企画を伊織に話した時の伊織の喜びようったら……笑っちゃうわ。 思い出し笑いをしてた。 「そんな事ないですよ。この企画の考案.皆んなへの連絡.ホテルやチャペルの予約.ウェディングドレスの手配や海堂さんのお母さんとの買物…沙織さんの頑張りは皆んな解ってますよ。そうじゃなきゃ…皆さん、即答で ‘参加する’ ‘協力出来る事があったら言って欲しい’とは言わないですよ」 「そう言ってくれて嬉しいわ。ありがと。それに私だけじゃなく大ちゃんも協力してくれたわ」 ホテルとチャペルの予約は大ちゃんがしてくれたし、買物とかも運転手を買って出てくれた。 楽しかったけど、やる事が多くて凄く大ちゃんに助けられた……この企画の影の功労者だ。 「俺は沙織さんに言われるがままにしただけです」 「そんな事ないよ。大ちゃんのお陰だよ」 大ちゃんの顔を見上げると真剣な顔をしてた。 いつも穏やかな大ちゃんが…仕事以外では珍しいな。 「実は……以前は、ずっと成宮さんに妬いてたと言うか.羨ましかった」 「伊織に?何で?」 「……今は、2人が幼馴染で兄妹みたいな関係だとは解ってますが……。沙織さんは成宮さんと居ると何でもズケズケ…思った事を話して…そんな沙織さんを成宮さんも ‘仕方ねーな’って受け入れてた。仲が良いなぁ~とちょっと妬けました。そして成宮さんみたいに堂々として自信がある年上の人には、沙織さんも素の自分を出せるんだなぁ~と羨ましかった。俺は年下で、まだ会社も軌道に乗る前で…男として頼りないんじゃないか?沙織さんには相応しくないんじゃないか?って不安に思ってた時期だったから……余計にそう思ってたのかも。そして成宮さん.海堂さん.桐生さんの仲も羨ましいと思ってました。何でも言い合い、そしてお互い助けて合って…凄い良い関係だなぁ~って……3人の中には割り込めないなぁ~とも思ってました。俺は沙織さんの付き合ってる人って事で仲間に入れて貰ってる感じがして……年下って事もあり、どこかで疎外感も感じてました」 初めて聞いた! 大ちゃんがそんな事を思ってたなんて! 私もそうだけど、誰も大ちゃんをそんな風には思ってない……けど、大ちゃん自身がそう感じてたなんて……。 「ごめんなさい。私、大ちゃんがそんな風に思ってたなんて気付かないで……。でもね、誤解しないで! 伊織は小さい時からの幼馴染で、私にとっては身内同然でお兄ちゃんみたいな存在なのよ。 だから、つい伊織にはズケズケ…言っちゃって。 大ちゃんがそんな風に思うなら、これからは気をつけるわ! 私には伊織なんかより大ちゃんの方が大切なんだから‼︎」 私は大ちゃんの顔を見て必死に話した。 大ちゃんは私の顔を見て微笑んで頭を撫でた。 「うん! ごめん、今は解ってるから大丈夫だよ! 俺達の披露宴の後に来てくれた方々をお見送りする時に、成宮さんに小声で言われたんだ。 ‘妹を頼む! 沙織には矢島君が必要だ!’とね。その時に、自分が妬いてた事や羨ましいと思って事が、俺自身の嫉みだったんだって! 成宮さんは沙織さんの事を妹として接してた。誰よりも沙織さんの幸せを願ってたんだと思いました。そしてこの時に、俺は皆んなの仲間に入れたんだ!って思った。それからは何も気にならなくなった……今回もだけど凄く良い仲間だ」 「うん.うん! 私もそう思う! 大ちゃんも仲間の一員だよ。そして私には大切な人だよ! ……伊織がそう言ってた事は知らなかった……でも、伊織の気持ちも嬉しいよ。バカで変に自信家で口も悪いけど…私のお兄ちゃんだから……大ちゃんにも義兄位には思って良いよ。伊織もその方が喜ぶよ」 「ははは…そうだね。義兄位が程良い関係で良いかも!」 2人で顔を見合わせて笑った。 そして、また大ちゃんが真剣な顔になった。 今度は何? 今日の大ちゃん……グイグイくる⁉︎ 食事会やbarも楽しかったから…飲み過ぎ?酔ってる? 「どうしたの?今日の大ちゃん…いつもと違うみたい」 「うん! そうかも。今日のヨシ君達の結婚式見て俺達の結婚式思い出したからかも。ずっと言いたい事があったんだ」 えっ! 私への不満?……それとも浮気? ……浮気は無いと信じたい……けど……大ちゃんの優しく穏やかな所は癒されるし…頑張り屋な所は母性本能を擽る……密かな人気があるのも知ってる………。 私は不安から目を逸らして俯いた。 何を言われるのか…怖かった。

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