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第850話 コンヴァージョン(変化)

結局、龍臣達と一緒に沙織達が待つ席に行く事になった。 『おはよう』 「おはようございます」 「おはよう。んもう! 遅いわよ~。先に、頂いてるからね~」 真琴君.祐一.矢島君は当たり障りない挨拶をする中で、一言多い沙織の挨拶。 「おはよう。ごめんなさい。遅くなって~」 ミキは沙織の言葉に申し訳無さそうに返しながら挨拶をした。 俺と龍臣と優希さんは沙織の言葉はスルーし『おはよう』と返した。 この時も、俺はさっきと同じように違和感なのか既視感を感じてた。 何か、モヤッとするな。 この違和感が何なのか?2人分のトレーをテーブルに置いてると隣のミキが「いっ!痛~」と小さく呟く声が聞こえた。 「大丈夫か?」 俺がミキを気に掛けてると、今度は優希さんからも「痛っ!」と小声が聞こえた。 龍臣も「大丈夫か?」と俺と同じ事を聞いてた。 どうも椅子に座る時に、いつもの調子で座ったらしく腰に衝撃がきたようだ。 ミキと優希さんを其々労りながら、俺と龍臣は同じ様な状況に顔を見合わせ苦笑した。 「ほらほら、早く食べなさいよ~」 「ごめんね。先に食べてるよ。ここのパンケーキ凄く美味しい~よ。早く、食べてみてよ~」 沙織と真琴君に言われ、俺達4人は『頂きま~す』と声を合わせ食べ始めた。 出来立てのパン類や目の前で料理してくれた出来立ての料理も他もどれも美味かった。 「美味しいね」「これも美味しいよ」「やっぱ、出来立ては全然違う」……etcと、美味い料理に舌鼓を打ちながらワイワイ…と和やか雰囲気の中 「大ちゃ~ん、このクロワッサン凄く美味しいわよ~」 何だか沙織が甘えてるような……気のせいか。 「本当だ! サックサクで美味いね」 「でしょ.でしょ」 「沙織、このオムレツもふわふわのとろとろで美味いよ」 「本当だ~」 ん?沙織⁉︎ 聞き間違いか? 矢島君が沙織と呼び捨てにしたような……気のせいか? それからも矢島君は沙織を何度も呼び捨てにしてた。 気のせいじゃなかったのか。 それに気が付いたのは、俺だけじゃなかったようだが皆んな気付かない振りで、その事には触れないで2人の事を温かく見守ってた。 そんな中で、ミキだけは真琴君と「これ美味しいよ」とか「何だか、こうやって皆んなと朝食食べてるの新鮮だね~」とキャッキャ…と話してた。 はあ~、楽しんでるね~。 鈍感なミキには呆れるやら尊敬するやら……。 その時に、ミキの ‘こうやって皆んなと朝食食べてるの新鮮だね~’と言った言葉で、ここに来てからの違和感が何なのか解った。 そうか! このメンバーで旅行とか初めてだからだ! おやじの店で会ったりBBQしたり花火大会や遊園地とか行ってたが、全部日帰りだった。 だから、皆んなが ‘おはよう’と挨拶を交わすのに何だか違和感があったんだ。 それと龍臣と優希さんと挨拶した時は、何だか懐かしい感じもした気がした。 あれは高校時代に教室で朝の挨拶を交わした事を思い出し、そう感じたんだな。 違和感と既視感(デジャブ)の謎が解けて、すっきりした所でミキに声を掛けた。 「そろそろデザート食べたいんじゃないか?俺、取って来るよ。何が良い?」 「うん! さっきちょっと見たけど…プチケーキを何個かとコーヒーゼリーと適当に果物も~」 良く食べるなぁ~。 食べられなきゃ、俺も一緒に食べれば良いか。 「解った! あと、コーヒーも持ってくる」 「うん! お願~い」 席を立ってデザートコーナーに行き悩んでると背後から声を掛けられた。 「おっ! 甲斐甲斐しいね~」 「龍臣か?そう言うお前だって優希さんの為に、デザート取りに来たんだろ?」 「ん、まあな」 何も言わないが、ミキと優希さんの鈍い動作とお互い長い付き合いで大体の予想がついていた事もありニヤニヤ…してた。 その後ろから祐一も歩いて来た。 「祐一も、真琴君の為に?」 「ああ」 『ふ~ん』 俺と龍臣は意味あり気にニヤつきながら言う。 「俺はお前らと違うからな。次の日の相手の体の事も考えずに己の性欲に負けた獣達とはな。唯の性欲ばか⁉︎」 嫌味を言って口の端を上げ俺達をこき下ろすが、これには俺も龍臣も身に覚えがあり過ぎて返す言葉もなかった。 『………すいません』 「ったく! お前らは変わんねーな」 「いや、俺達は祐一と違って枯れてないからな」 「そうそう。まだまだ若いって事だな」 「バッカじゃねーの。それに俺は枯れてねーし」 そんな話をしてると少し離れた場所で、沙織と矢島君が仲良さげに2人でデザートを選んでた。 「沙織はどれが良い?」 「う~ん…どれも美味しそうね。大ちゃんは何にするの?」 「ん~…コーヒーゼリーは食べる。沙織が選んで残ったプチケーキ1つ位は食べようかな」 「じゃあ、これとこれとこれにしようかな」 何だかラブラブの2人の会話が聞こえる。 俺達も近くに居るにも関わらず、完全に2人の世界だ。 俺達はそんな沙織達を幸せそうだなぁ~と見てた 「ここに来てから、ずっとあ~だよ」 俺達より先に来てた祐一がそう話す。 「何だか、沙織嬉しそうだな」 「矢島君もな」 席に着いてから、ずっと矢島君が沙織を呼び捨てにしてる事に気が付いて居たが ‘沙織.沙織’と矢島君に呼ばれる度に、嬉しそうな顔をする沙織が本当に幸せそうで良かったなと思って見てた。 敢えて、その事に触れずにそんな2人を温かい目で見てた居た皆んなもそう思ってるだろう。 良かったなと思うと同時に、沙織が羨ましくもあった。 昨晩、2人の間に何があったかは知らないが、沙織達の中でも何らかの話しをして、今こうなってるんだろう。 たぶん、沙織もずっと矢島君が ‘沙織さん’と呼ぶ事に、思う事があったんだろうな。 その気持ちは俺には凄く解る。 未だにミキは俺の事を ‘伊織さん’ と呼ぶからだ。 随分前に ‘伊織’ と呼ぶように半強制的に言わせたりしたが……性格的な事もあり結局は無理だった いつか呼んでくれるだろうと思ってたが……俺も諦めた。 だから、沙織の嬉しさが手に取るように解る。 羨ましい!……が、これも仕方無い事だ。 沙織達がデザートを決めコーヒーを取りに行ったのを見て、俺達もデザートを取り始めた。 そして、まだか.まだか…と笑顔で待ってるだろうミキ達の元に向かう。

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