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第10話
「おい。あんまり無茶な呑み方するな。帰れなくなるぞ」と注意すると
「帰りはタクシーで帰ります。今日は呑みたいんです」掘っといて欲しいという風に言って
また、残りを呑んで店員にお代わりを頼んでいる。
「何をそんなに無茶な呑み方までして忘れたいんだ」理由を知りたくって聞いた。
「………。」
答えないか。
「嫌な事は人に話せば楽になるぞ」
「………。」
駄目か。仕方ない。
「俺は明日アメリカに戻る。今日何を聞いても明日には日本に居ない。だから話せ」
嘘は言って無い、これで話してくれるはずだ。
「……俺、少し前まで男と付き合って別れたばっかりで落ち込んで今浮上中なんです。少し浮上してきたから気晴らしに街に出かけたんです。そこで別れたばかりの彼を見かて………彼は俺には気付かないでいて彼の……隣には女の子が腕を組んでいたんです。……別れたから別に自由だと判っているんです。でも、別れて直ぐにとかまさか二股掛けられてたのかと思ったら、見た事忘れたくって呑みに来たんです」と理由を話してくれた。
そんな男の事で悩んだり無茶な呑み方する事に腹が立った。
俺が忘れさせてやる。
明日アメリカに戻ったら暫くは逢え無い。一夜限りと思っていてもいいからそんな男を忘れさせて俺を忘れられない一夜にしてやる。
日本に戻ったら必ず手に入れてやると新たに決意した
そんな事を考えてると噯気(おくび)に出さずに優しく語り掛ける。
「そうか、辛かったな。悪いがそんな男忘れろ
そして忘れたいからって無茶な呑み方するな。俺が忘れさせてやる」とグビッと酒を呑む。
えっ何でって顔でいる。直ぐに返事が無いって事は迷っているんだろう。
「呑んでも明日には、また思い出すだろう。だったら嫌な思いに強烈な上書きすれば忘れられるだろう。さっきも言ったが俺はどうせ明日には日本に居ない。好都合だろ」
日本に居ない事を強調する。忘れられ無い一夜にして俺を刻み付けて必ず手に入れるが。ふっと笑う。
「………。」
返事無しか。迷ってるんだろう、ならばと強引にいかせて貰う。
腕を掴んで立たせ会計をしてドアに向かって歩き出す。腕を掴まれて居るから引っ張られて着いて来る。
外に出て直ぐにタクシーを止めて先に乗せて目的地を運転手に告げて走り出す。
タクシーの中で腕を掴んでいた手を離しその手で手を繋いだ。細い手を強めに握りもう離さないという気持ちを込めて。
窓の外の風景を見る振りをして窓に映る姿は、どうしたらいいのかって顔をしていたがその顔が繋いだ手を見て恥ずかしいのか俯いてしまった。
残念。窓越しでもその美しい顔をずっと見ていたかった。
タクシーは目的地に着いた俺の滞在して居るホテルだ。
タクシーを降りてまた、腕を掴んでホテルに入って行った。
ここまで来て怖気付いたのかエレベーターの中で「やっぱり……む」最後まで言わせず、その綺麗な形の唇を塞いだで耳元で
「その男の事は忘れさせる。絶対後悔させ無い夜にしてやるから俺に任せろ」と言ってエレベーターを降り部屋まで、もう、何も言わず着いて来た。
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