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第31話

ホテルのバーはカウンターとテーブルが3席とあまり広くは無かった。 テーブル席に座りバーボンとスプモ-ニを頼み 「香坂、今日は楽しんだか?」 「はい、仕事の市場調査を忘れて楽しんじゃいました日本伝統の奥深さと貴船神社の幻想的な雰囲気.初めて食べた料亭の味出張なのに夢の中にいるような1日になりました」 話し方が酒を飲んで少し色香が増しているなと思っていた所にバーボンとカクテルがきて軽くグラスを合わて互いに呑み始めた。 「夢って言えば俺も夢みたいな日があったな」 あの濃密な一夜をさりげなく話す。 「どんな事ですか?」 気づかず興味深々で聞いてくる。 「ん、転勤になる前に日本に部屋探しとか色々あって1時帰国してアメリカに帰る前の日に夢のような1夜を過ごした、あれは夢だったのか」 俺の話を聞いて楽しそうな顔からどんどん青褪めていくその顔を見ながら話していく。 「濃蜜な1夜を過ごしたが朝目覚めると消えていた正に夢だったのかと思ったがシンデレラがガラスの靴を残した様に俺の背中に可愛い爪跡を証拠として残して行った、アメリカ帰る俺の為にモ-ニングコ-ルを頼んでくれてそんな可愛い事され忘れられ無いと思っていたら……転勤先にその人は居た。俺の可愛いお姫様がね」 少し茶化しながら話すと黙って聞いて俯いていた顔を挙げて 「いつから気付いていたんですか?」 観念したようだ。 「課で挨拶した時からだ」 それを聞いて目を見開いて「じゃあ始めから解っていたんですね。でも会社と普段の俺は別人のようだから解らないはずどうして解ったんですか?」 不思議だと言う顔をする。 「そりゃ、あの濃蜜な1夜を過ごした相手を間違える筈無いだろう。探し求めてた相手だ。何故会社では変えてる?」 大体は予想は付いているが本人から聞きたい。 「………。学生の時から俺の外見で遠巻きに見られて中々友達もでき難かったし周りと馴染んで無かったのもあって社会人になったら外見で浮かないように前髪で目元隠してメガネしただけで周りと馴染んだのでそのままにしてます」 予想通りの返答で「そうか、それで仕事し易いならそのままにしておけ」 ほっとした顔で「ありがとうございます。この方が仕事上でやり易いのですみません」 頭を下げるから「別に誰にも迷惑掛けて無いし悪い事してる訳じゃないから謝るな」頭をぽんぽんして顔を挙げさせる。 話しが逸れたが「香坂はあの1夜を忘れたか?俺は忘れて無い」と手を握ると引っ込めようとするから強く握る。 「……。忘れようと努力しました、課長が現れる迄は忘れた筈でしたが心の奥にはあったんだと思います。課長は忘れていると…」 香坂の話で香坂もあの濃蜜な夜を覚えていると確信してもう待て無かった。 「香坂、いくぞ」 腕を引っ張り会計しエレベーターに乗りその間も腕は離さずそう言えば前もこんな感じだったなデジャヴだなって考え俺の部屋の前でこのまま部屋に連れ込んでもいいがそれだと香坂の意思じゃあ無い、俺は香坂が自分から来て欲しかったから掛けに出た。 「香坂、もし嫌ならこのまま自分の部屋に入れ今は会社は関係無いし今後も変わらない態度で接していくから気にせず自分で決めて良い。 もしここから動かなかった場合は合意と見做し俺はそのまま部屋に連れ込む。良く考えろ」 と言われ心の中でどうしよう.どうしよう課長は会社は関係無いと言ってるが上司と部下だ断っても流されても俺の方が今後やり辛いと悩む。

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