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第834話 其々の夜(龍臣x優希)

ドサッ! ホテルの部屋のソファに乱暴に座った。 俺と伊織.祐一は酒豪で関係ねーが、他の奴らは大丈夫かな? 楽しかった事もあり、食べて飲んではしゃいでたからなぁ~。 結構、飲んでたよなぁ~。 あ~久し振りに楽しかったな。 仕事も多忙で、いつも神経が休まる暇が無いが、このメンバーで集まってる時が仕事の事も忘れ楽しめる。 俺にとっては良い息抜きになる。 もちろん、優希と一緒に居る時も俺にとっては、安らぎの時間でもある。 「良い結婚式だったな」 「はい、水と後はワインね。まだ、飲み足りないんでしょ?でも、先に水飲んでからね」 ふらつく足で、水とワインを持って来て隣に座った。 ここにも良い奥さんが居た! 俺の体を気遣って…水を用意し、そして飲み足りないと気が付き……幸せだな。 しっかり者で良く気が付き.俺の至らない所を注意しフォローしてくれ、そしていつも俺を立ててくれる。 尊の事も……優希のお陰で真っ直ぐに健やかに育った。 良妻賢母って、優希の事言うんだな。 今日、伊織の結婚式見たら……長く一緒に生活してると日常的になって、これまで優希がしてくれてた事が当たり前に思ってた事に気づかされた。 俺がそう言う風に思えるようになったのは、優希が影ながら努力してくれてたんだ……そう思うと感謝と優希の良い所を再確認してた。 当たり前と思ってる日常は、優希のお陰なんだ。 だから、俺は安心して仕事にも励む事が出来る。 そう言う環境を整えてくれてたのは優希だ。 「ありがとう! 優希」 珍しく俺からの感謝の言葉に、一瞬驚いた顔をしてたが直ぐに笑った。 「何~、水ぐらいで。おかしな龍~」 水を渡された事への感謝の言葉ではなかったが、優希も何となくは解ってるはずだが、照れて茶化してるようだ。 「良く気がつく奥さんで嬉しいよ」 俺もそれに乗った。 「今頃気が付いた~。遅過ぎ~」 そう言って笑う優希。 本当に、これまで仕事の事.尊の事.親の事…色々、優希の世話になった。 ‘ありがとう’ の感謝の言葉だけじゃ足りないな。 水を飲み終えるとワインを注いでくれ、自分にも少しだけグラスに注いでた。 「それにしても美樹君のウェディングドレス姿は綺麗だったね。あの姿見て、男性だとは絶対に思えないよ。あと、お義母さんが選んだ赤いドレスも、また似合ってたね。ウェディングドレスの時は綺麗って感じだったけど、赤いドレスの時はまた違って色っぽいって言うか.妖艶な感じだったね成宮ったらデレデレしてさ~。もう、骨抜きって感じで、見てるこっちが恥ずかしかったよ~」 結婚式の感想なんだろうが、優希が美樹君の事をやけに褒めてる事に嫉妬心が湧いてきた。 「まあ、確かに綺麗だったし色っぽかったけどな」 本当は凄く綺麗だったし色っぽくってゾクゾク…もした……伊織の恋人じゃなかったら…俺が優希と出会ってなかったら……たぶん、俺はどんな手を使ってもモノにしたかも知れない。 それ程極上だった。 ま、現状は親友の恋人だし俺には優希が居る! 今更、たられば…や妄想しても無駄な事。 それに、美樹君の性格は俺にはちょっと物足りない。 控えめで優し過ぎる。 伊織はそう言う所も家庭的で癒されるって言ってたが……。 やはり俺には優希が1番良い! 俺には優希.伊織には美樹君.祐一には真琴君…か。 落ち着く所に落ち着くって事なんだなぁ~。 やっぱ、運命の相手なんだろう。 「そうだよね~。いや~今回ばかりは、龍が美樹君の事を褒めちぎっても嫉妬心も湧かないよ。もうあの姿見たら誰でも納得しちゃうって~。成宮が一目惚れした!って言ってたのも解るよ~」 何で、そんなに美樹君の事を褒めるんだ? 確かに綺麗だったが……優希が余りにも褒めるもんだから腹が立つ! 「へえ~、優希も見惚れたって事か?」 機嫌悪く低い声が出た。 そんな自分を誤魔化すようにワインをがぶ飲みした。 「見惚れたって言うか…誰でも見入っちゃうんじゃない?チャペルの扉開いた時には、余りにも綺麗過ぎて声が出なかったぐらいだもん」 「そうか。綺麗だったし色っぽくもあったが、所詮、伊織の者だろ?