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第839話 其々の夜(祐一x真琴)
「マコ、シャワー空いたぞ」
「…………」
コトが終わって「風呂に行こう」と誘ったが、疲れ果てたマコは「ん…ごめん。少し…休む。祐さん、先に…入って」とベットに横たわったまま言われ、少し休ませてやろうと俺は1人でシャワーを浴びに行き寝室に戻って来た所だったが……俺の問い掛けにマコの返事は無かった。
ベットの側に行くと裸のままマコは眠って居た。
「寝たのか」
今日の俺は自分でも歯止めが効かなかった。
伊織や龍臣みたいに回数やテクニックを自慢する程体力バカじゃないが、今日は珍しく3回もヤッちまった。
いつもの俺は週に1~2回程で、マコの休みや俺の気分でスル。
俺はマコと付き合うようになって、セックスも焦らししつこくし回数より時間を掛けてスルようになった。
愛撫に時間を掛け挿れてからも長い、あいつらに負けない程のテクニックは持ってると自負してるが、それを自慢する事は決してしない……2人の秘め事だからな。
マコは体力も無いし性欲も強く無いようで、いつもヘトヘト…になり疲れ果てる。
それが今日は長い上に3回もヤッタもんだからな
マコと付き合う前は、常時3~4人居たセックスフレンド達とは刺激的なセックスだったが、ヤル事ヤッタら終わり……それが割り切った付き合いだし、その時だけ楽しめば良いと自分の快感だけ追求し刺激を求めてたが、本気の相手とのセックスはやはり違ってた。
相手を思いやり快感を与え俺だけしか考えられなくする様なそんなセックスは本気の相手だからこそだ!
「疲れたよな」
労りの言葉がポロッと出た。
そしてマコの隣に横たわり寝顔を見てた。
いつも仕事から帰ると、この寝顔を見て ‘家に帰って来た’とホッとしてた。
マコが居るだけで俺は安心し元気を貰え、そしてまた仕事を頑張れる!
見かけは子供っぽく元気が取り柄って感じだが、しっかり者で芯が強く人の痛みが解り優しい良い子だ。
マコが1人で粘り強く親を説得してたなんてな。
家族も自分も俺も…良い関係が築ける様に……
いつもマコは周りの事を考え気付いて行動する
マコらしいな!
そう言うマコだから好きになった。
初めて会った時は、ミキが永瀬の事を諦め丁度荒れてる時に、ミキが俺の店にマコを初めて連れて来た。
それから暫くして…なぜか?解らないが、マコからの猛アプローチが始まった。
ミキと一緒に連れ立って店に来る時もあったが、1人でもほぼ毎日同じカウンター席で1杯のカクテルを30分から1時間程ゆっくり飲んで帰る。
客と言う事もあって話し掛けられたら答えるが、個人的な会話は殆ど皆無だ、俺の仕事振りを黙って見つめる事も多かった。
その熱い視線に気づいてたが、わざと気付かない振りをしてた。
幾ら、アプローチされても俺は見向きもしなかった。
タイプでも無かったし、第一…マコがゲイじゃなかった事もあって、学生の内の遊びか.ただの興味本意で俺自身を好きになってるわけじゃないと揶揄われてる気すらあった。
そんな気持ちもあって、俺は飽くまで客とマスターとしての立場を崩さず、マコには他の客より冷たく対応してたと思う。
それでもへこたれずに、半年以上ほぼ毎日同じ時間に1杯だけ飲んで帰って行った。
そんなマコが突然3週間程パタっと姿を現さなくなった。
始めの3日ぐらいは何とも思って無かった、その内来るんだろうと高を括(くく)ってたが、1週間が過ぎると気になって来た。
そして2週間過ぎた頃には、気になって.気になって仕方無かった。
どうして、あれだけ毎日来てた奴が……。
事故か?病気か?
丁度その頃、ミキも同じく店に現れる事がなく誰にも聞く事が出来なかった。
日にちが経つに連れ、俺は ‘やはり本気じゃなかったんだ’ ‘揶揄われてたんだな’ ‘まともに受け止めなくって良かった’ と自分に言い聞かせ、やはり一時の気の迷いだったんだろうと思う事にし忘れたようとしてた。
そんな時に、マコはひょっこり店に現れた。
俺はもう来ないだろうと思ってただけに、そんなマコに腹立だしさを感じてたが ‘お前の事なんか気にしてない’ と言う顔で普段通り接客した。
「久し振りですね。いつもので宜しいですか?」
「うん! もう! 本当に、久し振り! ずっと来たかったんだけど、試験とサークルの事が重なっちゃって…。やっと落ち着いたから来れた~。……祐さんにも会いたかった」
飽きたんじゃないのか?
忙しかったのか?
確かに、学生なら試験もあるだろう……。
サークルって?ミキと一緒の?
