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第848話 其々の夜(伊織x美樹)

バサッ! ぐじゃぐじゃのシーツを剥ぎ取り、そこら辺の床に投げ捨てた。 「先に休んでろ。直ぐに戻る」 「……ん」 力なく辛うじて返事をするが、体はふらふらだし頭も回ってないだろうな。 コトが終わって明日の事を考え、いや、もう既に夜も明けてきてるから、今日か。 朝、起きた時…ミキの体は悲鳴を上げてるだろうと思い、殆ど睡魔に襲われてるミキを優先にしシャワーを浴びさせバスローブを着せて髪をドライヤーで手早く乾かしベットに運んだ所だった。 良し! 俺も手早くシャワーを浴びてくるか。 シャワーを浴びバスローブを着て、備え付けの冷蔵庫から水のペットボトルを持ち寝室に向かった 「ミキ、水飲むか?」 「……………」 返事が無い。 ベット側に行くと片方だけ俺の為に空けてくれ、ミキは背を向けて丸まって寝てた。 「寝たのか?」 顔を覗きこむと、返事の代わりにスースー……と寝息が聞こえた。 ……何度見ても綺麗な寝顔だな。 だが、今日はその綺麗な寝顔が憔悴してるようにも見えた。 ヤリ過ぎたか⁉︎ シャワー浴びに行く時も、ベットから降りられずふらふらしてたもんな。 俺の方も、ミキを抱えて行く時に腰がガクガク…してたくらいだったからな。 今日も激しく濃厚なセックスだったが、それに加えてアクロバティックな体位も色々試した。 男にしては柔らかくしなやかな体だとずっと思ってた……途中でこれなら楽しめると思い、有りとあらゆる体位を…正常位.背後.対面座位.騎乗位.正座バック.松葉崩し.側位……etc 何度、逝ったか? 最後の方は、俺もミキも出すもんが無くなりチョロっと気持ち程度の白濁しか出なかった。 その上、ミキは空逝きも何度かしてたしな。 そりゃ~体力も消耗するよな。 ゴクゴク…水を飲みサイドボートに置き、俺の為に空けてくれたベットに入り横になった。 人の気配を感じたのか? それともベットの沈む事で解ったのか?  背を向けて丸くなってたミキが寝返りをうち、横になる俺に擦り寄ってきて俺の胸に顔を埋め、スースー……寝息を立てる。 起きた?と思ったが、寝息を聞き無意識にした行動だったようだ。 可愛いな‼︎ 俺は腕枕をし、ミキを腕の中に抱きしめた。 そう言えば……付き合い当初は、良く背後から抱きしめて寝てたな。 ‘後ろから抱きしめられて寝ると安心出来るんです’と、ミキがそう言ってた事もありそうしてたが付き合いが長くなるにつれ、丸くなり背を向けて寝てるミキが俺の気配に気付くと、こうやって擦り寄って顔を埋めてくるようになっていった。 ミキが丸くなり寝るのは癖のようなものだ。 ミキ本人には聞いた事は無いが……家族を失ってから、そうして寝てたんだろうと俺は思ってる。 今は、俺の腕の中が安心出来る場所だ!とミキが思ってくれてると、ミキのこの無意識な行動からそう勝手に俺は思ってる。 そうやって付き合いが長くなれば、少しずつ知らないうちに変わってきてたんだな。 信頼と絆の強さが表れてると感じて、凄え~嬉しい‼︎ あの時、祐一に会いにR’moneのドアを開けなければ…偶然に、ミキと出会う事がなかったら…… 今、こうして腕の中で抱きしめて居なかったかも知れない……違うか⁉︎ その後に、会社で出会ってたか……だが、それなら一目惚れは無かっただろうな。 会社でのミキは地味な格好で敢えて目立たないようにしてるからな。  でも、時間は掛かっただろうが、俺はいずれミキに惚れてただろうな。  努力家で素直で優しく相手を思いやり.人との絆を大切にするミキ……俺に無いものを持ってる。 どっちにしろ一目惚れか.