ま、目の保養にはなったな」 「ふ〜ん。龍臣がそう言うなんて意外。龍臣の方こそ、私なんかより美樹君のウェディングドレス姿や赤いドレス姿を褒めると思ってたんだけどな~。流石に、親友の大事な人には手を出さないかそこまで獣じゃなかったんだ。あ~良かった!」 はあ⁉︎ 俺の事、そんな風に見てたのか? 冗談で言ってても聞き捨てならない! 「優希、冗談でも言って言い事と悪い事があるぞ! 俺が伊織の大事な人に手を出す訳ねーだろーが! 伊織と祐一には散々世話になったし、誰よりも、この俺が2人の幸せを願ってるっつーの! 第一! 俺をそんな男だと思ってたのか?そっちの方がショックだ!」 少し声を荒げてしまったが、そんな俺の事など優希は気にも留めてないようだ。 「そんな男だとは思ってないよ。たぶん…… これまで浮気はしてないとは思うけど……疑惑はそれなりにあったからね~。これで美樹君にどうこうするような奴なら、これから色々考えないと…と思って、先に牽制してみた。龍臣の返事を聞いて一安心したよ。最低な外道じゃなくって良かった‼︎」 はあ~‼︎ 俺を試したのか⁉︎ 舐められもんだ‼︎ 「俺の事を試したのか?」 「試したとか人聞きが悪いな~。これまでも疑われるような事はしばしばあったでしょ?それに美樹君の姿見てボーっと見てたのも事実じゃない?」 「俺は浮気はした事は無い‼︎ 付き合う時にも.夫夫になる時にも ‘浮気は許さない! どんな理由でも別れる!’ と言われてるんだからな。それに疑われるような事って…あれだろ?店の子らの事だろ?近くで話しすれば香水やらの匂いはつくし相談事の時には窪塚も必ず同席してるし、飲み過ぎて潰れた時には俺もスタッフも介抱したりはするし…そう言う誤解は、その都度解いてただろ?この商売してると……悪いが付き物なんだよ。それにあれ以来…俺は店の子達は商品としてしか見れなくなった‼︎ 懲りた‼︎ 優希が言ってるのは、以前の俺の事だろ?今は会社も大きくなったし、通販のお陰で運送業の方も業績が伸びて忙しいからな。そこまで細かいフォローもしてねーよ。そりゃ~、偶には店の方にも顔を出して売上やら店の状況を確認するけどな、それだけだ‼︎ 今は他の仕事も忙しいし店の方は窪塚に任せてる。それで…あとは…美樹君の姿見てボーっとしてたとか言ってたな。それは皆んなそうだっただろ?優希だって、そうだったじゃん」 結局は、優希の嫉妬心から来てると解るとちょっと嬉しい。 愛されてるって解るからだ。 そう思うと少しにやけてきてしまう。 年上だからって言う事もあるんだろうが、素直に嫉妬してるとは言えない優希……解るとそう言う所も可愛い! 偶に、こうやって俺が浮気しないように牽制してくるのも解ってる。 夜の世界は誘惑もあるからな…優希の気持ちも解らないでは無いが……もう少し信用して欲しいもんだ。 「何、笑ってんの?この機会だから、もう一度言っておくよ! 私は浮気は許さない! 直ぐに別れる‼︎ 遊びとか魔が刺したとか.そんな言い訳は聞かない! 浮気するなら別れるつもりでどうぞ‼︎」 俺の事を愛していても、優希なら本当に別れるだろう。 浮気されて ‘もう絶対浮気はしない!’と誓って許したとしても、その後心のどこかでまた浮気するんじゃないか?と疑って一緒に生活するは、お互いの為にならないと考えるはずだ。 それなら……きっぱり別れた方が良いと潔く身を引く方を選ぶ……優希ならそうするだろう。 そんな性格を知ってて、浮気してまで優希を失う事はしねーって‼︎ ま、偶にこうやって嫉妬されるのも悪くない。 「だ・か・ら、俺は浮気はしないって~。そんな一夜の過ちや魔が刺したとかで、優希を失ったら俺は一生後悔して過ごすって解り切ってんのにする訳ねーじゃん! 俺を信用できないの?」 この10年程の俺達の過ごした生活は愛情と信頼関係で成り立ってる…はず。  嫉妬は可愛いが、信用されないのは解せない! 伊織達の結婚式で、何でこんな話になってんだ⁉︎ 優希の方こそ俺に不満溜まってるのか? そう考えると俺の方が不安になる。

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