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第849話 コンヴァージョン(変化)

「伊織さん、遅刻だよ~」 「大丈夫だ。10分やそこら遅れたって」 「でも、皆んな絶対待合せ時間より先に来てると思う」 「そうかもな」 「そうかもじゃないですよ! 早く、行きましょう!」 「今、向かってるだろ?それに、まだまだ朝食時間はあるし」 「そうだけど……」 ‘早く、行きましょう’って言うが、ミキが走れないんだから仕方ねーじゃん。 あれから3~4時間は寝られたか。 昨夜、皆んなと朝食ビュッフェのレストランに9時に待合せの約束をして、其々の部屋に分かれた ゆっくり起きる事を想定して遅めの9時に約束となったが、起きた早々にミキが悲鳴を上げた。 「いっ! 痛~‼︎ うっ…うぅ」 ミキの声で俺も目が覚めたが、いつもヤリ過ぎてもこんなに悲鳴をあげる程ではない、精々、‘いっ!痛~’と言ってベットに逆戻りする事が殆どだが今日はそのまま固まって動かない。 違うな、動けないようだ。 「どこが痛い?腰か?」 いつものように腰を摩ると 「……腰だけじゃなく…あっちこっち節々が痛い~」 あっちこっち?節々? ………ミキの体が柔らかい事を良い事に、アクロバティックな体位でセックスを沢山シタ……身に覚えがある。 こうなるのはある程度予想はついてたが……止まらなかった。 固まってるミキの体を手で支え、ゆっくりとベットに横たわらせた。 「まだ、時間は充分ある。ゆっくり休んで回復すれば良い。腰、揉んでやるから」 「………お風呂入って、ゆっくりしたい」 「昨日、軽くシャワー浴びたけど?」 「……折角来たのに、大きなお風呂に入れないのも勿体無いし……体も温まって少しは解れると思うし…」 「良し! 解った! 任せろ」 内風呂の湯を溜める為に浴室に行き、少し時間を空けてからミキを横抱きにし浴室に連れて行った 俺の方も朝方までの激しいセックスの名残で、腰がまだガクガク…してた。 俺にも多少なりのダメージはあったからな、ミキは尚更だろうな。 あったかい湯船でゆっくり浸かり、俺は背後からミキを抱きしめ、そして腰を揉んだり撫でたりしてた。 ミキも温まって少し体力も回復してきたようだが寝室にも横抱きで連れて行きベットに横たわせた 備え付けの冷蔵庫から水のペットボトルを持ってったりうつ伏せにし腰を揉んだり撫でたりと、俺は甲斐甲斐しく世話をしたかいもあり、何とか自力でゆっくりとだが腰を押さつつ歩けるまでになった。  ミキの体の事を考え時間ギリギリまでゆっくり部屋で過ごした結果、今、ミキに急かされる羽目になってる。 小言や文句を言ったりするが、俺が甲斐甲斐しく世話をすると甘えてくるから俺も更に構い倒したくなるんだよなぁ~。 これまでもヤリ過ぎた次の日はミキの小言と俺が世話を焼き構い、ミキはそれに甘えてくるのはもう殆ど2人の暗黙の了解だ。 ま、そう言うのも楽しいからな。 「伊織さん、早く.早く~」 「もうすぐで着くから焦るなって」 走れないミキを支えながら、少しばかり歩を速めた。 朝食ビュッフェのレストランに着きトレーを2人分持ち、レストラン内を見回す。 美味しそうに並ぶ料理やスィーツ.焼き立てのパンが数種類とレストラン内には良い匂いが立ち込める。 「うわぁ~、どれ取るか迷うちゃうね~」 さっきとは打って変わって、もう夢中で料理を見てる目が期待でキラキラ…してた。 その姿が子供みたいで可愛い。 「好きな物を好きなだけ取れば良い」 「あっ! 出来立ても食べられるぅ~」 オープンキッチンでは数人の料理人がスタンバイしており、注文すれば直ぐに目の前で作ってくれるらしい。 「オムレツ.バンケーキ.フレンチトースト.ベ-コンやウインナーも焼いてくれるのか~。迷っちゃうな~」 にこにこと嬉しそうに話しながらオープンキッチンに向かうと、そこには龍臣達も居た。 「おっ! 龍臣達も遅刻組か~」 俺が背後から声を掛けると、龍臣と優希さんは振り向いた。 「おはよう。成宮、美樹君」 「おはよ。お前らも今から?」 「おはようございます。ちょっと遅れちゃいました。他の皆んなは?」 「沙織さん達やマコちゃん達は、あそこ」 優希さんが指差す方を見ると少し奥の方で席に座ってる沙織達と祐一達が談笑してる姿が見えた。 俺達に気が付き沙織と真琴君は手を振り、ミキと優希さんも手を振り返してた。 俺はこの時何となく違和感と言うか既視感(デジャブ)を感じたが、それより龍臣が俺と同じように2人分のトレーを持ち並んでる方に気を取られた。 ふ~ん……そう言う事か。 ま、そうなるだろうと想定内だがな。 優希さんはトレーが持てない程、疲労してるのか?腰が痛いのか?人の事は言えないが、ミキも同じような状況だからな。 トレーを持って運ぶ事ぐらいはやるよな。 俺は自覚が無かったが、ニヤついてたらしい。 優希さんが目敏くそんな俺に気が付き、龍臣から自分の分のトレーを持ち「先に、行くね」と俺達に言い、いつもよりゆっくりとした動作で歩き出す。 「ゆ.優希~、待てよ。俺が持つって~、じゃあ、後でな」 そう言って、龍臣は優希さんの後を追って行く。 恥ずかしがってるんだぁ~。 へぇ~案外、優希さんも可愛い所あるんじゃん。 「お腹、空いてたのかな?一緒に回ろうと思ったのに~」 また天然な事を言うミキ……本当にこう言う事には鈍感で頓珍漢な事を話してた。 ミキらしくって俺は笑った。 「別に、良いじゃん。後で、どうせ一緒になるんだし。それより俺達も早いとこ取って行こうぜ」 「そうだね」 2人分のトレーを持ち、俺達も出来立ての料理を注文した。 この後で、俺はさっきの違和感が何だったのか解った。

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