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第30話

掘り炬燵式の席に座り店内を見回すと課長の話した通り半個室になっており隣との間隔も広く取ってあり混み合った話をするのにもいい感じになっていた。 小さな庭園も見えてBGMも川のせせらぎの音で落ち着く。 「課長、凄く落ち着く雰囲気で素敵な店ですね」 「そうだろう、数年前に接待で来たことがあるんだが形式ばって無く雰囲気もいい、店主が料亭でも気軽に幅広い人に来てもらいたいと言う事らしい。だから料亭の味だが値段もリーズナブルなんだ。ここは後奥座敷もありそこは宴会とかに使ってるらしいが。香坂食べられ無いものはあるか?」 お品書きを見ながら聞くと 「特にありませんが椎茸だけちょっと苦手で、他は大丈夫です」 椎茸がだめなのか可愛いな。 「そうか、じゃあ、会席料理にするか」と言って店員を呼んで頼んだ。 料理がくるまで今日周った日本伝統.貴船神社の話をしていると日本酒と先付.煮物椀.造り.焼物.揚物.煮物が並べてられ「うわぁ、どれも美味しそう、食べるの勿体ない位ですね」 顔が美味しそうな物を前にニコニコしちゃう。 「見てないで先付から食べてみろ。最後に御飯と水物(デザート)がくるからな」と言って日本酒で乾杯する。 日本酒と料理を堪能していると「香坂はどうしてうちの会社に入社したんだ?」と唐突に聞かれ「俺、祖母がイギリス人でその祖母が体が動くうちにイギリスで過ごしたいと小学6年の時に1年間だけイギリスに祖母と住んでた事があってその時に初めて日本を離れて 日本の良さを知ってそれから和物が好きになったんです」 「離れてみて初めて判る事があるって事か俺もアメリカに行ってそう思ったな」 「そうなんです、だから大学の就活の時悩んで英語を活かす仕事に就くかファッション系に関わる仕事に就くか。俺、服とか小物見るのも好きなんでスタイリストかファッション雑誌とかの裏方に興味あったんですがどうも裏方には就けそうも無かったので、英語も活かせて日本伝統品扱っている今の会社に入社しました」 香坂の話を聞いてファッション関係の裏方は無理だろうと思った、香坂の能力がどうとかじゃなくあの容姿なら必ず表舞台に刈り立たされるだろうから本人は不本意なんだろう。 「後悔はして無いのか?ファッション関係の事」 「今の仕事も楽しいですしファッションは休日にお洒落してお店巡りしてます」 「そうか、香坂がファッション関係に就いていたら今こうして一緒に食事してなかったかもな。良かったようちの会社に入社して」 課長の言葉にドギマギしたが可愛い部下って事だろうと思い直す。 「だからか、香坂の英語は前から綺麗だと思ってたんだがクォータ-か」 「はい、祖母がイギリス人だからそうなります。祖父がイギリスに留学してる時に知り合って日本に来て結婚したんですが家の中では母国語を忘れたく無いと英語で話してたので父と母も外資系企業でしたから祖母には英語で話してましたから俺も小さい頃から祖母に英語で話してました」 良い家庭環境だなっと思う。 それからは酒も程良く勧み「美味しい」「美味しい」と言って食べてる姿が可愛い。 アメリカの話を聞きたいと言うから面白可笑しく話すと店員が「そろそろ御飯と水物をお持ちします」と言ってきた、もうそんな時間かと思い香坂と居ると時間を忘れる。 鮭のほぐし銀餡かけ御飯と柚子のアイスを「美味しい.沢山食べたのにまだ食べられちゃう」と食事を堪能してアイスを食べた時は両頬に手をあてて「口の中さっぱりして何個で食べられます。ほっぺが落ちそう」って姿が可愛かった。 「香坂、美味しいかったか?お腹はいっぱいになったか?」 「はい、こんなご馳走食べた事が無かったから嬉しいです。ありがとうございます」 「いつでも言えば連れて行くぞ」 社交辞令だと判っているが「ありがとうございます。また、よろしくお願いします」と返事をした。 俺の顔を見てにっこり微笑み頭をぽんぽんする、課長の笑顔ヤバいかっこ良すぎてドキドキする。 「いつでも言え、さてホテル帰るか」って俺がドギマギしてるのも気付かず席を立ち会計を済ませ店の外に出た。 タクシーでの中で「香坂、まだ少し呑めるか?少し付き合え。ホテルの上にバ-があるから」 「はい。大丈夫です」 俺ももう少し課長と話がしたかったからホテルに帰り少し呑む事になった。

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