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第835話 其々の夜(龍臣x優希)
優希はポロポロ…泣き始めた。
そんな優希を見て、俺の方がギョッとした。
余程の事がない限り、余り涙を見せないからだ。
付き合う前は結構陰で泣いてたようだが……余程の事がないと、今は涙を流す姿は見た事が無かった。
これまた普段の優希からは見られない行動に出たから驚いた。
ポロポロ…泣いてたかと思ってたら、今度は俺の膝に跨り俺の胸に顔を埋めて甘えるように泣き続けた。
な.何だ?どうした?
戸惑う俺に優希は泣きながらも話し始めた。
「ごめん! 龍! 私…龍臣を試すような事言ったり嫌味みたいな事言って~。浮気は疑った事は無いけど…やっぱ不安もある。龍臣はどんどん良い男になって社長としての貫禄も出てきて……女性から見ても魅力的だと思うから。龍臣がその気じゃなくっても…龍臣の周りには綺麗に着飾った人がたくさん居るし……いつ龍臣の心を奪う人が出てくるかもと思うと……。それに龍臣なら…出来心とか魔が刺したとか.そんな遊びじゃなく本気で好きにならなきゃ浮気はしないでしょ?龍臣を信用してないんじゃなく信用してるからこそ…本気な人が出来たら…その人の為に一生懸命になるでしょ?龍臣はそう言う人だよ。だから信用も出来るんだけど……」
確かに、俺の性格からして本気な相手には何がなんでも自分の者にするし一生懸命尽くすと思う。
それは優希と出会ってから、そう言う自分が解った。
それまでは適当な距離を保った付き合いや遊びが殆どだったが、そんな俺を優希が変えたんだって解んねーかなぁ~。
弱音や不安を吐く優希……普段はそんな事をおくびにもださない優希。
やっぱ酔ってんのか?
普段心のどこかに思ってる事が出た~って感じだな。
そう思うと不安にさせてた俺も悪いか。
泣きながら話す優希の背中を撫で落ち着くようにひたすら手を動かしてた。
「嫉妬してんの?」
コクンッと頭を縦に振り意思表示した。
素直~!
いつもの優希なら「別に! 龍臣がそう思うなら勝手にどうぞ!」とか強がって話すはず……素直に意思表示したって事は……やはり酔ってんな。
と言う事は、普段言えない本当の気持ちって事か
「可愛い~な。優希に嫉妬されるのは悪くないな
優希が嫉妬するのと同じぐらい俺も嫉妬したり不安はあるよ。尊の為に仕事も辞め、家で出来る仕事を細々として、ずっと家庭に居た優希が尊が高校生になって手も掛からなくなると、弁護士資格も取って俺の会社で働いてるけど……やはり外には俺より良い男も魅力的な女も多い。家に居た時よりやはり人との出会いや接触は多くなる。そう思うと…やはり心配はする。それに…弁護士として法律的な事で解決する為とは言え、優希の方が店の子のトラブルに関して親身に話を聞いたりしてるだろ?店の子は優希の事、感謝もしてるし頼りにもしてる。それがいつ恋に発展するか?も解らない。優希は外見や権力とか.そんな損得勘定はしないだろ?皆んなに平等に分け隔てなく接するし、物腰も柔らかくそれで居てしっかりしてるから信頼出来るからな。いつ誰が優希の魅力に気づくのか心配なんだ。優希は俺に浮気とか本気とか言ってるけど、俺の方が心配だし嫉妬深いし束縛も激しいのは自分でも解ってる。それは優希を愛すればこそだ。優希と伊織.祐一だけが、俺の家の事や外見を気なせず本当の俺を見てくれた。特に優希は尊の為に仕事も辞め、俺の為に実家とも縁を切って……そして俺の為に弁護士資格とって支えてくれようとしてる。そんな奴を裏切れるわけねーし、今後そう言う奴は出てこねーって! それに俺に誘いを掛けて来る女や近寄って来る男も、俺の金や社長夫人の座を狙ってとか.会社.権力.そう言うもんに寄って来るのも充分解ってる。その証拠に極道解散して会社組織にしたら掌返したように近づいて来たからな。本当の俺を…俺自身を見てるわけじゃないって良~く解ったよ」
自虐的だったが、会社が大きくなったりすればする程そう言う奴らは寄って来るのは経験済みだ。
俺自身を見てくれるのは優希.伊織.祐一だけだった
……今は美樹君や真琴君.沙織さん.矢島君もその中には入ってる。
伊織や祐一は信頼してる友人の恋人だからこそ俺も信頼出来る。
損得勘定無しで付き合える仲間だ!
