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第856話

チョコレートファクトリーに着いたが……思ったような外観では無かった。 確かに、ファクトリー(工場)と言う名だけに…地味な外観で、俺は少しがっかりした。 工場併設の直売所なら……こんな感じなんだろうな。 あんなに来る事を喜んで居たミキ達もがっかりしたんじゃないだろうか?と思ってたが、外観には気にせずに商品の事が気になるようで「どんなチョコあるのかなぁ~」「楽しみだね」「お土産にしようかな」と口々に話してる。 あまり期待しないで店舗に入ると、そこは外観とは違ってお洒落な店内だった。 店内をぞろぞろ…皆んなで一回りした。 メインの商品はチョコレートボールとラスクらしい。 チョコレートボール人気ランキングのボードがあったり、ラスクの試食があったりプレミアムソフトクリームも推しらしい。 これはミキ達は迷うだろうな。 買物も長くなりそうな予感がしたが、無料カフェコーナーを見つけ、そこで待ってれば良いかと考えてると目が合った龍臣や祐一もそう考えてたらしい。 「迷っちゃうね~」「うん! チョコレートボール可愛い♪」「ラスクも美味しそう♪」 既に、買う気満々の4人に 「買う前に、工場見学出来るらしいぜ。先に、そっち見てからにしようぜ」 店内の壁がガラス張りで、そこから製造工程が見れるシステムだった。 チョコに気を取られてるミキ達は気が付かなかったらしいが、喜んでガラス越しに見てた。 「うわぁ~凄いね」「こんな風に出来るんだ~」 「美味しそう」………etcと自然と言葉が漏れてた。 チョコレートボールが出来上がりカラフルな包装に包まれるまでの過程が見学出来た。 女子や子供が喜びそうだな。 ここにも居るな。 目をキラキラさせ、チョコの工程を見てたミキが少し可笑しく笑いながら話した。 「さてと、買物して帰ろうぜ」 「うん!」 良い返事だ! それにも笑ってしまう。 それからミキの後を着いて店内をふらつくが…… お土産買うだけなのだが……。 チョコレートボールの前で「これも美味しそう。あれも良さそう」「どれも可愛い♪」と迷うミキ 「どれでも良いじゃん。迷うなら、売筋NO1~3辺りを買えば間違いねーじゃん」 「う~ん……でも」 チョコボールを前に目移りし、なかなか決まらない。 「美樹君」 「あっ、優希さん」 「迷ってるの?どれも美味しそうで迷うよねー」 「そうなんですよ~♪」 ミキと優希さんの会話に俺と龍臣は呆れ ‘コーヒーコーナーに行こうぜ’ ’OK’ 目配せしてきた龍臣に俺も頷く。 「俺達、コーヒー飲んで待ってる」 「良いですよ」 「うんじゃ! あっ、そうそう。会社には、お土産要らないからな」 「え~……でも…」 「要らない!」 「じゃあ……上野さんだけに……」 「……佐藤や田口にバレないように、こっそり渡せよ」 「うん♪」 「じゃあ、買物終わったらこっちに来いよ」 「は~い」 優希さんと龍臣も似たような会話をし、俺と龍臣はコーヒーコーナーに向かった。 無料のコーヒーを飲みながら店内の様子を見てた 「なあ、土産買うのに何であんなに迷うかな?」 「俺もそう思う。何でも良いじゃんな~。普段は倹約家な癖に、土産になると金に糸目をつけねーんだよ」 「優希も! この間も北海道に旅行行った時も、社員に買うとか言って3箱も買ってた。どうせ、1人1個位しか渡んねーのに。配るの面倒だから、机に並べて ‘食べて下さい’って置いてたよ~」 「ミキも課の連中に買うのは良いが ‘どこに行ったんだ?’ ‘誰と行った?’とか聞かれて、言葉に詰まる癖に買うんだよな~。相手は世間話で言ってんだけど、ミキは直ぐに対処出来なくってさ。俺がいつも助け舟出すパターンだよ。ま、そこが可愛いんだけど。だから、今回は課の連中には買うな!と念を押したよ」 「何だか目に浮かぶ~。