時間掛かってもミキに惚れ、こうなってたって事だろうな。 偶然じゃなく必然だったって事だろう。 ここまでくるまでに…今までも色々あった。 嫉妬や修羅場.危機……それを何とか乗り越えて、今がある! これから先も2人で歩んでいく人生の中では、また色々出てくるだろうが、その度に話し合い自分達だけで解決できない時には相談にも乗って貰え協力してくれる仲間も居る。 俺達を理解してくれる人達の協力を得て、これからも乗り越えていこう! 俺にはミキが側に居る‼︎ それだけで充分幸せなんだ‼︎ 心の寂しい人生を送るんだろうなと思ってた俺の人生に明るい色を付けてくれたミキ。 ミキが居るだけで俺の人生は価値あるものになった。 ありがと、俺の生きる糧だ‼︎ 幸福とそして何より愛する喜びを知った。 愛してるよ‼︎ これから長い人生宜しくな‼︎ そんな想いが夢に出てた。 仕事も引退し2人共歳を取り、ミキの実家の一軒家で暮らして居た。 縁側で庭を見ながらお茶を飲みゆっくりとした時間を過ごし「日差しが気持ち良いな」「ポカポカで気持ち良い季節ですね」「ああ、少し横になるかな」「はい、どうぞ」太腿をぽんぽん叩くミキの太腿に頭を乗せ横になる。 俺の白髪混ざりの頭を撫で「伊織さん、白髪が増えましたね」「ハゲるよりマシだろ?」「クスクスクス……ロマンスグレーで渋くカッコ良いですよ」「だろ?俺はカッコ良い老人になるって!」 「はい.はい」そんな会話をしてた。 年取ってセックスは出来なくなってもスキンシップは忘れずにいつもお互いのどこかに触れ、年取ったなりのイチャイチャ…してる。 それぐらい長く2人の時間を過ごしたって言う夢だった。 愛してる人と共に長い時間を過ごせる幸せは何事にも変えられない。 「愛してるよ、ミキ」 「クスクスクス……俺もです。俺は幸せです」 歳を取っても、そんな会話をしてるんだろうな。 んっ…… 伊織さんかな? 声を掛けたいけど……愛してるって言いたいけど でも、もう眠くって.眠くって……。 ギュッと抱きしめる腕。 伊織さんの匂い……安心出来る俺の場所。 '伊織さんと出会えて良かった。俺を人生のパートナーにしてくれて、ありがと! 俺、凄く幸せ‼︎‘ ‘ずっとずっと、この先も側に居ます’ そう感謝の気持ちと今の正直な気持ちを伝えたかったのに……もう、クタクタ……で。 結婚式を挙げた今日だからこそ言いたかったのに ごめんね。 明日の朝には、俺の気持ち話すね。 今は、このまま幸せな気持のまま寝かせて。 そのまま俺は夢の中に落ちた。 久し振りに、家族の夢を見た。 お祖母さん.お母さん.お父さん.美香ちゃん.そして俺と家族団欒で居る夢だ。 皆んな笑って楽しそうにしてる。 その中に、伊織さんの姿もあった。 何だか、照れながら家族と嬉しそうに話してる。 凄く心が温まる夢だった。 家族が生きて居たら、そうなってたかも知れない そうか! 家族を失って俺だけ生き残った時には凄く辛くて ‘俺だけ生き残った’事に罪悪感と寂しさで押し潰されそうな日々を過ごしてた。 俺が生き残ったのは……伊織さんと出会う為だったのかも知れないとその夢を見て思った。 伊織さんが良く話す ‘俺達は結ばれる運命だったんだ、いや必然だな’ その言葉がこの夢を見て凄く納得した。 俺が生き残ったのは…ううん、生かされたのは、伊織さんと出会って生涯を共に生きる為だっだんだ! そう思うと、これからの俺の人生は伊織さんの為に生きて行こう‼︎ そう夢の中で誓った。 伊織さん、愛してます! 伝えられなかった言葉と共に、明日の朝1番に伝えよう……今は、この温かいぬくもりに包まれて居たい!

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