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第841話 其々の夜(伊織x美樹)

目まぐるしい1日だったが、やっとゆっくり2人で過ごせる。 チビチビ…とワインを飲みながら  「ミキも疲れただろ?」 「ん~正直話すと……ちょっと疲れました。着いた早々、何が何だか解らないまま沙織さんに連れられてウェディングドレスに着替えて…結婚式挙げて…またパーティドレスに着替えて……はあ~ 女の人が結婚式に披露宴にと何回もお色直しする気持ちが解らないな。そう考えると女性は凄いよ俺なんか2回だけで……疲れました」 ミキにしては珍しく愚痴が出た。 「まあ、ミキは大変だっただろうが、皆んな感動してたぞ。俺もだけどな」 今も赤いドレスを着たままだが……何度見ても綺麗だ! 「俺も結婚式は神聖な気持ちで感動しました。緊張もあって疲れたのかも」 グビッとワインを飲む喉.首筋がまた色っぽい! 「俺も結婚式は流石に緊張したな」 「伊織さんも?」 「そりゃそうだろ?俺にとっても.ミキにとっても一生に一度のことだからな」 クスクスクス…… 何か可笑しな事言ったか? 「それはそうでしょう。結婚式を何回も挙げられたら困ります!」 「それはそうだ! だが、ミキとなら何回でも良いぞ! 今度は神前式で和装にするか?」 嫌そうな顔を見せるミキ……こんな顔も可愛いな 「それなら、今度は伊織さんが白無垢で色打掛を着て下さいね! 俺は紋付袴を着ます‼︎」 「………キモッ!」 自分が白無垢?色打掛?……想像すると……無い.無い‼︎ キモすぎ‼︎ 「何が?キモいの?」 「俺が白無垢着てる姿は……キモ過ぎだろ?やはり、ミキの方が似合う‼︎ そこはミキだろ?」 「え~! 今度は、伊織さんです!」 「いや、ミキだろ?」 「いいえ‼︎ 伊織さんです!」 有りもしない事を言い合ってると何だか可笑しくなってきた。 くっくっくっ……ははは…… 「俺達、何でこんな事言い合ってんだ?」 クスクスクス…… 「本当に~」 くっくっくっ…… 「どっちにしろ、もう結婚式はないだろうしな。言い合っても仕方ねーな」 クスクスクス…… 「そうだね。でも……伊織さんの白無垢姿……想像すると……クスクスクス……案外、似合うかも~。そう言えば…伊織さん達の女装姿見た事ないなぁ~。いつも俺達ばっかで! 今度、沙織さんにお願いしようかな?」 はあ⁉︎ 何を言い出すかと思ったら……俺の女装?祐一の ……それと龍臣の女装? キモッ! キモッ!……それこそキモ過ぎだっつーの‼︎ 185前後の男が女装なんて……如何にもオカマだろ? 無い! 無い‼︎ 「無理だろ?沙織が引き受けるわけないって」 「何で?」 「あのな~、沙織も誰でも良いってわけじゃないの! 沙織は昔っから綺麗で可愛いのが好きなんだよ。俺達みたいなゴツくって如何にも男って言うのには興味無し‼︎ 飽くまで、綺麗で可愛い子を ‘私の手で、もっと可愛ゆくしたいわ!’って事なの! 解るだろ?」 「ん~確かに……じゃあ、無理…かな?」 可愛ゆく首をかしげ考える姿は庇護欲と男心を唆る。 何で、ナチュラルにそう言う仕草するかな~。 「かな?じゃなく無理‼︎ で、この話は終了~!」 俺はいつまでもこの話が続きそうな気配に、強制終了をさせた。 「えっ! んもう!……自分が都合悪くなると……」 「そうじゃくって……こっち来いよ」 隣に座ってるミキの腕を掴み、俺が座って大股を開きスペースを開けたそこにミキを強引に座らせた。 「うわっ! 何.なに?急に!」 突然の俺の行動に驚き慌ててたが、すっぽりと俺の前に体を移動させた。 そして俺の前に陣取ったミキの腹に手を回し背後から抱きしめた。 