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第837話 其々の夜(祐一x真琴)

「マコ……俺達…結構長いよな」 「……う.うん」 付き合うようになって直ぐに同棲した。 すれ違いの生活を何とかしようと少しでも一緒に居る時間を作ろうと、僕が祐さんの所に押し掛けた。 えっ! 真剣な顔…何処となく言い難そう……別れ話⁉︎ どうしよう! 絶対、嫌だ! 「祐さん! 僕、嫌だよ! 祐さんと別れたくない! 僕は料理出来ないし掃除や洗濯も……祐さんがしてくれるから甘えて…。だから…僕の事……嫌いになった⁉︎ 僕が何も出来ないから⁉︎」 「マコ!」 取り乱す僕を祐さんは落ち着かせようと大きな声で名前を呼ぶけど、僕はそれどころじゃなかった 「それとも好きな人出来た⁉︎ それでも僕は祐さんと別れたくない‼︎ 僕を嫌いになってないなら、僕は待つよ‼︎ 祐さんが戻って来るまで‼︎」 どうやったら祐さんが僕から離れていかないか? そればかり考えてた。 辛いけど涙を出る暇もない程、僕は必死で祐さんに懇願してた。 いや.嫌と駄々っ子のように体と頭を揺すり我を忘れて話す僕を強く抱きしめてきた。 「マコ! マコ! 落ち着け!」 「やだ! やだ! 離れたくない! 別れたくない! 料理もする! 掃除もする! 洗濯だってする! 祐さんが負担になってるなら、僕は何でもするから! 悪い所があったら言ってくれれば直すから! だから別れるとか言わないで‼︎」 更に、ギュッと強く抱きしめてきた。 「マコ! 頼む! 俺の話を聞いてくれ! 取り敢えず落ち着け‼︎」 祐さんの必死な言葉に僕はもう黙った。 ここまでお願いしても……。 僕はもう祐さんの顔を見れなくなって俯いた。 静かになった僕を見て、祐さんはゆっくり冷静に話し始めた。 「俺の言いた方が悪かった! マコがそんな誤解するとは思わなかった。ごめん!」 祐さんの言葉に僕は顔を上げた。 「……誤解?だって……祐さん、言い難そうにして…」 「言い難い事じゃないんだが……緊張してた」 「……良く解んない」 祐さんは僕の目を見つめ話す。 「マコ! 俺達も結婚しないか?」 「えっ‼︎ け. 結婚⁉︎」 まさか……祐さんの口から、そんな言葉が出ると思ってなかった。 一瞬、驚き、そして嬉しさが込み上げてきた。 嬉しい‼︎ 本当に嬉しい‼︎ さっきまで別れ話だと思ってたから……尚更嬉しかった‼︎ そんな状況だったからポロポロ…嬉し涙が溢れた 「本当に⁉︎ 本当に僕で良いの⁉︎ 後悔しない?」 信じられなくって僕はついそんな事を言った。 祐さんは優しい眼差しと微笑みながら僕の頭を撫でた。 「本当だ‼︎ マコが良い‼︎ 後悔はしない‼︎ 」 僕の問に、祐さんらしく簡潔に答える。 嬉しい…けど、もしかして今日……ミキ達の結婚式を見て……祐さんも思う所があって……それで急にこんな話しを……僕の事を好きだから今一緒に生活してるとは思う………けど、責任感とかでは言って欲しくない。 祐さんの言葉を聞いて喜ぶと同時に、そんな事も思い沈んだ。 僕の表情から祐さんも何か感じたようだ 「今日、伊織達の結婚式見てそれに感化されたわけじゃない! 伊織達から結婚報告受ける前から、そろそろケジメつけるつもりでは居た。……俺としても一応雰囲気とか.シチュエーションとか考えてたが、なかなか言い出すタイミングが……で、ずるずるときてしまった。で、話すなら今日しか無い!って思った。伊織の二番煎じのようで癪だが 話すなら今日しか無い! 絶好のチャンスだ!と思った」 祐さんが誤解しないように説明してくれた。 祐さんがミキ達とは関係なく以前から考えてくれてた気持ちが伝わりポロポロ…また嬉し涙が出た 「ありがとう……祐さん」 泣きじゃくる僕の頭を撫で、今度は背中を撫でた 「マコにはこれからも俺の側に居て笑ってて欲しい。マコの明るさや元気な所に俺はいつも救われてる。俺の方がマコ無しじゃこの先やっていけない。俺と結婚してくれるか?まだ、返事は貰ってないぞ」 「はい‼︎ 僕は何も出来ないけど……側に居て元気パワーだけはあげられる! 僕の話を黙って笑って聞いてる祐さんが大好きだから」 「俺はマコが居るだけで良い。マコは気にしてたのかも知らないが、掃除も洗濯も時間がある方がすれば良いと思ってる。実際、マコだって休みの時にはしてくれてるだろ?料理の事も仕事前に俺が食べて行くから、ついでにマコの夕飯を作っておくだけだし、朝はマコは自分で食パン食べてくだろ?料理は得意不得意があるからな。ま、家事は時間とか.出来る方が負担なくすれば良いし。 実際、俺は1人暮らしも長かったし負担とも思って無かったし気にもしてない」 さっきマコが言ってた事は多分ずっと自分でも気にしてたんだろうと思った。 俺自身は全然気にならないしマコがそう思ってた事には逆に驚いた。 この際、その事も話し合った方が良さそうだ。 「何度か料理もチャレンジしたり、ミキにも教えて貰ったりした事があったんだけど……僕、料理センス無いみたいで……。ごめん、食べる専門。掃除や洗濯は家電がしてくれるから……。祐さん何も言わないけど……だんだんそう言うのも不満になってちゃうんじゃないか?……って」 「何も努力しないで諦めてでかい態度とってたら流石に呆れるし不満も出るだろうが、マコは自分に出来る事はしてるだろ?風呂掃除やトイレ掃除.食器の洗い物だってな。充分だよ。お互いこれまでもやって来れたんだ、大丈夫だ」 「うん‼︎ 祐さんがそう言ってくれるなら」 またまた涙が出る。 商売柄、色んな人の事を見てる祐さんはあまり深入りはせず誰に対しても割と冷ややかだ。 そうじゃなきゃ…あ~言う店はやれない。 そんな祐さんだけど僕は知ってる……何も言わないけど、その人の本質を良く見てるって事を。 そして自分の大事な人達には、さり気ない優しさを見せる。 僕にもこうやって……そう言う祐さんが好きだ‼︎

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