優希は頭を横に振り、相変わらず俺の胸に顔を埋めてる。
「仕事辞めたのも実家と縁を切ったのも弁護士資格を取ったのも、私が勝手にした事だよ。龍臣が気に病む事は無い‼︎ それに、私達だけじゃなく龍臣の事絶対に解ってくれる人達はたくさん居るから! 龍臣はちょっと誤解されがちだから……強面で体も大きいし横暴で仕事では冷徹な所もあるけど…本当の龍は情深く優しい人だよ」
「おいおい! 強面とか横暴とか冷徹とか凄い言われようだな~」
苦笑いで話すと優希にも伝わったらしい。
「だって…本当の事だもん」
顔を上げて俺を見つめる目は涙で潤み酔いのせいか?頬もほんのり赤い。
色っぺー!
で、……だもん’ とか.その可愛いらしい言い方すんなよ!
普段とのギャップで……堪らん!
今日の優希…甘えて素直で可愛い~。
偶に出るこう言う優希もまた良い‼︎
「なあ、こんな言い合い不毛じゃねー。俺は優希以外は考えられねーし優希が居ないと生きていけないとも思ってる。優希もそうだろ?」
「うん!」
「だったら話は早い! お互いを信じていくしかねーよ。不安があったり嫉妬したりは人間なんだから仕方ねーし、その都度話し合おう」
「うん!」
今日はやけに素直‼︎
可愛い過ぎ~。
「俺さ~、今日、美樹君のウェディングドレス姿見てたらさ、確かに綺麗だとも思ったしボーっとしたりもしたけど……優希も着たら綺麗なんだろうなぁ~って思った。どうだ! 優希もウェディングドレス着て、俺と結婚式挙げるか?」
優希のウェディングドレス姿も見たい。
優希は顔を顰めた。
だめか⁉︎
「それは嫌! だってさ~……お義母さんが絶対に張り切っちゃうよ。それも派手な結婚式になりそうだし。あと…沙織さんも絶対にお義母さんと一緒になってやりそうだし」
まあ、確かにな。
どうせやるなら豪華に…って言いそうだな。
「ならさ、俺と優希と2人だけの写真撮影でどうだ?どっかのホテルで写真撮影だけってあるだろ?今日の伊織達の結婚式見て ‘やはり結婚式挙げた方が良かったな。その方が実感が湧くし良い思い出になるな’ってずっと後悔してた。俺と2人っきりなら良いだろ?親父や母さんにも誰にも内緒で」
「う〜ん……それなら考えなくも無いけど…。尊は?尊にも内緒で?」
「うん! 尊にも内緒でしようぜ。俺達だけの思い出の為に…な。良いだろ?2人だけの秘密って事で!」
「ん……解った! やろう! 龍臣だけなら…良いかな」
無理かも…と思ってたが、色々説得すると案外すんなり許可が降りた。
ダメ元で言ってただけに、思わず嬉しさで優希を抱きしめてた。
「優希、ありがとう。絶対に、こらからも幸せにする! 俺の一生を掛けて愛し抜く‼︎」
「クスクスクス……大袈裟だけど…嬉しいよ。その言葉忘れないように!」
「もし、破ったら契約不履行で訴えても良い! 弁護士だから得意分野だろ?」
「クスクスクス……そうする!」
笑ってる優希の頬に手を当て顔を近づけ唇を奪い舌を入れ激しいキスを仕掛けた。
レロレロレロ…チュパチュパチュパ…クチュクチュクチュ…ヌチャヌチャヌチャ…レロレロ…
激しいキスに、優希が堪らず俺の背中を叩いた。
名残惜しいが、唇を離し額を合わせ目を見つめた
「今日は寝かせねー。優しく出来ねーかも。そのくらい興奮してるし気持ちもあっちも昂ってる」
「……私も同じくらい気持ちが昂ってる。龍臣の好きにして良いよ」
「よっしゃ~。覚悟しろよ!」
コクンッ!と頷く優希が可愛い。
酔いもあるかも知れねーが優希の許可は下りた。
気持ちが変わらない内に…と、俺は優希を肩に抱え寝室のドアを開けた。
いつもは尊が居る為に割と抑え気味にヤルが、尊が友達と家や実家に泊まりに行ってる時にはチャンス!とばかりにガンガンやりたい放題しまくる
今日は8月の2人で行った旅行以来だな。
……なかなかチャンスが無かった。
許可も降りたしガンガン思う存分する‼︎
優希が不安になる気持ちが吹っ飛ぶくらいに、俺の愛を注ぎ込んでやる‼︎
これが俺の愛仕方だ‼︎
今日と言う日が、また俺達2人の信頼と絆を深くした。
俺達にとっても良い日になった。
~その後~
次の日の朝には、優希からお叱りを受けた。
「龍! 起きられないじゃない! この獣!」
「はあ?俺は昨日しっかり優希の許可は貰ったぞ!
