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第29話

電車の中で香坂はパンフレットを真剣に見ている本当に一生懸命で可愛い。 きつかったが仕事を早めに終わらせて市場調査という名目で香坂と京都の街を歩きたかった。 香坂が好きそうな場所だと思っていたがあんなに目をキラキラさせて喜ばれるとこっちまで嬉しくなる。 連れて来て良かった今度はプライベートで来たいものだ。 俺の視線を感じたのか不意にパンフレットから顔を上げて「課長、ありがとうございます。仕事の延長なのに俺楽しんじゃってすみません。凄く勉強になりました」 律儀だなって思い香坂がさっきから自分の事俺って言ってるのに気付いて無いという事は半分はプライベート感がしているんだろう、少しは一緒に居るのに慣れたなら俺も嬉しいがもっと沢山香坂の事を知りたいと考えて 「いや。多少きついスケジュ-ルにしたのも京都の街を歩きたかったからな。香坂は京都出張の時はどこか見て歩かないのか?」出張の時の香坂を知りたいから聞いた。 「そんな余裕無いですよ。年に1〜2回しか来れないので訪問周りで精一杯です。疲れてホテル帰って次の日の準備して寝ます」 「香坂、出張の極意はこういう楽しみも無きゃな。折角違う土地に来てるんだからその土地を知る事も後々役に立つ事もある。仕事は少しの余裕を持ってした方が上手くいくって事だ」 「はい、余裕持って仕事出来るように頑張ります」やっぱ仕事出来る人は言う事も違うなぁと思った。 「香坂は素直だな」って頭をぽんぽんする。 本当に素直だ、普通大人になると解らない.知らないは恥ずかしく聞こうとしないが香坂の場合解らない事は解らないと素直に聞く力があるこれから 仕事していく上で大切な事だ、やはりいい。 「課長、これからどこ行くんですか?」また、子供のようにされて照れて聞いたみた。 「貴船神社って知ってるか?」 「神社ですか?伏見稲荷神社と八坂神社は知ってますが勉強不足ですみません」 「そっちの方が有名だからな、でも行ってみる価値はあるぞ」多分、香坂も気にいると思う。 貴船神社かどんな感じなんだろう楽しみだ。 課長が連れて行ってくれる所は間違いが無いからそれにしても俺の好みに近いのかなぁと思うと嬉しい。 鳥居を通りそこからは圧巻だった。 赤灯篭が幾つあるのか奥まで並んであり灯篭の灯りがまた幻想的で日本的な美しさがあった。 隠れ人気スポットなのかカップルが多い。 石段を歩きながら「素敵ですね、こんな所初めて知りました」 「ここは水の神と縁結びで人気なんだ。パワースポットでもあるからな。冬がまたいいぞ。雪景色の中でライトアップされて赤と白のコントラストが最高に綺麗だ」 「うわぁ、観てみたいです」凄く綺麗なんだろうと頭に描いてみる。 「今度は冬に来よう、他も見せたい所があるし冬の京都も趣きがあっていい」 こんなに喜ぶなら冬の京都も見せてやりたいと思った、いい温泉宿で寒い京都を歩き冷えた体を熱い温泉でゆっくり2人で温まるのもいいなぁ。 「本当ですか。是非また来たいです」 俺は課長の社交辞令だと思っているがそう言ってくれた事が嬉しかった。 「香坂、折角だから写真撮ろか」とスマホを取り出しこの幻想的な風景をバックに2人で自撮りしたり他の人にお願いして並んで撮ったり先灯篭の風景だけを撮ったりし「香坂にも送るからLINE教えろよ」と言ってLINE交換した。 これで連絡し易くなるなと微笑む。 それからは1kmに及ぶ石段を赤灯篭を見ながら歩き茶屋に寄り休憩すると「茶屋も凄く趣きがあって建物を見るだけでもいいですね」って 楽しんでるのが判る。 その後も他の茶屋や土産屋を楽しんで帰りも石段を降りる時も登りとは違う風景を眺めながら歩き 「香坂、そろそろ夕飯にしないか?京都来て湯葉ランチ位しか京都らしいのは食べて無いからな。仕事頑張ってる香坂にいい所連れて行ってやるから楽しみにしてろ」って言われて時間を確認したら結構な時間だった。 「えっ、もう8時近い。楽しくって時間忘れてました。課長お腹空きましたよね俺は何でもいいんで気にしないで下さい」 もう充分楽しんだ。 「そう言うな。折角京都来たんだ本当の京料理を食べよう俺が食べたいんだ。付き合え」ってタクシーを呼ぶ。 着いた場所は高そうな料亭だったから恐縮して 「課長、こんな料亭何て敷居高いですよ」 案に他でもいいって意味で話したが「ここは外観は高そうだか料亭の割りに値段もリーズナブルだから安心しろ、テレビで見る奥座敷の高級料亭じゃ無い半個室になってるだけだから」と入店を促す。

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