ミキの事は永瀬を通じてサークルの後輩である事や恋人だと言う事は知ってたが、俺はこの時までマコの事は何も知らなかった。
「試験お疲れ様でした。サークルと言うと香坂さんと一緒ですか?香坂さんも最近姿が見えませんから」
カクテルを出す時に、ミキの事を引き合いに出しさり気なく聞いてた。
「うん! ミキと一緒のイベントサークルで、定期的に老人ホームや施設の子供達に劇や読み聞かせとか催し物をしてるんだ。で、年に1回サークル主催でのイベントを会場借りて開催するのが、一番の目的で、今回は試験終わって直ぐにそのイベントの準備やらで忙しくって……来れなかった」
「そうですか?それはお疲れ様でした」
それだけ言って直ぐにマコから離れ、別の客と話してたが……諦めたわけじゃなかったのか.忙しかったんだ……マコが店に来なかった、いや俺に会いに来なかった理由がわかってホッとした自分が居た。
そこからまたマコはミキを連れ立って来たり1人で来る様になった。
俺はその事があって以来マコの事を意識する様になり、それでも学生とノーマルと言う事でマコの俺への愛情を信じられずに居た。
逆に、俺はマコを遠ざけようとした。
学生なんかに.ノーマルな相手に本気になったらバカを見る‼︎ もし本気になって直ぐに飽きられて…無様な思いはしたくない‼︎ そう言う思いの方が強かったからだ
本気になるのが怖かったんだと思う。
今思えば酷い事をした。
わざとマコの前で客とイチャイチャしたり.バイトの子に ‘しつこい客が居るから、恋人の振りをしてくれ’と頼んだり、マコから告白された時にも「セックスフレンドが居るし、俺はこのままで満足してる」とセックスフレンドの存在も明かした
マコはショックを受けてたようだが……それでもほぼ毎日用事が無い時は店に顔を出してた。
それが初めて会った時から1年が経ち、マコも大学生卒業し社会人になった時に、もう一度マコに告白された。
この時にはもうマコに絆されて、マコの事を好きになってた自覚はあった。
こんなに一途に俺の事を思ってくれる奴は居ない‼︎
あんなに酷い事をしてもマコは諦めずに、いつも通り明るく元気な態度を崩さずに会いにきた‼︎
なによりマコのミキへの接し方から、俺は ‘こんなに人の事を思いやり、そして香坂さんの事を思って言いたく無い事も言い考えてあげらる人なんだ’ ‘外見とは違ってしっかりしてる。この小さな体で不安定な香坂さんを守っていこうと言う気持ちが伝わってくる’と思うようになり、マコの人間性を見る機会が多かった事も要因だった。
いつしか俺もこんな風に思われてみたい!と思うようになっていってた。
マコの事を本気で好きになった時には、全てのセックスフレンドとは連絡も取らず自然消滅して居た。
俺も気持ちは無かったが、やはりそう言う相手はそれなりの相手なんだと改めて思った。
マコのように何があっても俺を信じて一筋に貫く気持ちがどんなに大変で辛かったのか。
そう思うと、その時も今回のようにマコの辛抱強さと粘り強さで俺は救われた、そして芯の強さと一途な気持ちが俺の心を変えてた。
あの時…マコがそうしてくれなかったら…今の俺達は無い‼︎
すれ違いも多いし、マコには寂しい思いもさせてるが……マコの寝顔をこうやってずっとこの先も見ていきたい‼︎
今回に限らず……いつもありがとう。
俺はいつもしてるように、マコの額にキスしマコを抱きしめ眠りに就いた。
祐さんが仕事終わって朝方の同じ時間帯に部屋に帰って来る。
その時ドアを閉める音や小さな物音で ‘あ~祐さん今日も帰って来てくれた’と寝ぼけ状態の中で思ってると、いつも祐さんは寝てる俺の額にキスしシャワーを浴びに行く。
それが祐さんのルーティンなのか?毎日の事で、俺もそれで安心して、また眠りに就くのが常だ。
今も…おでこにキスされた気がした。
でも、今日の僕は疲れ果て、それがはっきり解らない程、殆ど夢の世界に居る。
祐さんが部屋に帰って来て僕の額にキスしてくれる事が、僕にはどれ程の安心と幸せを齎してくれてるのか?祐さんは知らないだろう。
祐さんが額にキスしてるのを僕が知ってると言う事も祐さん自身は知らない。
そう言う事をする祐さんじゃないから、僕に知れてると解ると照れ臭くなりしなくなっちゃうかも知れないから……僕は黙ってるんだ。
今日も明日も明後日も……ずっと.ずっとそうして居たい‼︎
祐さんと共に生活しても一緒に居られる時間は少ないけど……僕は祐さんと少しでも一緒に居られるだけで充分幸せだよ。
そして今日のプロポーズ……本当に嬉しかった‼︎
また1つ僕は安心する事が出来る。
ありがと‼︎ 大好きだよ‼︎
なかなか言い出せずに居たが……良い切っ掛けを作ってくれた伊織達には感謝してる。
伊織達の結婚式だったが、俺とマコにとっても大切な日となった。
今日の幸せそうな2人に負けない位、俺達も幸せになろうな。
何事も一所懸命で辛抱強く明るいマコとならそれも叶う!
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