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第34話
帰りの新幹線の中で
「香坂、少し寝てろ。体、辛いだろ起こしてやるから」
頭をぽんぽんされ優しく言われるが
「……課長の所為ですからね」
プイッと違う方を向く。
「悪かった、機嫌直せ」
黙りを決めもうこのやり取りは何回もしていた。
今日の朝シャワーを浴びて動けない俺に課長が飲み物を持ってきて
「香坂、大丈夫か」
「……」
「悪かった、朝一緒に迎えられたのが嬉しかったから…つい」頭を拭きながら言って
「……」
「機嫌直せよ、悪かったってあんまり香坂が可愛いんで…つい」
「……」
ソファに座っている俺に跪(ひざま)いて
「香坂、どうしたら機嫌直る…なんか言ってくれ。これでも反省してるんだ」
あんまり真剣に言うから機嫌直さないこっちが悪い事したように感じて
「…課長の所為だけじゃありません。俺も途中止めなかったんで」
「やっと口効いてくれた、じゃあ今回はお互い様って事で」
その言い方に少しカチンときて
「課長、部屋に戻り荷物の整理します。時間になったら部屋に呼びに来ますから」
俺の部屋には来るなって意味で言ってゆっくりした動作で立ち上がると課長は慌てて手を貸してくれ部屋の前まで送ってくれた。
それからずっと課長は俺のご機嫌取りをしている俺は別に怒って無いが恥ずかしい方が強くつい黙ってしまうから機嫌悪いと思うようだ。
部屋迄呼びに行ってから今もずっとご機嫌取りしてるがその姿が何故か嬉しそうなのは気のせい?どうしてか判らないが課長はとても機嫌が良い。
違う方を向きなから
「……課長、お言葉に甘て…少しだけ休みます…後…すみませんでした。機嫌悪い訳じゃ無く…恥ずかしかったんです」
言ってる事も恥ずかしくって目を閉じたら直ぐに睡魔がきた。
ス-ス-と寝息を立ててる香坂の姿を見て顔が緩んで仕方ない。
怒ってる訳じゃなく恥ずかしいって素直に可愛く言う姿に朝の事を思い出した。
昨日やっと手に入れた、朝も一緒に迎えられて嬉しいかった幸せを感じてた所に香坂が可愛い事するから我慢出来無かったが最後迄するつもりは無かったでもあの香坂の妖艶で色っぽい姿と喘ぎで止められ無かった
動け無い香坂を見てやり過ぎたかと少し反省し体の心配したら予想外に黙り怒ってるのかと思い機嫌取りしたらまた黙りの繰り返しで始めは困惑したが段々とその遣り取りが付き合っている恋人の実感が湧いてきて楽しくなってきていた。
今迄、割り切った付き合いしかしなかった、相手の機嫌を取るなんてした事無かったから新鮮だったしイチャイチャ感が堪らなかった。
自分がまさかこんなイチャイチャとか何でも香坂優先にするようになるなんて思っても無かった。
やっぱり本気の相手は違うって事か、でもそれもいいなって俺の恥ずかしがり屋の恋人の寝顔を眺めながら思う。
「こう…香坂……香坂」
頭をぽんぽんされ起こされた。
「うわぁ、すみません。また起こしてもらって」
少しだけのつもりが熟睡してしまった。
頭を撫でられ
「始めから起こすって言ってたから気にするな。それより体大丈夫か?」
「はい、充分休みましたから楽になりました」
「そうか、良かった。今日、朝からあんまり食べて無いから少し早いが夕飯食べて帰ろう」
時間を確認すると5時だった。
「いいですけど課長疲れてませんか?全然新幹線で休んで無いですよね」
「いや、少しは休んだ。それより香坂の可愛い寝顔、堪能できたからな」
「そんな馬鹿な事言って無いでどこ行きますか?」
いいな今の言い方も恋人って感じがすると頬を緩めて「香坂は何食べたい?」
少し考えて「京都は和食だったので……パスタはどうですか?」
ちゃんと考えて言う所が好感持てるな。
「じゃあ、イタリアンでいいな」
楽しい会話と美味しい食事を堪能して早めの夕飯を食べ出張で疲れていると思い名残惜しいが今日はお互い自宅に帰った。
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