いつもの体勢だ! はあ~……やっぱ落ち着く~! 「なあ、ミキ?」 「ん、何?」 俺に体を預け、腹に回した俺の手を撫で話すミキが愛おしい。 「ごめんな。今日の結婚式の事黙ってて」 あの時は時間も無かったし、これから結婚式だ!という緊張と共に、俺の頭の中はお花畑で浮かれた事もあり、式を挙げる前に控室で拗ねてるミキを宥め説得する為に簡単に謝り説明したが、きちんとこの時にミキに黙ってた事を謝ろうと思った。 「もう良いですよ。てっきり、皆んなとスキー旅行だと思ってたから……。まあ、何も聞いてなかったので……驚いたのと……ちょっと俺だけ仲間外れみたいで…悲しかったかな?後々…皆んなが俺達の事を祝福したいと言う気持ちも伝わって…嬉しさに変わりましたけど」 「そう言ってくれると嬉しい。俺も沙織から今回のサプライズ企画を聞いて、皆んなの気持ちが嬉しかったし俺も結婚式したくなったんだ」 「えっ! そうなの?伊織さんは結婚式したかったんだ?俺、結婚式とか全然頭に無かったから」 「俺も沙織に言われるまでは全然頭に無かった」 「じゃあ、何で?何か心境の変化があったの?」 「クリスマスに、ここのホテルでプロポーズして指輪も着けて……夫夫になり凄く嬉しかった。 ‘正式とはいかないが、これで意識的に夫夫になった’と自分でも言ってたし、ミキにもそのつもりでこれからも生活していこう!と話したが……同棲してた事もあってか?劇的に変わる事は無かっただろ?そう言うもんだろうと思ってたし、別に、ミキとの生活に不満を持つと言う事も無かった。まあ、意識的に夫夫になるって言う事はある意味俺の自己満足でもあるしな。そんな時に、沙織から ‘私達からの結婚祝いのサプライズ結婚式を企画してるのよ’と言われて……結婚式挙げたら、もっと夫夫となった実感が湧くのかな?と思った……それと…邪な考えだが…こんな機会が無ければミキのウェディングドレス姿を一生見れないと思っただから、沙織に言われた時に、ミキのウェディングドレス姿を絶対見たくなった。皆んなの俺達を祝う気持ちも嬉しかったし……沙織の提案に乗ったんだ。ミキに事前に話したら……嫌だ!って言われると思って…サプライズって言う事も言われてたから、済まん‼︎ ミキには言わなかった。後で、色々文句言われたら謝ろうとは思ってた。ミキに話さなかった事は申し訳無かった! ごめん‼︎」 ミキからは見えないだろうが、背後で俺は軽く頭を下げてた。 「伊織さん! くすぐったいから頭を上げて下さい 髪の毛が首に当たって、くすぐった~い。もう、終わった事だから~、謝らないで。伊織さんの気持ちも解ったし、それに皆んなの俺達を祝いたい!って言う気持ちも結婚式をしてて凄く伝わったし俺も皆んなの気持ちが凄く嬉しかった。だから、もう謝らないで」 伊織さんが俺の肩口で謝りながら頭を下げたのが気配と首筋に当たる髪の毛で解った。 伊織さんが皆んなと一緒に、俺にサプライズしたい気持ちと内緒にしてた事への罪悪感もあったんだろう。 「ありがとう。ミキなら、最終的にはそう言ってくれるとは思ってた。俺、ミキに甘えてるな」 いつもミキはこうやって、結局は許してくれる。 ミキは優柔不断な所もあるが、それは優しさからだと言う事は俺は解ってる、そして人を受け入れ許す寛容な心を持ってる。 俺はこれまでもそんなミキに癒され甘えて居たんだな。 強引な俺を立て、いつも割と控えめだったが本当は寛大なミキの心の上で、俺達の関係は成り立ってたのかもな。 そんなミキが好きだ! 愛おしい! 俺はミキの体をギュと背後から抱きしめた。

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