覚えてねーの?」
「………全然覚えて…ない」
「ったく! おかしいと思ったんだよなぁ~。妙に甘えてくるし。でも、俺は嘘は言ってねー」
「……………」
何も言い返せないらしい。
「じゃあ、昨日話した事も覚えてねーの?」
「……全然………何か言った?聞くの怖いんだけど……」
やっぱ昨日は酔ってたんだな。
それか断片的には何となく覚えてるって所か?
確かに、足はふらついてたし突然泣いたりと情緒不安定な所があったしな。
楽しかった事もあり皆んなの前では酔ってる事を微塵も見せて無かったが、もしかして優希自身も酔ってるとは思って無かったのかもな。
部屋に入って俺と2人になって気が緩んで酔いが回ったって事だろうな。
まあ、お陰で昨日酔った勢いで優希の隠された本音が聞けたって事か。
「聞きたい?」
「怖いけど……気になるから聞きたい。変な事…
言った?」
不安そうな顔を見せる優希もまた可愛いな。
「伊織達の結婚式を見て気持ちが昂ったんだろうな」
意味あり気に話す。
「凄く良かったし、その後も楽しかったから……
で、何かした?」
俺はニヤっと笑って見せた。
俺の顔を見て訝し気な顔を見せる。
「部屋に入って俺に甘える.甘える。めちゃくちゃ可愛いかった。で、‘龍、愛してる’って何回連呼したかなぁ~。俺も我慢出来なくって ‘今日は寝かせねー’って言ったら ‘龍の好きにして’って言ってさ~。で、この様な結果です」
「……まさか!……自分がそんな醜態を晒してたなんて…。楽しかったから……自分では解らなかったけど…飲み過ぎたみたい。あ~恥ずかしい」
「いや、めちゃくちゃ可愛いかったぞ。これからも俺にもっと甘えて欲しい」
「……機会が有れば…ね」
照れて素直には言えないようだが、目が物語ってた。
本当に素直じゃねーけど……それも可愛い。
「龍、責任取って!」
「はい.はい」
俺は朝食の時間まで、ずっと優希の腰を揉んだり摩ったりと勤しんだ。
昨日の夜に2人で話した内容は敢えて言わなかった。
優希にとって隠してた本当の気持ちで、俺に暴露されたら恥ずかしいだろうと思ったからだ。
俺だけが解ってれば良い事だ!
これからの長い人生を優希と共に過ごす為に、少しでも優希に不安にさせないようしよう。
そして弱音を吐かない優希に偶にはこうやって弱音や不安.不満を話せる機会を作ろうと思った。
それから数週間後に、俺は優希の気が変わらないうちにと思ったが、優希はその事も覚えては居なかったが、何とか説き伏せてホテルの写真館で2人っきりの結婚写真を撮った。
優希のウェディングドレスは惚れた欲目かもしれないが美樹君より凄く綺麗だった。
その写真は俺達の寝室にひっそり飾ってる。
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