美樹君は素直だからな~」 俺と龍臣が話してると祐一と矢島君も来て、同じく無料のコーヒーを手に俺達のテーブルに着いた 「はあ~、土産だけで迷うかな~」 「沙織もです。何か、たくさん買うようで……」 俺達と似た話をしてた。 思わず龍臣と笑った。 店内では、まだ買物に夢中のミキ達を見ながら、俺達はそれから世間話と仕事絡みの話をしてた。 20分程経った頃に、沙織と優希さんが大きな紙袋を手に俺達の所にやって来た。 「お待たせ~」 「会計の所も混んでた~」 「終わった?それにしても、どんだけ買ったんだよ~」 龍臣が優希さんにそう話してると、ミキと真琴も大きな紙袋を手にやって来た。 「ミキ、そんなに買ったのか?」 お土産を渡す相手なんて……自分へのお土産を合わせても……上野さんと……たぶん…おやじの所ぐらいだよなぁ。 「えっと……家にチョコレートボールとラスクを買って。ラスクなら伊織も食べるでしょ?あとは 上野さんと大将の所とお義父さんとお義母さんへと…そうそう龍臣さんの叔母さんと叔父さんと良太君と健太君に」 大きな紙袋の中身を見ながら、確かめるようにそう話す。 はあ?上野さんとおやじへは想定内だが……俺の親父や母さんまで?それに龍臣の親と良二達まで?1.2……6.7…8個? どんだけ買ったんだよ~。 紙袋から龍臣へ3箱取り出し手渡してた。 「忘れるといけないから、龍臣さんに渡して置きますね~。これが叔母さん達で、このチョコとラスクは良二君達に」 手渡しされた龍臣は苦笑いで、一応「わざわざ済まない」と礼を言ってたが……。 「今回は、叔母さんに色々お世話になったし……また、遊びに行きます!と言って置いて下さい」 龍臣の迷惑も考えずにミキは笑顔で話す。 「わざわざ、ごめんね。うちもお義母さん達にはお土産買ったのに。もちろん、健太君達にもね。あと…被っちゃったけど…大将にも」 優希さんがそう話すと、沙織と真琴君も紙袋から1箱ずつ取り出し龍臣に手渡す。 「私も叔母様に。やだ~、私も大将にも買っちゃった~」 「僕も面識は無いけど、ミキが今回お世話になったから龍臣さんのお母さんに…。あと、大将にも買っちゃった」 龍臣の両手には5箱もお土産が……。 「……わざわざ気を使って……。母さん達も喜ぶよ……」 似たようなお土産に龍臣はマジで苦笑いしてた。 これも叔母さんの人望だろう。 諦めろ! 「優希、実家に寄って帰ろうな」 「そうだね。皆んなのお土産渡さないとね~」 苦笑いで優希さんにそう話す龍臣に俺と祐一と矢島君は同情の目で2人の会話を聞いてた。 おやじも似たような土産を貰っても…ま、おやじは喜ぶとは思うが……店の客にでも出して貰うように、こっそり話すか。 そこから、キャッキャッ…と楽しそうにコーヒーを飲みながら話すミキ達を待ち、やっと店を出て駐車場に向かった。 隣に並ぶミキに歩きながら 「佐藤や田口に買わなかったのは良いが…俺の親まで買う事無かったんだ。どうせ、そんなに会わねーし」 「だからですよ!」 「どう言う事だ?」 「こう言う事でも無いと普段は頻繁には会わないでしょ?お土産を口実に、また4人で食事にでも行きましょう」 ………俺の家族の為に考えてくれたのか。 何とか、少しでも俺の家族の修復する切っ掛けにされればとミキなりに考えて……その気持ちが嬉しかった。 「ありがとう、ミキ」 「お礼なんて要りませんよ。伊織の親だもん。俺にとっても家族ですから」 本当に良い嫁を貰った! 親にはもう蟠りは無いつもりだが、其々家庭があり付かず離れずの関係になるんだろうと…これまでと似た関係なんだろうと思ってたが……。 微かな糸で繋がってたが、今までとは違う新たな関係を築こうとミキは考えてくれたのかも知らない。 ありがとう。 感謝の気持ちを抱き心が温まる気がした。

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