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第37話

喫茶店を出ると外はもう暗くなっていた。 課長と並んで歩いて食事先に向かっていると通りすがりに女の人が振り返ったり「カッコいい」「素敵」とヒソヒソ話している。 課長は気づいているのか慣れているのか全然気にして無いようだ。 やはりモテるんだな、皆んな課長の事見てる。 会社でのス-ツ姿も仕事のできる男って感じでカッコいいけど私服もグレーのジャガ-パンツにインナーが白シャツ.濃紺のテ-ラ-ジャケットで凄く似合って大人のお洒落って感じがする。 皆んな見るはず、モテるのもわかるなぁと改めて思う はあ、もっとお洒落してくれば良かったと考えながら歩いていた。 待ち合わせの時は色々あって良く見なかったが私服の香坂は初めて逢った時も思ったがやはりお洒落だ。 チラっと盗み見て黒のスキニーパンツにワインカラ-のVネックロング長Tシャツで細身の体に良く似合っているネックレスを胸元にさり気なくしていてそれが凄く色っぽい。 服を見るのが好きって言うだけあってお洒落で色っぽい、そう見ているのは俺だけじゃ無いみたいだ道行く男も女も香坂を見ている。 「綺麗」「モデル?」って声が聞こえ一緒に歩いていて見せびらかしたい気持ちと誰にも見せたく無い気持ちが鬩(せめ)ぎ合っている。 モテる恋人を持つと苦労するなと思うが自慢の恋人でもある。 そんな事を考えて歩いていると目的地に到着した。 「香坂、そこの路地入った所にある小料理屋だ。爺さんが1人でやってる、店は小さいが味は美味いぞ」 課長が指さした方向を見ると"小料理屋・芳乃"と書いてあった。 路地に入り店の引戸を開け 「おう、おやじ元気か?」 挨拶すると久しぶりの俺に「これ又、珍しい人が来たな。1年振りか?」と元気そうな声で安心する。 「そんなになるか?」 帰国する度にって言っても年1〜2回だが店に顔を出していたが前回帰国の時は祐一の店に通い詰めだったから来れなかった。 そんなに来て居なかったのかと言われ改めて思った。 店内には何組か客が居たが、カウンターに香坂と座りビ-ルと料理は、おやじに適当にお任せで頼んだ。 ここは悪友の龍臣に連れて来てもらい、味とおやじが気に入って龍臣と来るか1人でも来る場所だったが香坂を連れて来たいと思った。 ビ-ルと枝豆が置かれ軽く乾杯し呑みながら話す。 「食事だけになったな。本当は食事前に香坂が好きそうな店を何軒か周ってから来る予定だったがそれは又今度にするか?」 「はい、楽しみにしてます」 今後の約束事をできる事が嬉しくって微笑んでしまう。 「はいよ。もつ煮込みだ、後、肉じゃがと出汁巻卵だ」おやじが料理を置くと箸片手に 「うわぁ、どれも美味しそう。迷っちゃうなぁ」 蔓延の笑みで話すから可愛い、おやじもそう思ったらしく 「可愛いねぇ、出汁巻卵から食べてごらん」と勧める。 出汁巻卵を一口食べて 「すごっく出汁が効いてふわふわで美味しいぃ。課長食べて下さいよ」 蕩けそうな顔で俺に勧める。 「俺は何回も食べてるから気に入ったなら香坂全部食べていいぞ」 嬉しそうに「えっ良いんですか?」 また美味しそうに食べ始める。 「そんな美味しそうに食べてくれると嬉しいねぇ、平目の昆布〆と大和芋のふんわり揚げだ。こっちも美味いぞ」 おやじも素直に感想を言って美味しそうに食べる香坂を気に入ったようだ。 おやじまで虜にするとはなって苦笑いした。 それからは俺をそっち除けでおやじと香坂でこれも美味しいだとか隠し味は何かと話し盛り上がっている2人を見ると嬉しいのと構ってくれ無い寂しさで複雑だ。 客商売だから愛想良くするがあんな楽しそうなおやじ久しぶりに見たな。 ここには誰も連れて来た事が無かった、俺が息抜きできる場所の1つでもあるから邪魔されたく無いと言うのが理由だが今日香坂を連れて来て良かったと思った。

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